現代中国の様々なSF作家の作品を集めたアンソロジー。傑作揃いで非常に読み応えがあった。
全体的にディスピアものが多く、激しく変動する中国社会に苦悩する作家達が、世界に示したある種のアレゴリーとしても受け取れる。
一方で、美しい詩的表現が目を引く作品もいつくかあり、詩歌(漢詩)の国 中国 の豊穣な蓄積
...続きを読むが感じられた。
以下、気に入った作品を軽く紹介。
・龍馬夜行/夏笳
長い眠りから目を覚ましたロボット“龍馬”。長い年月の間に、地球から人類の姿は消えていた。“龍馬”はひとり、夜の旅をはじめる…
幻想的な情景と、海子(中国の詩人)の詩の引用が、寂しい夜の旅を美しく描き出す。
・折りたたみ北京/郝景芳
表題作にもなっている作品で、中国社会の貧富の差がSFに織り込まれている。
来る日も来る日も厳しい労働に明け暮れる主人公の現実にやるせなくなる。
胸を締つけるラストに、読んだ後もずっと切ない気持ちが続いた。
・蛍火の墓/程婧波
SFとファンタジーを織り交ぜたような幻想的な世界観が、夢のように美しい。
そのあまりに緻密な文章表現にひたすら魅了された。
・神様の介護係/劉慈欣
壮大な宇宙スケールと中国古来のヒューマニズムが合わさった傑作。
作者の想像力にただ圧倒される。