作品一覧 2024/05/23更新 中江兆民 三酔人経綸問答 NEW 試し読み フォロー 朱子学と陽明学 試し読み フォロー 1~2件目 / 2件<<<1・・・・・・・・・>>> 島田虔次の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 中江兆民 三酔人経綸問答 桑原武夫 / 島田虔次 これほど多面的な解釈をできたということは、計り知れない能力を備えた人物であったことを意味している。未来を見据えた内容である。 Posted by ブクログ 中江兆民 三酔人経綸問答 桑原武夫 / 島田虔次 中江兆民、歴史の教科書で学びますが、実際にその著書を読んだことはありませんでした。この本は、現代語訳と、ルビを付した原文が併載されています。この時代から、立憲制、民主制、恒久平和、死刑制度廃止が議論されていることに感銘を受けます。 Posted by ブクログ 中江兆民 三酔人経綸問答 桑原武夫 / 島田虔次 明治日本が経綸する上での、様々な意見が述べられる。 あくまでも著された明治20年の時点では、紳士君が述べる事柄と 豪傑君の述べる事柄のどちらも等しく極端であると退けられている。 この後紆余曲折を経ながら60年かけて豪傑君の意見が国内の 指導層の間で大勢を占めるすことを思うと、まさに隔世を感じる。 ...続きを読む 果たして南海先生と紳士君と豪傑君の3者のうち、どの意見が 中江兆民の真意に近いか分からない。 ただ解説であった通り、どれも兆民の意見であるというのは正しい のだと思う。 なにしろこうも客観的かつ冷静に三者の意見を著述するのである。 三者の意見はその全てが経綸のための手段にすぎず、 手段の全てがその国内情勢や国際情勢によって変化することを 自覚していたのではないかと思う。 Posted by ブクログ 中江兆民 三酔人経綸問答 桑原武夫 / 島田虔次 時の政策を批判する時に、批判ばかりしていたのでは良くない。対案は持つべきではある。しかし専門家ではない市民の身、原発政策や経済面の複雑な論議に入っていくと埋没してしまって抜け出せなくなる。よって、一番根幹の論議とは何かを考える。根幹を押さえて置くと、結論は直ぐに出るだろう。すると、結局はアメリカとの...続きを読む関係をどうするのか、というところに行き着くのである。それは即ち日本の外交政策をどうするのか、というところに行くだろう。だから憲法9条をどうするのかということは、世の中ことを論ずる時には必要不可欠だし、中国脅威論云々というのは、基本的には決して無駄な論議ではない。 しかし繰り返すが、専門家ではない市民の身、脅威論等の細かな軍事比較などしては居られない。良いのは、物事の最初に立ち返ること。グランドデザインを決めた明治の論議をみることだろう。 格好のテキストがある。それが本書である。原文と現代語訳の両方があり、訳文は現在に至っても多分最高峰である。 三者三様の立場から意見を闘わして方向を探るのは、空海の「三教指帰」から始まり良い方法である。 紳士君は「民主政治」の立場をとる。(←共和主義に近い)そうなって「自由平等」になれば、軍備や戦争は必要ではなくなる。学芸も栄え、道徳も高尚になる。万一他国が攻めて来たら、主張すべきことは断乎として主張し、「弾を受けて死せんのみ」と答え豪傑君の失笑を買う。 豪傑君はどうか。争いは動物にとっても人間にとっても避けられないものであるだけでなく、政治家や軍人にとっては楽しみである。恋旧家と好新家が対立するが、恋旧家は社会の「癌腫」だから、それらをアジアかアフリカの大陸に送り、小国を大国にする方法を構ずればよい。そのことにいま着手しなければ、欧州諸国はかならずアジア侵略を開始するだろう。という。 詳しくは読んで頂くとして、現代の我々に最も傾聴に値する論は南海先生の論だと私は思う。 専制から一挙に民主制にはならない。立憲制をとおるのが順序である。恩賜の民権を大切に扱い、回復の民権に変えていくのが進化の理法であるという。ここは、兆民自身が「いささか自慢の文章です」と書いているように、当時最も現実的なグランドデザインだったと思う。 さて、外交である。「もし彼らの軍備拡張が小規模であるならば、あるいは爆発するかもしれないが、大規模に軍備拡張しているから、爆発することはあり得ないのです。」これは中国脅威論、昔ならソ連脅威論にあたるだろう。それでも、もし攻めてきたとしたら専守防衛に尽くすしかない。「わがアジア諸国の兵隊は、それで侵略しようとする時には不十分だけれども、それで防衛するには十二分なのです。」「二つの国が戦争を始めるのは、どちらも戦争が好きだからではなくて、じつは戦争を恐れているために、そうなるのです。」「要するに、外交上の良策とは、世界のどの国とも平和友好関係を深め、万やむ得ない場合になっても、あくまで防衛戦略を採り、遠く軍隊を出征させる労苦や費用を避けて、人民の重荷を軽くしてやるよう尽力してやること、これです。」 この結論に対して紳士君、豪傑君共に「少しも奇抜なことはない。今日では、子供でも下男でもそれくらいのことは知っています」と笑ったが、果たして現代日本の若者はそういう水準だろうか。自衛隊は果たしてこうなっているか、知っているだろうか。(←じゃあ、お前は自衛隊を認めるのか、と聞かれたならば、私は「安保条約を廃棄し、自衛隊を一旦解体し本当の自衛隊になれば認める」と言おうと思う) 専制から立憲君主制に移り、やっと民主制に移りつつある現代(移ったとは決して言えない)、最も現実的なグランドデザインはこうだ、と私も思う。現実的だけれども、未だ現実化されていないのが、日本の不幸なのである。 Posted by ブクログ 中江兆民 三酔人経綸問答 桑原武夫 / 島田虔次 中江兆民の思想が盛り込まれた傑作。現代語訳されているためとても読みやすく、また日本の経済・政治の論点が見える。この時代も今も根本的な論点は変わらないのだと思うと先人たちは偉大だと感じると同時になんだか少し残念に思えるが仕方ないことなのであろう。それが政治なのかもしれない。 Posted by ブクログ 島田虔次のレビューをもっと見る