SDGs策定までの道のりや、SDGsの活用例等が掲載されている。
個人的に面白いと感じたのはSDGsのそれぞれのゴールの関連性と地方創生のお話である。SDGsのそれぞれのゴールは相関しているが、それはあまり世の中に周知されていない感覚がある。SDGsの投資基準等の概念であるESGでは、Eの環境問題へ
...続きを読むの取り組みや脱炭素に関しては理解できるのであるが、Sの不平等の是正や、GのガバナンスがEにすぐには結びつかないと考える人もいるであろう。本書では、この部分についてレジリエンスを高めるためと説明している。資源が不均等、非効率に配分されている社会は、気候変動などの地球の限界に関わる危機や急性感染症などのその他のグローバルな危機に対して弾力性や回復力が十分にない、脆弱性を抱えた社会である。Eに取り組む前提として、SやGが必要であるという考え方である。ESGはこれまで不可視であったが重要と考えられていた概念を言葉にしたものである。私の好きな宇沢弘文氏は『自動車の社会的費用』の中で、何十年も前から、カーボンプライシングについて言及しているし、『社会的共通資本』でもSの在り方について述べている。資本主義はこれまで外部を作り出し、外部にコストを移転することで成長してきた。兼ねてより公害問題等は外部不経済と言われてきたが、我々の生きる世界に外部は存在しない。経済学における外部とは数値化できないというだけのことである。環境問題は危機的な状況であり、今後日本でも気温上昇により熱帯地域での感染症等が発生する可能性もある。そうした危機の時代の中で、社会が立ち向かうためにはレジリエンスが必要であり、レジリエンスを高めるためには根本的な不平等の是正や情報の開示が求められている。
地方創生と言う観点であるが、個人的な感覚としてはローカリゼーションとグローバリゼーションはウロボロスの蛇のように、突き詰めると繋がってくるのではないかと感じた。地方における社会課題の解決に、SDGsの言葉を当てはめて進めている地方自治体もある。国家という枠組みの中では解決できていない概念は地方ではあきらめられていたが、SDGsという言葉を活用することで世界性をもった取り組みになるというある種逆説的な動きにはミュニシパリズムの流れも感じる。