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Posted by ブクログ
登録は新潮文庫だけど、実際は古書店で買った、昭和46年当時に発行されたもの。時代柄、まだ戦後そこまでたっていないこともあって、描写が戦中を経験したことがなければ書けない文章で、公式記録をもとにしたとしても現代の作家にはこういうものは作れないと思った。
これはジャンルは小説ということだが、生存者や遺族への取材、公式記録他生存者の記録、現地への取材をしたうえで書かれている。小説とした理由は直接取材し得なかった、亡くなった隊長、将校や兵卒、従軍記者、村人の心理描写を軸に話を進めたからだとおもう。実際にたどった道、どのように遭難したか、会話、生き残ったかは深く取材をしているので、実際はノンフィクションとしてよいと思ったので、じぶんの中ではノンフィクションジャンルで登録をした。
その時代でなければ・・というのはその心理描写ほか説明書きの中でも~~逆らえるはずがなかった。上官が命じたらそこまで。といった、当時の軍隊や日本の様子を肌で感じていないと書けない生生しい文章だと感じたから。文体は今でも読みやすく、山岳作家の方の文章は結構読みやすいと思っているんだけど、わかりやすい描写、転換もはっきりしていて古典感はまったくなかった。
行軍をした心理描写があったからか、自分もそこにいるかのような感覚をもちながら読んだ。絶対に経験しないことだからなのか、自分も山に行くからか、こういう遭難の話に惹きつけられるものがあるのはなぜだろう。
Posted by ブクログ
映画に感化されて八甲田山観光、その前に予習。
よかった!おそろしかった!
映画を見ているので、雪地獄がビジュアルで浮かぶ。
映画と違い、徳島隊が三本木にたどり着くまでの過酷な道のりを示し、神田隊が来ていないことを知りぞっとする。そして死へ行進が幕を開ける…素晴らしい構成で、青森隊出立からは最後まで止まらない勢い。
1番のハイライトはさわの道案内。吹雪にもかかわらず、ワクワクするような爽やかで明るい行軍となった。
日露戦争に向けた、当時の空気をひしひしと感じる。たかだか数十年前に誕生し、急速に力を持った支配階級・軍人を、市井の人々はどう見ていたのか。
最後の立川中将の「軍兵増強と知名度を勝ち得た五連隊の勝ち」判定には甚だ遺憾ではあるが、「両方が勝つ戦争というのはがあるのですか」は日露戦争を思わせて興味深い。日本は勝ったが得るものがなく、好戦の道へ突き進んだ。ロシアは負けたが、この戦争はむしろ革命を後押ししたかもしれない。
最もこれだけの犠牲を出して雪山の恐ろしさを知り、せっかく生存した頑健で有能な将兵たちを失なってまで臨んだのだから勝てないと報われなかったが…
映画ならではのドラマチックな脚色も良かったと振り返って思う。
筆者の思惑通り健さんを通した『徳島大尉』は極限まで美化され、第三十一連隊ここにありと八甲田踏破をアピール。小難しくなる銃の話など後日談はカット。可哀想だけど案内人の受難もカット。神田大尉は若く立場の弱さを強調し、顔を観るだけで苦味がするような三國の山田大佐とキャラクターの凹凸をはっきり。田茂木野での、遺体となった神田大尉との再会。厳冬の雪地獄の合間に、幻覚として美しく優しい秋までの八甲田をはさむ。
というか1世紀前にはこんな過酷な行軍をやってのける軍隊という組織があったなんて。現代、同じような環境に置かれてどれだけの人がチーム行動を保てるのか…?無謀と盲信ではあるけれど、軍という不思議な強制力と信頼を生む組織への興味が湧く。
Posted by ブクログ
プロジェクトマネジメントの全てが詰まっている…そう評価された映画の原作がこちら。
山岳遭難としてハラハラ読み応えがある。雪中行軍に挑んだ(挑まされた)2つの隊であるが、ひとつは200名近い死者を出して壊滅、もうひとつの隊は無事に踏破。無事とひとくちに言ってもギリギリのところではあるのだが。
計画も含めた入念な事前準備、指揮権の明白化、集団としての認識統一、絶対に変えないことと変えてもいいこと。これら全てを通した部隊と、全てを裏切った部隊。その対比がおもしろい。
また、単なる組織、リーダー論では語り切れない本作。
対ロシア戦争を前にして、こういう人体実験をしてしまうことからして既に思考停止だったというべきか。流れ、勢いというのはマイナスに動き出したとき本当に怖い。
企画するとき、絶対に達成することと、達成したいが無理が生じたら捨てること…改めて考えてみたい。そこのビジョンがあれば、「引き返す」ことができるのだろう。
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