日本政府の元SDGs交渉官である南氏と、現役NGO職員で民間セクターからSDGs策定に貢献した稲場氏の共著。稲場氏には前職でお世話になったこともあり、本を物したと聞いて即購入。
南氏の立場と経験を活かし、SDGsの成り立ちや交渉の裏話を楽しむことができるのが面白い点の一つ。他のSDGs解説の本では
...続きを読む、こういった各国のSDGs策定における思惑や経緯を知ることは難しいと思われる。
中盤以降は、稲葉氏と南氏の人脈や経験に基づく、SDGs達成に向けた様々なアクターの取り組みの実例が紹介されていく。SDGsを絵空事にしないためには、地方自治体や個人といった「下からの力」が必要なのだということがよく分かる。
終盤では、SDGsのうち主だったゴールを達成するためのヒントや視点についてまとめられている。著者2名が冒頭で断っている通り、17のゴールすべてについて扱うのは難しいということで、取り上げられているのは半数程度。元々、SDGsのゴールやターゲットは膨大なので致し方ないところもあるが、ページ数が増えて価格が上がってしまったとしても、もう少しだけ多くのテーマを取り上げてほしかった、という気持ちもある。
COVID-19以降に出版されたこともあり、今、人類が直面している「新しい危機」と、2020年以前から存在していた「古い危機」とを、SDGsを軸に繋ぎ合わせ、関連づけて考えることができるように工夫されている。概論に留まるところもややあるが、2020年末時点のSDGs入門書・概説書としては最良の部類に入るのではないか。