フランケンシュタインといえばあの釘のささった怪物。
ではなかった・・・
生物学を究めた鬼才フランケンシュタインと、彼の創造した生物の物語。
人間であるフランケンシュタインの自己中心的な行動と、その手が作り出したものの極度な欲求のやりとりは、手の施し用のない魔のサイクル。
どちらの主張も、それぞれ立
...続きを読む場で考えれば間違っていないのに、お互いにとって都合が悪いという、どうしようもなさ。
読んでいると気付くのは、これは今の社会そのものなのかな、ということです。
自分たちが手をつけたことに関して、なにか不具合を起こせばそれをフォローするために他の処置を施して、しかしそれによって他のものが犠牲になっていく・・・
でも結局のところ、知能と感情を以って繁栄し、世界を征服した私たち人間は、この一分一秒でも自分たちが幸せに生きられる方法を選択していきます。
そんなスケールでなく、もっと身近な自分の行動を考えてみても、同じことが言えるのだと思います。
とても絶望的なことだけれど、その事実は認識しておくべきものです。
この物語を読んでいて感じるゾクゾク感は、本能的にフランケンシュタインにも化け物にも共感し、自分と重ねあわせるからなのかもしれません。
物語としてスリルを味わいながら、現実の事象と真面目に向き合わされている、そんな気がします。
いい本だと思います。