「知って、じゃああなたは何をする?」と、一貫して語りかけている良作。
やさしい語りかけにやさしい色合いの絵が調和していて、残酷なリアルなのに、きっと小さな子どもにでも最後まで読ませてくれる。
『おかえり、またあえたね ストリートチルドレン・トトのものがたり』は、とてもおそろしい本だった。
帯に偽
...続きを読むりはない。
「絶対貧困」という、途方もなく、世界中の誰もまだ解決できていない残酷な現実に対してリアルで、
けれど希望を残してくれた作品だった。
「知って、じゃああなたは何をする?」と、一貫して語りかけている良作だ。
「絶対貧困」の世界に暮らす、トトというひとりのストリートチルドレンを主人公にした物語だけれど
「絶対貧困」の周りには、お金ももちろん、お金だけではない様々な困難やトピックがあって、
そのひとつひとつを、丁寧に書いている。
それなのに、この本は優しい。
語り口も当然のこと、紙質やサイズに至るまでを丁寧に考えて作られた作品であるから、というのもあるだろうけれど、
この本なら、安心して子どもに届けることができる。
私がそう考えた最大のポイントは「ストリートチルドレンたちをバカにしていない」ということだ。
バカにしていない、という表現を「可哀想な子ども、という枠にはめ込んでいない」という表現に変えた方が、もしかしたら適切かもしれない。
何らかの手助けを必要としている子どもを、無力だったり可哀想だったりと言った枠にはめるのが、私は嫌いだ。
彼・彼女らには力があって、それを全力で使って生きている子が、たくさんいる。それを「可哀想」で「無力」とくくってしまうなんて、ひどく彼・彼女らをバカにした話だと思うからだ。
気になったことをあげるとすれば「恵まれた日本」との比較が多かったことだ。
日本にも「家出少年・少女」という言葉で囲まれてしまった、
ストリートでなければ暮らせなくなってしまった子どもたちは確実にいて、
トトと同じような困難も抱えていて、
けれどその姿は、新聞やワイドショーではなかなか出て来ない。
「遠い海外のこと」として海外の子どもに無関心でいることと同じくらいに、
もしくはそれ以上に日本人は、日本のストリートで暮らす子どもたちに無関心だと思う。
それをヘタしたら助長してしまうような「海外と日本との比較」があふれていて、それが残念。
また、もし「少女」が主人公になっていたとしたら、トト以上の困難が待っていたことは想像に固くない。
女の身体を持ってストリートチルドレンとして生きていくことは、男の子以上に困難だ。
この本に出てくるストリートチルドレンの少女リンリンの扱われ方にも、気になるポイントがいくつかある。
逆説的だけれど、女でも安心してストリートチルドレンをできる社会が、日本にも世界にもあればいいのに、という考えは、やはり変わらない。
いずれにしても、誰かにオススメできる良書であることには間違いはない。