以前レビューした「冬の夜ひとりの旅人が」のカルヴィーノの、代表作の一つ。
アジアでの経験を書いたマルコ・ポーロの「東方見聞録」のパロディ。
まだモンゴルにいる若き日のマルコが、フビライに聞かれるまま、旅の途中で見てきた都市について語ります。
各都市についての記述はそれぞれ1~3ページくらい
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その間にマルコとフビライの描写があって、コミュニケーションとは、都市とは、文明とは、と言ったテーマがあるようでもあり、それを深読みしすぎないほうがいいようでもあり。
凝った構成といい、すごく計算しつくされているようでもあり、でもたぶんその計算をすべて読み説くことを著者は求めてない感じでもあり。
つかまえようとすると指の隙間からにげてしまう、砂漠の幻のような読後感です。
原文のイタリア語がわからないけれど、ちょっと古めかしい敬語調が、雰囲気にあっていていい感じ。
折にふれて読みなおしたい一冊。
そうそう、この前読んだ「アメリカの鱒釣り」の解説で、柴田元幸さんが、「アメリカの鱒釣り」「百年の孤独」と並んで文庫になるべきと思う三大外国小説(?)にあげていました。
たしかにこれを持って旅に出たいかも。