薬指の標本

薬指の標本

小説・文芸
572円 (税込)

2pt

楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。人々が思い出の品々を持ち込む〔標本室〕で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは……。奇妙な、そしてあまりにもひそやかな、ふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。表題作ほか「六角形の小部屋」収録。

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    薬指の標本
  • タイトルID
    :
    208612
  • 電子版発売日
    :
    2013年05月24日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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薬指の標本 のユーザーレビュー

忘れたくとも失いたくはない過去に区切りをつけ、完結させるため、たくさんの人がその“標本室”を訪れる。持ち込まれる品は様々。例えば、楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、ヤケドの痕。そして、標本技術士の助手になった「わたし」は、欠けてしまった薬指の先端を。
登場するのは、皆、かつて何かを永遠に諦めてしまった人ばかり。寂しさは新たな寂しさを導いて、人々は己の物足りなさを埋めようと、他者にすがる。静謐な文章の底に息づく狂気がとても美しい。
本作は2005年にフランスで映画化されている。主役は「007 慰めの報酬」でボンドガールに抜擢されたオルガ・キュリレンコ。フランス映画らしい静けさとエロチシズムにくらくらとめまいを覚える。原作にほぼ忠実に描かれており、こちらもおすすめである。

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    小川洋子さんの小説はどれも落ち着いた不思議さがあって大好き。その不思議さにも2種類あると思っていて、教科書に載っている作品のような、奇跡みたいな不思議さと、不気味とも奇妙とも言い難い不思議さ。この本にあるお話はどちらも後者に近いような気がする。私はそういうお話がとてもとても好きなので、しみじみ楽しめました。

    どちらの短編も、何かに執着してしまう女性の話だった。でもその執着が悪いものではなくて、スルスル絡みついて離れない仕方のないものみたいな印象を受けて……それがすごく好きだった。
    「薬指の標本」はよりゾクゾクする美しさで、読んだあとの余韻がすごく心地よかった。糸を引く不気味さ。でもすごく綺麗。素敵な物語と巡り会えて嬉しい。

    0
    2026年08月12日

    Posted by ブクログ

    静かで、官能的で、狂気すらも感じる不思議な物語。
    「わたし」が「弟子丸氏」に靴をプレゼントされるシーンからどんどん不穏な空気が流れてくる。
    読後の余韻が好きでした。宝物。

    0
    2026年05月04日

    Posted by ブクログ

    再読。初期の小川洋子はけっこうエグみが強いなぁと思ったけど「妊娠カレンダー」「密やかな結晶」のほうが前なのね。喪失とインモラル。カタリコベヤ。

    0
    2026年03月10日

    Posted by ブクログ

    静かで冷たい「標本室」という職場で、少しずつ引き返せない恋に溺れていく一人の女性の物語。
    ここでの「標本」が何を意味するのか、姿を見せなくなった少女は、前任の女性たちは、何処へいってしまったのか。はっきりとしたことが書かれていないからこそ、美しく密やかな世界観が楽しめた。
    「彼に封じ込められていたいんです。」という帯にもなっている主人公の言葉が読後も心に残り続ける。

    0
    2025年11月25日

    購入済み

    孤独と不思議な他者

    自然に滑らかに読めてしまうけれど、いろんな細かいところまで神経が
    行き届いている描写が好きです。どちらの語り手も孤独な女性で、内面
    や身体的な感覚の一部まで読んでいるとこちらが同化一体化してしまって
    いるよう。傷ついた自分がもしかするともっと危ない世界に引き込まれる
    ような感覚、逆に自分の中にある悪い部分に気づきつつ、それ以上の進展
    はないけれど癒されるような感覚、そういったものを味わいました。
    静かに自分と向き合う、死やエロスとも静かに向き合う。

    #深い

    0
    2024年04月24日

    Posted by ブクログ

    表題作『薬指の標本』

    童謡「赤い靴」を流しながら読みたいお話。あとなんか、唐突に「ぼのぼの」の「しまっちゃうおじさん」を思い出しました。どちらも、「子供の頃なんとなく怖かった記憶」ですかね。

    以下は「密やかな結晶」との比較も含みます。

    『密やかな結晶』の後に読んだのだけど、雰囲気が似ていて、特にその作中作と構造が似ている。
    発表としては『薬指の標本』表題作の初出:1992年7月
    『密やかな結晶』単行本:1994年1月
    『薬指の標本』単行本:1994年10月
    とのことであり、『薬指の標本』からさらに純度を増したのが『密やかな結晶』であるように見える。
    『薬指の標本』は短いが、小川洋子の作品に繰り返し現れる要素がかなり露出した形で詰まっている作品だった。標本室、靴、地下室、保存、閉じ込め、正確な手順を持つ男、自我の薄い主人公、身体の一部への集中。これらが非常に直接的に配置されている。

    『密やかな結晶』と比べると、『薬指の標本』は官能がかなり濃い。そこには明らかに封じ込められたい欲望がある。主人公自身も「自由になんてなりたくない」「この靴をはいたまま、標本室で、彼に封じ込められていたい」という方向へ傾いていく。つまり、まだ主人公の側に欲望が見えている。
    一方で『密やかな結晶』は、「そうされるしかない」物語である。そこでは、主人公が「そうされたい」と選ぶより前に、世界そのものがすでにそのように閉じている。選べないというより、選ぶ必要がない。自由がないからこそ、自由であらねばならない負担からも解放されているように見える。

    小川洋子はこの2つしか読んでいないが、この系統の作品には、少女趣味的な美しさがある。
    標本瓶、古い建物、閉じられた部屋、秘密、指、靴、箱、保存。そうした道具立てによって、成熟した現実から少し外れた箱庭の美学が作られている。

    主人公たちは、強い自我を持って世界にぶつかるタイプではない。叫ばない。戦わない。暴れない。むしろ、自我がないことに徹しているように見える。しかし、何も感じていないわけではない。感受性は非常に鋭く、温度、湿度、匂い、手触り、相手の動作、部屋の静けさを細かく拾っている。ただ、それを「私の欲望」「私の怒り」「私の判断」として所有しない。感受性はあるのに、主張がない。この自我の薄さが、世界や他者に侵入される余地を作っている。

    こちらが選んだからではない。
    こちらが望んだからではない。
    どうしようもないものに巻き込まれた。
    だから仕方がない。

    この「仕方がない」が、欲望の言い訳になっている。
    乙女心とは、自分の欲望としてではなく、外側の必然として訪れてほしいと願うことなのかもしれないなと思った。

    『薬指の標本』を読んだことで、『密やかな結晶』の異様な完成度がよく見えた。
    この二作は、同じ毒を別の溶媒に溶かした作品のように見えました。

    0
    2026年06月30日

    Posted by ブクログ

    おとぎ話のような世界観でスラスラ読めた。
    部屋の内装に関する表現が素敵で心が踊る
    弟子丸氏、とても魅力的なんだけどやばいが勝ってしまった

    0
    2026年06月17日

    Posted by ブクログ

    どんなものでも標本にしてくれる「標本室」で働く薬指の欠けた事務員の話と林を通り抜けた先にあるうらぶれた社宅の一角にひっそりと存在する「語り小部屋」に導かれるように通う医科大学の事務で働く女の二篇からなる短編集。

    どちらも現実と虚構の間の白昼夢のような甘く淋しい物語でスラスラと読めてしまう。

    0
    2026年05月18日

    Posted by ブクログ

    限りなく現実でありながらも、ダークなおとぎ話みたい。
    不思議な夢をみて、しばしぼんやりとしてしまうような読後感だった。

    乾いた浴場に差し込む光や、ビー玉のつまみがついた引き出しが延々と並ぶ標本室。
    迷い込む暗い林、六角柱の部屋のつやめく木の質感。

    映画のように頭に情景が流れる。

    官能的なシーンも印象的。
    例えば、背中の感触。
    抱き合うのはベッドではない。
    一話目では、ひんやりと硬い浴槽の底。
    二話目では、陶芸工房の砂でざらついた床。

    どこかサディスティックな男のからだの重みを受け入れながら、背中は硬質な床に押し付けられている。
    逃れようとはせず、身を任せるのだ。
    美しい文章に導かれ、恍惚感すら覚える。

    ところで、二話目のミドリさんの赤い毛糸のポンポンをつけた白い水泳帽が可愛すぎる。
    あんなに可愛いおばあちゃんがいたら、私も注目してしまうだろうな。

    0
    2026年04月19日

    Posted by ブクログ

    表題作がとにかく素晴らしかった。
    静謐で澄んだ空気が伝わってくる文章、非現実的な描写はないのにどこか浮世離れした世界観。
    標本室で起きたこれまでのことも、これからのことも、ほとんど何も明かされない余白でいっぱいの短編で、でもだからこそ、読み終わった後の余韻がとても心地よかった。
    心地よくて、少し不穏で、美しかった。

    0
    2026年02月28日

薬指の標本 の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    薬指の標本
  • タイトルID
    :
    208612
  • 電子版発売日
    :
    2013年05月24日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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