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Posted by ブクログ
漂流の果て、アメリカに辿り着き英語を習得して帰国した日本人はジョン万次郎が有名だが、その万次郎の帰国と入れ違うように、同じような運命を辿った播磨の漁師の子、彦蔵の物語である。永平丸という漁船で初漁に出るも台風に遭遇、運良くアメリカの捕鯨船に救助され13歳でアメリカに渡った彦蔵。当時、日本は未だ徳川幕府が支配しており、外国船が頻繁に現れはじめ攘夷の機運が高まった時期と重なり、海外渡航者の帰国は認められていなかった時代である。絶望の中、彦蔵は同時に救助された13人の水主たちを離れ、2人の仲間とアメリカ本土に向かう。そこで出会うアメリカ人たちは皆優しく、丁重に彼を取り扱ってくれている。当時は、すでに中国がイギリスとのアヘン戦争で敗北し、植民地状態にある中、欧米人の間でひどい扱いを受けていた状況である。日本が単なる極東の植民地の対象としてではなく、独自の文化や教養に対して一定の尊敬を受けていたということが影響しているのではなかろうか。そして、ジョセフ・ヒコとしてアメリカ人に帰化する。驚いたのは、米国に滞在中の間、3名のアメリカ大統領と謁見したことであろう。ピアーズ、ブキャナン、そしてなんといってもリンカーンと会った日本人がいたとはあまり知られていないであろう事実である。
波濤に揉まれ、そして幕末、開国という大きな時代のうねりに翻弄されながらも生きていく彦蔵が、故郷だと思っていた地元にも馴染めず、日本人にもアメリカ人にも成りきれないことを悟りあることを悟り、最後に自分の居場所がどこなのかを求めて各地を彷徨う姿は哀れであった。
吉村昭の筆力そして、圧倒的な調査に基づく歴史的事実の積み上げには相変わらず感嘆する。
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