米川良夫のレビュー一覧

  • 見えない都市
    イタロ・カルヴィーノ1972年の作。ネタバレを回避してあらすじを書くのが不可能な作品ともいえるし、話の展開のようなものがなく、なにを書いてもネタバレにならないともいえる。いずれにしても、おそらく、何通りもの読み方ができる不思議な書。

    フビライ汗に気に入られた(もしくは取り入った)マルコ・ポーロが旅...続きを読む
  • 見えない都市
    モンゴル帝国元朝の皇帝フビライと「東方見聞録」のマルコ・ポーロとの対話のなかで、マルコが実際に行ったり見聞きした都市の様子を伝えていく。ところが、ほとんどすべて実際には存在しないマルコの創作。マルコの話をきいているという構図なら、読者はフビライになって耳を傾ける。Googleマップがないのが幸い、そ...続きを読む
  • カルヴィーノ アメリカ講義 新たな千年紀のための六つのメモ
    カルヴィーノから未来へ向けられた、文学についての6つの提言。
    その中でも注目すべきは「軽さ」。
    あゝ、なんともカルヴィーノ的!
    他の文学者、学者なら同じことを言うだろうか。

    純文学でございと重々しく後代にのしかかっていては、文学は途絶えてしまうだろう。
    文◯春◯や☓原☓太郎氏に、利権を死守するべく...続きを読む
  • 見えない都市
    フビライ・ハンの部下のマルコ・ポーロが、皇帝の領土の街を観察していろいろ報告するよ!あれれ、その街しってる...それってきのう夢でみた街!その街はアレにでてきたアレじゃないっすか...?私の街、そこ!!そうだね、都市の性質、性格ってそういうもの! そもそも二人が会話してるのかすらあやしい、いろんなギ...続きを読む
  • 見えない都市
    以前レビューした「冬の夜ひとりの旅人が」のカルヴィーノの、代表作の一つ。

    アジアでの経験を書いたマルコ・ポーロの「東方見聞録」のパロディ。
    まだモンゴルにいる若き日のマルコが、フビライに聞かれるまま、旅の途中で見てきた都市について語ります。

    各都市についての記述はそれぞれ1~3ページくらい...続きを読む
  • 見えない都市
     マルコ・ポーロがフビライ汗に、自分が旅してきた都市の話を聞かせるという設定で、架空の都市の見聞記と、各章の最初と最後に挿入されるマルコとフビライの対話で構成されている小説です。短い章節の集合体なので読みやすいかと思いきや、結構話が抽象的で読みづらい部分もあった……

     でもすごく面白かったです。...続きを読む
  • 見えない都市
    都市論と物語が融合した散文詩のような小説。マルコ・ポーロの報告する、見えない都市達。読んでいると空虚と飽和に気が遠くなりそうです。
  • 見えない都市
    「物語を支配するのは声ではございません、耳でございます。」
    不可思議で幻想的な「語り」と、核心をつくアフォリズム。ページの角を折りまくってしまった。
  • 見えない都市
    磯崎新の著作経由で読んだ本。
    とはいえ、ぼくが生まれる2年前に編みだされた本かとおもうと、まあそんなんはどうでもいいか。
    編んでるんだけど、編み針が所々にみえてくるのがすごい。おそすぎた60年代万歳、ってかんじ。
  • 見えない都市
    いったい人はどのようにして本と知り合うのだろう。こんな不思議な本を読んだ後では、つくづくそう考えずにはいられなくなる。世の中には読まれるべき本が読まれることを待ち続けている。勿論、その言明は個人に対する言明に過ぎないのであって、一般論ではない。そしてまた、その個人とて、一瞬いっしゅんが連続した個人で...続きを読む
  • 見えない都市
    マルコ・ポーロがフビライ汗に旅してきた各地の街を語るだけなのだが、その語られる街の数々がとても奇妙。
    おとぎ話のような空想都市の強烈なイメージの数々を聞いているだけでも面白い。
    抽象的なものも多いのだが、語りの美しさもあって、あっという間に読んでしまった。
    そして差し込まれるマルコ・ポーロとフビライ...続きを読む
  • 見えない都市
    p69湖水の鏡の上にあるヴァルドラーダ「おのれの一挙手一投足が、ただ単にそのような行為であるばかりか同時にその映像ともなること、しかもそれには肖像画のもつあの特殊な威厳が与えられていることをよく心得ており、こうした自覚のために彼らは片時たりとも偶然や不注意に身をまかせることを妨げられておるのでござい...続きを読む
  • 見えない都市
    モンゴルの皇帝とマルコ・ポーロ。この組み合わせだけでも読む価値があるというもんだ。カルヴィーノは言葉しか信じないが、われわれ凡人は実在を期待してしまうので、永遠に届かない世界を「あるんじゃないか?」と期待しながら、むなしく空回りしてしまう。
  • 見えない都市
    その都市はいったいどこにあるのか。強大な力を持って果てしなく領土を広げゆくフビライと、地の果てまでひとり行くマルコ・ポーロが、それでもまだ知ることのできない都市と、どこかで見た都市を巡って時を過ごす。見知ったようなそれでいて遠い世界のお伽話が、電車で向かう仕事先とさえ重なり合う重畳された時間の流れの...続きを読む
  • 見えない都市
    この本の好きなところはどこかと聞かれるとすごく難しいけど、決して難しい理由じゃない。幻想小説はたいがい安易だけど、これはそうじゃなくてあるべき形ができてます。”物語”というやつがなくて、"詩"です。昔は疲れてほったらかしにしてたけど、良い本です。
  • カルヴィーノ アメリカ講義 新たな千年紀のための六つのメモ
    カルヴィーノが晩年にアメリカで行った講義ノート.講義自体は6回であったが,本人が文章としてまとめることができたのは5回分であった.6回のテーマはそれぞれ,軽さ,速さ,正確さ,視覚性,多様性,一貫性であった.どれもカルヴィーノ作品のキーワードと言えるだろう.これは,その逆となる言葉を常に意識していたこ...続きを読む
  • 見えない都市
    旅行がしたくなる一冊。マルコ・ポーロが訪れた諸都市の様子を、フビライ汗に語るお話。語られる都市が現実にあろうがなかろうが、絵も写真もないのに言葉だけで、聴いたフビライ汗はその諸都市を想像できる楽しみ。その楽しみを読者も疑似体験できます! ないと分かっていても楽める人間の想像力の力を体験いたしましょう...続きを読む
  • 見えない都市
    経験すれど言葉にならない風景がある様に、言葉に表せども経験できない風景もまた存在する。フビライ・汗にマルコ・ポーロが語り聞かせる架空の都市はどれも奇妙かつ不可思議なものばかりだが、何も言葉通り受け取ろうと肩肘張る必要はない。マルコが言う通り、物語を支配するのは文字ではなくあなたの眼差しなのだから。こ...続きを読む
  • 見えない都市
    若手建築家がおすすめの本ということで手に取りました

    イタリアの作家さんの小説です。

    あまり自分からは手に取らないたぐいの小説だったのですが、読み始めるとその独特の世界観にいっきに引きこまれてしまいました。

    マルコポーロがフビライ汗に彼が訪れた(と思われる)幻想的な都市の様子を語る。という体裁で...続きを読む
  • 見えない都市
    フビライ汗に、マルコ・ポーロが帝国内の55の「都市」の様子を報告するという形式の小説。

    「都市」の姿は、そこで生活する人間の内面の反映である。フビライはマルコ・ポーロのさまざまな「都市」についての報告を通じて、「帝国」の姿を理解しようとするが、それはそのまま人間の精神を理解しようとする試みでもある...続きを読む