ストーリーの展開を含めて、ぐいぐいと惹きこまれていく。
大正時代の小説、古臭い小説、との先入観を持つ必要は全くない。いや、大正時代だからこそ、新たな価値観の萌芽の時代だからこそ、男女の価値観において、このような興味深い小説が書けるのかもしれない。
女性の生き方、フェミニズムをテーマにしているのだが
...続きを読む、今でも色褪せないテーマであるし、考えさせられることも多々ある。
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「男性は女性を弄んでよいもの、女性は男性を弄んで悪いもの、そんな間違った男性本位の道徳に、私は一身を賭しても、反抗したいと思っていますの。今の世の中では、国家までもが、国家の法律までが、社会のいろいろな組織までが、そうした間違った考え方を、助けているのでございますもの。」
「そうそう、ワイルドの警句に『結婚の適当なる基礎は双方の誤解なり』という皮肉な言葉がありますが、貴君の私に対する、結婚申し込みなんか、本当に貴君の誤解から出ているのです。」