作品一覧
-
3.6第17回小説現代長編新人賞受賞作! ーー1秒が、あなたを変える。必要なのは「1粒の種」。 奇跡の花と不思議な青年をめぐる、再生の物語。 綿来千晶は、息子に手を上げた夫と離婚したばかりで鬱々とした日々を過ごしていた。彼女は、偶然入った霊園事務所で日置凪という青年に出会う。親しみやすく価値観の合う凪に、ぽつぽつと悩みを打ち明ける千晶。すると彼は「ひとつだけ、おとぎ話をさせてください。」と「うるうの朝顔」という不思議な朝顔の種を取り出した。 なんでもその花を咲かせると、現実とはほんの少しだけ変わった過去をもう一度体験でき、その瞬間から始まっていた心の「ズレ」が直るという。その夜、千晶には、姉が父に殴られた日の記憶がよみがえり……。
ユーザーレビュー
-
Posted by ブクログ
──〝うるう〟とは、大きなズレを正すために作られた余り物──
〝うるうの朝顔〟と呼ばれる花の種は、花を咲かせた人のズレを正す不思議な種だという
その人の過去に〝一秒間〟が挿入または削除される
人の中にある何らかの矛盾や不調和
噛み合わないまま空回りしている歯車
そんな過去に立ち止まったまま苦しむ人たちは
その一秒間によってどんな変化が起きるのか
ほんの少しきっかけを与えられる事で、人は前へ動き出せるものかもしれない。
なぜあの時…という後悔。
何度も思い出しては、目を背ける出来事。
そして苦しむ…
それでも、もがきながらでも、前を向こう。
そんなふうに思える一冊だった。
物語の舞台