作品一覧 2023/02/22更新 貧困と飢饉 試し読み フォロー 不平等の経済学 試し読み フォロー 不平等の再検討 潜在能力と自由 試し読み フォロー 1~3件目 / 3件<<<1・・・・・・・・・>>> アマルティア・センの作品をすべて見る
ユーザーレビュー 貧困と飢饉 アマルティア・セン / 黒崎卓 / 山崎幸治 貧しい国も貧しいうちは保健と教育に投資した方が良い。「(貧しい国が保健と教育に多くを支出する余裕があるのか)多くの貧しい国々――スリランカ、中国、コスタリカ、インドのケーララ州他――がまさしくそれに成功したという、実証的な事実について述べるだけではなく、裕福な国より貧しい国の方が公衆衛生・医療サービ...続きを読むスや基礎教育制度を提供するコストがはるかに安いという、一般的な事実を理解する必要もある。その理由は、保健も教育も労働集約的な活動であり、貧しい国の方が賃金が低いために保健や教育のコストがずっと安くなるからである。(中略)国が非常に貧しいうちは、これらのサービスに支払わなければならないお金もまた、著しく小さいのだ。」 日本の徳川時代と明治時代の比較研究までも引用している。かなり勉強になった。権原という訳語が少し難解だが、それ以外はわかりやすい。 Posted by ブクログ 不平等の再検討 潜在能力と自由 アマルティア・セン / 池本幸生 / 野上裕生 / 佐藤仁 1998年にノーベル経済学賞を受賞したインド人経済学者、アマルティア・セン氏の主唱している「ケイパビリティ・アプローチ」の概略が分かる本でした。センは人間の福祉の指標としてGDPや富、効用、幸福度を用いるよりも、各人のケイパビリティに着目するべきだと主張しているわけです。まずこれは訳者自身が冒頭およ...続きを読むび巻末に記載していますように、本書内で度々使われている「潜在能力」と「福祉」は、それぞれケイパビリティ、ウェルビーイング、と置き換えて読むと一層理解が深まります。逆に言うと潜在能力、福祉として読んでいると混乱することが多々あります。ケイパビリティは何かといえば、「~をすることができる能力(自由)」を意味していて、実際に顕在化している能力を含んでいます。そしてウェルビーイングとは文字通り「良い状態であること」を意味します。福祉というとウェルフェアを連想することが多いかと思いますが、これはどちらかといえば何か良い出来事が起きるという行為ですが、ウェルビーイングはBeing(存在)という文字があるように、良い状態であることを意味します。そしてセンは、各人のウェルビーイングを高めることを人類の目的とし、それが達成できているかを判定するものとして各人(もしくは集団の)ケイパビリティを見よ、と主張しているわけです。 翻って現実社会を見ると、GDP成長率を高めよ、生産性を高めよ、ROE(株主資本収益率)を高めよ、というスローガンがあちこちから聞こえてきます。そして我々はあたかもこれが「目的」であるかのような錯覚を持ってしまうのですが、目的はあくまでも人々のウェルビーイング向上であって、所得や富、生産性は手段でしかありません。またミクロ経済学では各人の効用(ユーティリティ)を最大化するという思想がありますが、これはGDPや富ではなく幸福度、満足度(の総和)を最大化しようという意図があります。これに対してもセンは問題点を指摘し、ケイパビリティの優位性を主張しています。またこれはミクロ経済学の知識がないと理解が難しいのですが、センは人間が持つ「機能」と「ケイパビリティ」をそれぞれ「点」「空間」という風に解釈しています。つまりケイパビリティは機能(できること)の集合で、ケイパビリティが高いというのは、その選択した機能の高低によって得られる空間の広さ(選択できる余地の広さ)を意味します。 以上、私自身の頭の整理の意味も込めて書きましたが、ケイパビリティ・アプローチは非常に本質を突いているという印象を持つのと同時に、正直理解が難しいとも感じました。逆に言えば、すっと頭の中に(腹の中に)落ちていく概念として説明出来るようになれば、一気に世の中に広まるのではないかと思います。ケイパビリティ・アプローチの主な適用分野は発展途上国の貧困問題、格差問題などですが、最近では先進国の様々な経済社会問題などにも適用されることがあるそうで、個人的には21世紀の新たな指標としての可能性を強く期待しました。 Posted by ブクログ 不平等の再検討 潜在能力と自由 アマルティア・セン / 池本幸生 / 野上裕生 / 佐藤仁 > よりたくさんの選択肢を持っているということが、常に、その人がしたいことをする自由を広げることには必ずしもならない。 「この文脈で重要な多様性はなにか」が大切。そうでないと、人間の多様性のために大きな差を生み出すことになる。ハッとする。 Posted by ブクログ 不平等の再検討 潜在能力と自由 アマルティア・セン / 池本幸生 / 野上裕生 / 佐藤仁 福祉、貧困対策などを考える上で基本的な考え方となる人のうち、割と新しい部類に入る人。 数値化して捉えることが困難な貧困を、ケイパビリティとかいう、その人たちが望むものを得るためにアクセスすることのしやすさと定義した。 例えば所得が低くても、田舎で自給して芋食って満足している人は貧しくないし、所得があ...続きを読むる程度あっても都市部で子どもに塾によう行かせてやれんという人は貧しいだろうという話。 多様な生き方がある現代においては、貧困は簡単な一言で定義するのは困難だが、それをかなりまとめた功績は大きい。 Posted by ブクログ 不平等の経済学 アマルティア・セン / 鈴村興太郎 / 須賀晃一 本書はアマルティア・センによる不平等の考え方を数理的アプローチも交えて比較的厳密に論じた本である。経済学における不平等の考え方を記した上で、それを徐々に拡張して議論している。 ひとえに不平等と言ってもさまざまなベクトルでさまざまな形態があり得るために、不平等の何が問題かを捕らえるためには多角的な分析...続きを読むが必要となってくることを、本書を通じて改めて認識した。本書が執筆されてから20年近く経っており、当時から現状は少し変化した部分があるが(たとえば実験経済学や行動経済学の台頭によって効用関数が測定可能になってきたり、幸福という概念が出てきたり、ピケティが新たな視点を導入したり、など)、本書で書かれている内容は現在不平等を考える際にも大いに重要な観点となるため、本書の内容を把握しておくことは重要である。また、本書で政治哲学との交わりについて、当然ながらロールズについては言及されていたが、コミュニタリアニズムなど今日的な政治哲学には当然言及されていないため、政治哲学との関係性については個人的に興味深いものとなった。 Posted by ブクログ アマルティア・センのレビューをもっと見る