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資産家の義母を殺害した罪で獄に繋がれたジャッコは、懸命に無実を主張した。が、それもかなわず彼は獄中で死亡した。やがて、その二年後、一人の男が現われた。ジャッコの冤罪を証明する証拠をもっているというのだ。まもなくジャッコの完璧なアリバイが証明され、事態は混迷してゆく……。
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Posted by ブクログ
獄中死した家族の無実を証明する人物がやって来たことから、一家の鎮まっていた生活が掻き乱される。では誰が真犯人なのか…。 終始根底に静かな憎しみが潜んでいるような感じを受けた作品。単なる謎解きではないけれど、真実を探りながら人間の深い心理が浮き彫りにされている。
無実はさいなむ 女性資産家の殺人事件。逮捕されたのは養子の息子(ジャッコ)。息子は獄中で半年後に亡くなり、しかしアリバイを主張していたが、確認されなかった。二年後、事件の起きたアジール家にキャルガリという学者が訪れる。彼は二年前の事件当日、屋敷から離れた場所で逮捕されたジャッコを車に乗せた事実を...続きを読む伝えにやってきた。 事件当時は交通事故に巻き込まれ、その後僻地での仕事の為、彼が逮捕されたことを知らず。せめて死後であっても彼が犯人ではないという事実を明らかにする為にアジール家を訪問する。 殺人の罪で逮捕された無罪の男。彼のアリバイを持ちながら不幸により証言できず、良心の呵責を持つ学者。犯人と思われていた人物の無罪がわかり、動揺するアジール家の人々と関係者。 そして当然、事件は再捜査になり、それを担当する陰気な警視のヒュイッシ。 この作品では主人公と言われる人物がいない為、様々な目線、心情から物語が明かされていく。アジール家の人々は子供達は全員養子で性質も異なり、全員が一癖、二癖もある人物達で、その他主人の秘書やお手伝い、娘婿等人物も豊富で一体どういう性質の事件で女性資産家が殺害されたのかが終盤までわからない。また、アジール家の人々は事件を掘り返す事を拒み、それでいてそれぞれがそれぞれを疑う様な状態になっていく。屋敷全体に不穏な空気が蔓延り、様々な物が崩壊していく手前にある。 当然、二年前の事件で警察が新事実や証拠を押さえる事も難しく、更にはアジール家の人々も非協力的だ。一方、キャルガリも自身の行動によりもたらした結果が更なる不幸の連鎖になる事に責任を感じ、独自に真相を追求する。 作品としてプロットはクリスティの中でも屈指では無いだろうか。現代のミステリーでもこの様な多角的な視点でのミステリーは少ない様に思う。真実を告げたキャルガリ学者目線、再捜査により何としても事実を明らかにしたいヒュイッシ警視目線、そして養子の婿であり屋敷に留まり事件の究明に好奇心を燃やすフィリップ目線が主な視点だが、その他登場人物達の目線から語られる章も沢山あり、かつ養子姉弟という関係性を考慮しながら進行する為、少し複雑になっている(探偵や語り手が固定されていない為、その部分が不満の人もいる様だ。しかし想像してみると多角的な視点から物語の本質へフォーカスされていく様子はとても見事でドラマチックだ)。 残念な事は、最後結末(犯人が判明してからエピローグに至るまで)がまるで手抜きの作文みたいに一瞬で終わってしまう事だ。犯人を究明するパート迄至高の流れだったのにいきなりトーンダウンどころかクリスティがどこかへ行ってしまったかの様だ。実はもっと話を長くした方が重厚感や様々な人間模様が見れるし(絶望感、愛情、信念、守秘、悪意、憎悪の全てがあるはずの作品なんだ)最後の陳腐なメロドラマオチも丁寧にまとめれば傑作の一つだったのではと思う。 しかしそれでも星は5なんだ(笑)。設定、犯人の意外性、動機、悪意。これだけでもこの小説が充分に面白いと思ってしまう!!
友人に勧められて読んでみました。 登場人物の心理描写が巧みに表現され引き込まれる作品でした。人に与えすぎる事が時として人の自由を奪うことにもなるという作者の痛烈なメッセージも感じられました。
アガサクリスティーの代表作『そして誰もいなくなった』が家庭内で起こる。人々の疑心暗鬼が良く描かれている。犯人はいつものごとく予想外。
ストーリーは5人もの養子をしたお金持ちの老婦人が殺された事件、養子の一人が逮捕有罪となり(獄死している)2年が過ぎたころ、その犯人養子のアリバイを証明する人が遺族たちの住む館に訪れて、終わったことなのにいまさらどうなのと、事件蒸し返しのさざなみが立つ。 ミステリー的には遺産相続をめぐってではない肩...続きを読む透かしはいいけれど、結局犯人も平凡のよう、しかしそこじゃなかった。相変わらずの人間観察力秀逸なクリスティーなのだった。 経済力の豊かな女性に、様々の劣悪な環境から救われて清潔で立派な住居、栄養の行き届いた食事、潤沢な教育環境など、何不自由なく育てられ、いまや大人になった養子たちの心理状況はどうあったかが丁寧に描かれ、子供たちと義理母親との感情のやり取りは、実子ではないという残酷な現実も、また、その殺された女性と夫との関係がどうだったのかも解き明かされ、人間模様の複雑難儀なところは、なかなか読み応えある。人間は正しいことだけでは生きられない。
あー!また犯人はずれたー! でもあのひととこのひとが結ばれるのは早い段階でわかった!クリスティはこういうのすきだよね(^^*) 無実であることの証明は難しい。これにつきる。
アガサクリスティー。愛すべき未完全作。らしい。ちょっとおしい!っていう作品。でも、これは推理小説というよりも、心理小説。ということで、まぁ、良いとしよう。犯人の動機とか、ちょっといやだけど。もうちょっと犯人にびっくりさ加減がほしかった。まぁ、推理小説=エンターティメントな私にとってはOK
久々に再読。途中まで読んだら犯人と動機を思い出した。 資産家の義母を殺害したとして逮捕されたジャッコは、無実を主張したがかなわず獄中で死亡した。その後、ジャッコのアリバイを証明する人物が現れたことで事件は振り出しに。彼が犯人でなければ誰なのか‥ ジャッコの冤罪が証明されたことで家族が疑心暗鬼になって...続きを読むいく描写がうまいのはさすがクリステイ。ノンシリーズでミステリというより登場人物の心情が読みどころだが、個人的にはこういうのも好き。
NHKで同名の海外ドラマとして放送された作品の原作。 殺人事件というのは往々にして、エゴイズムの塊であるが、本書はそんなエゴイズムが、悲劇を巻き起こす。 資産家の女性、レイチェルが殺された。 殺人犯とされるのは、彼女の養子である、今は亡きジャッコ。 なんと、「おまえはもう死んでいる」状態の設定。 ...続きを読む話、終わりじゃん。 しかし、第三者であり、本作の探偵役のアーサー・キャルガリが現れたことで、事件が蒸し返され、改めて真犯人探しが始まる。 解説にもあるが、めでたし、な終わり方は妙な唐突感があるし、真犯人が判明するのも、なんとなく取ってつけた、感はある。 その意味では、ドラマ版の方が、私は鮮やかで面白かったと思うし、登場人物たちの育ちの背景や心情が補足されていて、面白かった。 ただ、そちらを先に見ていたからこそ、本作が分かり易かったし、読みたいと思ったきっかけであるので、優劣をつけるつもりはない。 登場人物たちにあまり感情移入ができなかったが、自分勝手さは誰もが持つ心の動きであろう。 母親との関係も、よく問題になる。 愛したのに、その愛は帰ってこないし、良かれと思っても疎まれる。 愛は自己満足に過ぎない。 それでも、愛を持って解決したのは、著者の心のうちに、愛を信じたい気持ちがあったからではないか。 何とも陳腐な憶測ではあるけれど、私も、それでも愛を信じたいと思う。
なんてこったー!から落ち着くべき所へ落ち着く手腕が相変わらずすごい。 殺されたお母さんが「死との約束」のお母さんとかぶる。 ぱっと見は違うんだけどねぇ。怖さの質がそっち方面。
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アガサ・クリスティー
小笠原豊樹
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