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「あの時以来、僕は伯母の『王国』の住人でありつづけているのです」 売れない小説家の私が若手作家の集まりで出会った、聡明な青年・澤田瞬。彼の伯母が、敬愛する幻想小説家・沢渡晶だと知った私は、瞬の数奇な人生と、伯母が隠遁していた古い屋敷を巡る不可思議な物語に魅了されていく。なぜ、この物語は語られるのか。謎が明かされるラスト7ページで、世界は一変する。深い感動が胸を打つ、至高の“愛”の物語。
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Posted by ブクログ
私が小説を好きになるきっかけになった作品です。 倉数茂さんの世界観に引き込まれて、本を読んでいる間はふわふわと別世界にいるような感覚になりました。 現実世界の話と思いきや、少しずつ虚構の世界に連れ込んでいく話の進め方がとても心地よく、最後まで飽きずに読み進められました。個人的には“かつてアルカディア...続きを読むに”が一番好きです。 言い回しが少し難しいので、読みづらいと思われる方もいると思いますが、私としてはとても大事でおすすめしたい作品です。
☆3.8 しがない小説家である私は気のりのしない宴会で、私によく似た一人の青年の澤田瞬と出会った。 意気投合し文学の話をする中、自らが敬愛する知る人ぞ知る幻想小説家の沢渡晶が瞬の伯母だと知る。 彼女の未発表作品を読ませてもらったりと交流を重ねるうち、沢渡晶が住んでいた屋敷とささやかな「王国」のこと...続きを読むや、瞬の人生をも知るようになっていく。 自らの人生や夫婦関係を振り返りながら、創作や虚構、物語を語ることの抜け出せぬ深みにはまってゆく。 三人の作家の虚実が入り乱れ絡まり合い、分かち難くなった先には何があるだろうか…… 沢渡晶という幻想小説家に大きな愛を向けたくなる。 作中作がこうまでたくさん出てくるものは初めて読んだ。 沢渡晶が素晴らしいのはもちろん、澤田瞬も「私」もそれぞれがどこか彼女に影響を受けている。 そして作中作の内容に現実がオーバーラップしている部分が多々あり、幻惑され酩酊してくる。 枠に彩られた絵画を見ていたのにいつの間にか枠を見失っていて、自らが絵の中に入ったのか、絵が現実に拡大したのかが分からなくなる心持ち。あやふやな認識。 いつの間にか、ここはどこだろう?と途方に暮れている。 こういった解離が起きるような話でありながら、それぞれの作中作の完成度は非常に高く、それはそれでしっかりまとまっているので、どちらがどちらなのか、いよいよ惑う。 「私とは……何だ?」という問いと、物語ることについてをとても考えさせられる作品だった。
プロフィールに於いて作者(倉数氏)自身を連想させる、無名の語り手による、負け犬の人生を綴ったリアリズム小説みたいなものを外枠に、別の二人の作家の幻想小説が提示されるという凝った構成のお話。この構成の意味は最後で明かされるのだけれど、なるほど。次々と異なる語り口の物語が始まるので、まるでアンソロジーを...続きを読む読んでいるかのよう。例えば、中編「幻の庭」では、半ばでいきなり、如何にもなハードボイルドミステリが始まってしまう。テーマはやはり、何故人は物語を産まずにはいられないのか、だろうか。
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