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忘れたくとも失いたくはない過去に区切りをつけ、完結させるため、たくさんの人がその“標本室”を訪れる。持ち込まれる品は様々。例えば、楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、ヤケドの痕。そして、標本技術士の助手になった「わたし」は、欠けてしまった薬指の先端を。
登場するのは、皆、かつて何かを永遠に諦めてしまった人ばかり。寂しさは新たな寂しさを導いて、人々は己の物足りなさを埋めようと、他者にすがる。静謐な文章の底に息づく狂気がとても美しい。
本作は2005年にフランスで映画化されている。主役は「007 慰めの報酬」でボンドガールに抜擢されたオルガ・キュリレンコ。フランス映画らしい静けさとエロチシズムにくらくらとめまいを覚える。原作にほぼ忠実に描かれており、こちらもおすすめである。
Posted by ブクログ 2024年02月17日
大学の授業で扱った1冊。『薬指の標本』がいいな。小川洋子の作品には、身体の一部が欠如していたり、どこかを病んでいたりする女性が多く出てくることは言うまでもないけれど、これもそのひとつ。切り取られた自分の薬指が、ぷかぷかとサイダーの中に浮いている、みたいなことを主人公が想像する場面があり、私はそこが大...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年02月05日
惹かれた人に身も心も支配されたいと思う主人公の、
大人のような少女のような感情に
淡々と流れる物語が混ざりあって時折り背中がぞっとします。
2篇どちらも、想いや思い出、記憶、物体、身体、
とにかく何かを封じ込めるお話しでした。
封じ込めた後に残るのは、満足感か喪失感か
はたま...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年10月21日
「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の中編二作を収める。「薬指の標本」は、標本室という奇妙な職場が舞台で、火傷の痕や音楽まで標本にする中、わたし」は自分の薬指を標本にしようとする。「六角形の小部屋」には、一人で入って何かを語る六角形の語り小部屋が登場する。やがて「わたし」はその魅力に惹かれてゆく。不思...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年07月18日
「薬指の標本」と「六角形の小部屋」。どちらも水晶のように透き通った文体で生々しさこそ無いが、重たくて目を背けたいものがしっとりと染み込んでくるような気がする。密やかなおとぎ話のような二篇だった。
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楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。人々が思い出の品々を...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年03月29日
夢のような、おとぎ話のような不思議な雰囲気。静かな空気感の中、現実と幻想が入り混じる。そして、怖い。
薬指を欠損したわたしは、仕事を探すうちに不思議な標本室に出会う。依頼された物はなんでも標本にできるという弟子丸氏。イメージでしかない物、思い出も全てだ。その標本室で働く事になったわたしは、弟子丸氏と...続きを読む
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