エルビラ・ナバロの短編集。スパニッシュ・ホラーと銘打ってあるが、どちらかというと幻想文学?
日常の何気ないことが、非常にむず痒く気持ち悪く描写されることが多く。嗅覚、触覚を使い読書をする感覚。良かった。
○ヘラルドの手紙
付き合っている男性との別れを決意した女性の心理を描いた短編。現実なのか、この
...続きを読む女性の妄想なのか。凄く曖昧な、真ん中はハッキリしてるけど、周辺がボヤけているような。なんとも言えない読後感。シャワー室の虫の描写が気持ち悪い。女性の心理を表しているのか、むず痒くなる。
○ストリキニーネ ★おすすめ
最後の一行怖い。耳たぶから肢が生えてくる時点で怖いけど。だんだん、自分の身体が乗っ取られそう。それにしても最後の一行がとんでもなく怖い。
○兎の島 ★おすすめ
表題作。一見愛らしい兎の、醜悪な行動。本当に気持ち悪い。一つ一つの描写が気持ち悪い。これほど気持ち悪いって感想しか湧かないのが凄い。
○後戻り
衝撃の一行(おばあちゃん)。二度見した。そしてその後の思春期ならではのいじめ。仲良くしていた子が急にそっぽ向くとか。おばあちゃん以外は普通の短編。おばあちゃん以外は。
○パリ近郊
これまたよくわからない読後感。不思議な世界観。滲み出る不安感というか、何もないのに焦っている感覚がある小説。
○ミオトラグス
前半と中盤以降のつながりが全くわからなかった。小山羊の肉じゃないと言ってクレームをつける女と、絶滅したヤギ、ミオトラグスをもう一度見たいと探す変態貴族。時代も違うようで、本当によくわからない短編だった。
○冥界様式建築に関する覚書
発狂した兄と建築を学ぶ弟の話。霧がかったように描写が、背景がボヤける。不思議な感覚の短編。
○最上階の部屋
他人の夢を見てしまう料理人の話。住み込みでホテルの最上階をあてがわれており、宿泊客や乗務員の夢を受信してしまう。段々と正気ではいられなくなり、最後は建立されたばかりの橋梁の下で100万人の夢を見るというとんでもない話に。他の話よりわかりやすいかも。
○メモリアル
死んだ母からFacebookにメッセージが届く。イタズラか、なんなのか。読みやすく、すんなりと情景は理解できる。最後の手記も良い。
○歯茎 ★おすすめ
もう結婚式の話をしたくないカップルが結婚式の偽装、偽の新婚旅行を行う話。結婚に向けた葛藤が、偽の夫の歯茎の腫れと共に示される。彼女の不安が、偽の夫の臭い息と共に深まっていく感じがシュール。
○占い師
未来を予言するメールが勝手に届く話。自身の不安を他人が形にすると、あたかも予言に思えるだろうなぁと。