好奇心がくすぐられる題名。わくわくしながら読みました。
本書は半径6,400kmの地球の中身を最新の研究で論じる学術的な科学読み物。地球を表面から見ると岩石から成る「地殻」と「マントル」があり、中心には鉄でできた「コア」があります。子どもの頃から、どうしてそんなことがわかるんだと不思議に思っていま
...続きを読むした。実際、人類が地球に開けたもっとも深い穴の深さはたった12kmですから、地球の中身の観測は不可能です。
中身を知るのに地震波のP波とS波の習性を利用することは聞いたことがあります。ただ、それだけでは地球の深部を構成する岩石はわかりません。そこで「高圧高温実験」が登場します。たとえば、上部マントルの底近辺、深さ410kmの環境は、圧力15万気圧、温度本書1500°Cです。高圧高温実験とは、上記の環境を作り、その環境での岩石を「人工的に作って」しまおうというもの。
著者の廣瀬敬さんの専門は高圧地球科学、地球内部物質学。実際、マントル最下部の主要鉱物ポストペロフスカイを作り出した実績を持ちます。したがい、説明がわかりやすいだけでなく、好奇心も刺激されぐいぐいと本書に引き込まれました。
地球内部の各層は複雑な構造をもち、動き回っています。そして本書は地球をひとつのシステムとし、海の存在→プレート運動→外核の対流→磁場の形成→大気の保持→海の維持を説明します。磁場があるから地球は宇宙線から保護され、大気や海が保持されるという一連のシステムにより、地球内部の動きにより生命が維持されていることが理解できます。
本書の後半では、地球の誕生プロセスと初期の地球に起きたイベント、すなわち火星サイズの天体との衝突(ジャイアント・インパクト)や地球全体を覆ったマグマの海(マグマオーシャン)の形成、コアとマントルの分離(コアの形成)などを紹介しながら、他の惑星との相違、そして地球の生命の誕生も論じます。地球だけでなく、火星や金星の中身まで推理するスケールの大きな内容です。
何度でも読み返したくなるようなブルーバックス。「できれば近い将来、地球の深部の姿から太陽系における地球の起源を明らかにして」続編を書きたいとあとがきにあります。これは期待してしまいます。私自身がボケる前に是非読みたいです。