〇ある眼鏡屋をめぐる、高校生の青春哲学物語。彼は何を見つけるだろうか?
メガネ男子・白砂瞬は、大学受験が近づく中父親の経営する眼鏡店で店番をするのが放課後のもっぱらの過ごし方だった。あるときそこに来た、メガネを作りに来たひどい視力の38歳女性・一村那知がパートとして働くことになる。絵のうまい彼女と
...続きを読む古いマンガで意気投合し、そしてマンガアシスタントをしていたと知った瞬は、マンガ賞へ応募することを提案し手伝うと言い出して執筆がはじまるが・・・
白砂家は、恋愛結婚だったのに母が父をこきおろし、妹は生意気。その長男が瞬。どこにでもありそうな家族だが、なんだかいびつに読者は感じるはずだ。
一村家は、昔仕事していた那知が結婚し子どもを産んだときに、子供を守り切れず悔やんで離婚する。
その2つの家族にはさまれる瞬の、思春期最中の葛藤やうっとうしく思う感じは、なんだか懐かしくさえ感じるのではないか。友達にいたとか、自分もそうだったとか。
白砂家のいびつさは、最後に破裂する形で明かされるが、そこまで読者の興味をひっぱってやまない。
瞬がある女性に惹かれてしまうが、それはなぜだろうか。家族にヒントがあるのかもしれないが、瞬の家庭での抑圧、やりたいことを見つけられていない苛立ち、瞬のやさしさ、すべてが複雑に絡み合って、物語を作り上げる。
ここに紹介していない様々な登場人物のエピソードも面白く、高校生が「哲学」する様を見せつけられながらも、ずっと飽きずに読ませる小説になっていると思う。
結論は残念だったが、登場人物それぞれが成長できたという点ではハッピーエンドなのでは?