多岐にわたる精神疾患を一般の方向けに噛み砕いて説明しており、「精神障害者が社会に出て行くときの、高いハードルを取り除く作業として、最も重要なのは、一般市民が正しい知識を持つことだ」という松崎先生の理念が伝わってくる1冊であった。
パーソナリティー障害も10分類全て紹介されていたのが印象的だった。これ
...続きを読むらの発症の背景が個人的には気になるところではあるが、そこまで説明すると膨大な量になってしまうので今回は触れられていなかった。パーソナリティー障害は基本的に治療法が確立されておらず、医療者以外との連携がより重要な領域だろう。今後の展望が気になるとこである。
✏急に激しい不安に襲われるパニック症や、誰かと一緒にいないと不安でいられない分離不安症も、どちらも周囲に助けを求め、生存する可能性を高める機能とも言える。 つまり、精神障害とは、人が生き残るための能力の一部であり、その能力が暴走しているとも考えられる。
✏精神障害の原因は、身体疾患など外的なもので誘発される「外因性」、脳の機能の障害によって生じる「内因性」、ストレスや考え方の癖からくる「心因性」の3つに分類される。
精神科医が扱う精神障害で、最も多いのが内因性である。内因性精神障害の多くは、薬物療法の対象となりうる。
心因性の精神疾患には、精神科医による精神療法、心理師による心理療法(カウンセリング)など、対話が重視される。
(←心理士さんは基本的に心因性のものが専門。ここが精神科医と心理士さんの大きな違いと言えるだろう。)
✏変換症はストレスに伴い身体症状が出現するもので、転換性障害とも呼ばれる。
身体症状が出ていれば、そちらに意識が行って大元のストレスについては目を背けることができる。つまり、その症状の存在が、本人にとって利益をもたらす「疾病利得」が生じていることがある。
✏解離性同一症の治療では、別人格の登場を遮ることなく理解に努める必要があるが、「あなたは何歳なの?」「趣味は?」など、別人格の詳細について質問することは避けたほうがいい。本人が語っていないことについてあれこれ聞くことは、別人格をより強固に形成することにつながるからだ。
✏パーソナリティ障害全般について言えることだが、あるときに「発症」するというよりも、もともとあった気質のようなものが成人期早期までに明らかになり、短期間では変化せず一貫した傾向が見られる。
✏彼らと話す中では、不用意に本人の気持ちのあり方や性のテーマといった個人的領域に深く踏み込まないようにすべきだ。踏み込みすぎて本人が治療者の共感や温かさを感じると、かえって葛藤や混乱が高まってしまう可能性もある。
✏治療者は本人の主張の「真偽」を判断しない立場を取ることだ。
✏関わる者の小さな振る舞いが本人の不信感の原因となりうるので、何か間違いを指摘されたら、自分の至らなさを認める率直さも必要だ。
✏サイコパスについて、親の育て方などが論じられることがあるが、そうした二次性の要素は乏しい。育ち方による二次性のサイコパスはソシオパスと呼ばれることもある。本質的な原因として、脳の特性が指摘されている。扁桃体が小さく、セロトニンやドパミンが過剰という。つまり、人はサイコパスになるのではなく、サイコパスとして生まれるのだ。