ロシアの文学評論家であるミハイル・バフチンの生涯を追いながら、
彼の主要な概念・用語・理論枠組みなどを解説していく書籍。
新書というメディアでバフチンの書籍が出版されるとは思っていなかったので、とても驚いた。
バフチンは文学評論家ではあるが、おそらく、広くコミュニケーションについての考察を残した人
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現在でも、質的(定性的)な視点から研究を行おうとしている、
心理学・社会学・言語学等の諸学問の人々の論考において、
ときどきバフチンの引用が散見される。
おそらく、単なる相対主義でもなく、融合と言うほどの一体化でもなく、
それぞれの「声」がそれぞれのポジションを保ったまま、
それでいて何らかの全体性が示されうる…という(まことに抽象的な!)有り様を説明するときの、
極めて重要な示唆を与えてくれているのだろうと思われる。
正直に言えば、バフチンの主要概念をうまく把握できたわけではない。
しかし、
「こういう概念で、この現象を読み解いたら、理解できるかも!」
という視点で捉え、記憶に入れておくと、いずれ役に立つ気がする。
一般書とは言えないが、縁のありそうな人は目は通して損はないと思われる。