DXを切り口に日本企業の問題点を指摘した1冊。中盤までの指摘については、例えば今ブームになっている「脱炭素」に置き換えてもそのまま当てはまることも多いように思った。(後半のSIerに対する指摘等はDX分野に特化したものだったが)
「そもそも変革すべき仕組みがない」、「勝手にやっている現場の集合体な
...続きを読むので誰も自社の仕組みの全貌を把握していない」、「イノベーションの本質がわからない」
→日々働く上で漠然と感じていたもやもやが言語化され批判されていたのでスッキリ&共感した。
経営者に読んでもらい、自らの言動を悔い改めてもらいたい一冊。ただし、一従業員の立場からいくら「そうだそうだ」と思ったところでどうしようもない、というか従業員目線の解決策は示されていない。大企業と共に心中するか転職するか、ということなのか?事業者ではなくコラムニスト、批評家の立場で書いておられるので「そんなもん、期待しすぎ」といったところか。
以下、本著を読んだ自分のtake away。(作者が書いたままの表現というわけではない。)
・DXの核は変革であるはずが、変革という魂が抜かれ、デジタル化に成り下がっている。デジタルごっこ。「DX」の「活用」や「導入」といったおかしなフレーズが跋扈している。
・プロジェクトが、明確なKPIを達成できなければ失敗で。だが実際は、プロジェクトが炎上して想定外のオーバーランをしたとしても、とりあえずシステム刷新を完遂できたなら失敗と誰も言わない。誰も責めない。結果、レガシーシステムを今後10〜20年使い続けるというコストオーバーラン以上の損失が残る。
・事業部門は勝手にやっている部隊の集合体で、その事業部門の集合体が日本企業。結果、「我が社の強みは現場力」などとほざく経営者が現れる。事業部門連邦制。取締役でも他の担当役員のシマには手を出せない。
・ジェフ・ベゾス「Good intention doesn't, work, only mechanism works」=「善意は役に立たない」。日本企業は逆。従業員の善意に頼る。おもてなしの精神を発揮して長時間労働で過剰サービスを提供する。職場のブラック化や不正に繋がることもある。(最近のダイハツの不正等もこういったところに真因が見いだせるのだろうと思った。)
・企業のIT部門やSIerにとっては、経営者はITオンチのほうがよい、という不都合な真実。なぜなら経営者がITに詳しくなると、御用聞きの人月商売であるSIerやそこに仕事を丸投げしている企業のIT部門が存続の危機に立たされるから。
・仕組みづくりには、アーキテクト=仕組みをつくる人、が欠かせない。単なるコーダーはプログラマーではない。
・中途採用したIT人材を終身雇用しようとする愚。「優秀なDX人材が採用できない」等と嘆く企業の安直な考え。DX人材に何をさせたいのか明確ではない。優秀なDX人材さえ雇えば彼らが何をすべきか考えてくれると思っている。