南アフリカ共和国でくらしたNHKの記者が、密猟者からサイを守ろうとしている人々を取材したノンフィクション。
黄色の地にサイの大きな写真と題字がポップで明るい印象の表紙。
口絵の写真はどれもきれいだが、大きなサイが横たわったその前に顔を伏せて泣いている人の写真があり、この本には辛い事が書かれていること
...続きを読むを暗示している。
日本にも野生のサイがいたとか、口絵の写真が出ていたシロサイとクロサイの違いとか、サイはフンを通じてコミュニュケーションをとっているとか、サイの若者はバディを組んで旅にでるとか、ほおーと思って面白く読んだ。しかし、メインテーマである密猟者とそれを守る人たちの戦い、それも密猟をするものと守るものが同じ地域出身だったこともあるなどの現実、この戦いの要因が、遠く離れたアフリカの歴史であり、今の社会問題の貧困であり、アジアの迷信から角を欲しい人がいてアジアのサイが密猟で激減したからアフリカに密猟が移ったなど、わたし自身もアフリカの人達に迷惑を掛けているように感じで、読んでいくと恐ろしくなった。自分はレンジャーではない。レンジャーの方々にそう思う資格がないと言われそうだが、この社会の現実のバカさに怒りを通り越して虚しささえ覚える。怒りと虚しさを感じるのは、ロシアのウクライナ侵攻をも思い出してしまったからだ。世界は理不尽だ。
しかし、もちろん希望の光もある。
新しい動き、不屈の精神を持った強い人たちも描かれていてる。
2022年読書感想文小学校中学年課題図書。
この本を読んだ数日後に、静岡市の日本平動物園で展示していたミナミシロサイのオスの角が盗難にあったとのニュースが流れた。園長によると末端価格は6,000万を超えるかもとのこと。この本に書かれていた危険を承知のやりあいが、この金額だからだと(イヤだけれど)へんに納得してしまった。