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Posted by ブクログ
ちょっした衝撃を受けました。ひらがな文章は読みづらいですが、我慢して読み進めて欲しいです。哲学のようなSF!主人公の名前を明かさない意図を想像したい。いや、理由を知りたい。
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哲学書やん
まず最初に来たのがこれ
まぁ、私前々から繰り返し言ってますけど、SFって結局哲学なんですよ(自分自身が初耳)
なのでまず「哲学」って何よ?ってところから始める
「哲学」ってのはね、要するに「人が幸せに生きるためにはどうするか」を考える学問なんです
つまりこの本を読んで、これは「人が幸せに生きるためにはどうするか」を書いた物語だと感じた
ということになるわけ
でね、何を「幸せ」とするかって結局人によって違うわけじゃん?
なのでこの本を面白く感じるかどうかってのも人によって違うわけ
そしてものすごい当たり前のことを書いている自己認識はある
かろうじてある
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近未来もしかしたら人間は人工知能と融合し、物事を全て合理的に考えられるようになり、不幸だと感じることはなくなるほど幸せな人生を永遠に送れるようになるのかもしれない。そこには死もなく、人との別れもなく、現在を生きている私たちから見ればつまらない人生に思えてしまうと思うが、融合した人から見ればそんなことは取るに足らないだろう。むしろ、老いも死もある私たちが、なぜ変わろうとしないのか理解できないと言うだろう。
この物語の主人公は半分機械、半分人間のような存在である。永遠に25歳の身体を持ち、家族の死を経験しても涙ひとつこぼさない彼女を私は好ましく思う。
彼女の言葉はどこか諦めた感じがあるが、優しい。最終的にその優しさは、彼女が他人に自分を愛させるためであると彼女自身、自覚するのだが、それは人間誰しもが持つ感情であり、半分機械でありながらそういう感情を持っているところが好もしいのだ。彼女は自分が恋人の人生を「奪ってしまった」ことを忘却することも拒んだ。「幸せになる」=「マイナスの感情を忘れ去ること」と私は今まで思い込んでいたが、決してそうではないことをこの物語は教えてくれた。
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賛否が分かれる話題作のようで、気になって読んでみた。奇を衒った話題になりたいだけの本の可能性もあるな、と斜に構えて読み始めた。
すると、時々語られる主人公の素の考えの部分が、あまりに自分と同じでびっくりした。進化して才能を得て若返った自分がこれを書いているんじゃないかと思うほどに…
そして、だんだん引き込まれ、106ページからが素晴らしかった。最後の方は、もう融合手術を受けた設定がどこか行ってしまったのではと思うほど人間味があった。
1章は漢字がたまに混ざる程度のほぼひらがなだった文が、2章では読みやすい書き方へ、3章は全部ひらがな。この移り変わりの意味や、そこから読み取れる主人公の移り変わりを考えてみるのも読後の楽しい作業だった。
○融合手術を受けて、いろんなものがわたしから消えていったのに、他人からちゃんと愛されてみたかったっていうのは、どうして消えてくれなかったんでしょうか、…
○人間から人間へ、罹って罹らせて繰り返してしまう何か、自分の力だけではどうしようもない何かが、生まれて生きるの中にあるんでしょうか、わたしにはどうにもできなかったんでしょうか…
この心の叫びのような二つの文章がとても心に残った。
主人公がこれからしたいことまで自分と同じで、作者に会ってみたくなった。
子供が大好きなプロ棋士の永瀬拓矢さんの話がたくさん出てきたのも嬉しく、より親しみを感じた。
私にとっては心が通じ合える友達に出会ったような、特別な一冊になりました。
Posted by ブクログ
最初から話の中に引き込まれ、とても読みやすかったです。ひらがなの多い文体は、最初読みづらさを感じたけれど、すぐに慣れ、その意図を知るとそれを表現する上で有効で、私は好きです。
ディープな内容だと思うけど、淡々とした語り口だからかスルスルと読め、引き込まれました。
最後の決断はとても人間的だと思います。
とても切なく、感情が込み上げてくるものがありました。暖かい光が差し込む様な、そんな結末だと思いました。
普段SFはほとんど読みませんが、
好きな本です!
Posted by ブクログ
ひらがなだらけの子供の作文のような文体も、ゆう合手術をうけた主人公の、感情の少ない冷徹な心をうまく表現してる。
名前も明かされない、主人公が受けた虐待の悲しみ。しかし他人を語るかのように、無常な語り口でたんたんと綴られる家族史。
自殺措置(安楽死)ができる未来の世界、本当にいつかこんな未来がきてしまいそうな気もする。
すみません、よくわかりませんでした
って、つい言っちゃうの、笑えないよ…。
トムラさんからの、記憶を消去したり調整してはどうかという提案も断る主人公。何もかも忘れて自分だけが幸せになるということに、違和感を感じることができた。
最後の主人公の行動は、まだ人間らしさが残ってると感じる選択で、でもものすごく読後は重たい気持ちになる。
記憶を消去したり調整すること、
記憶が死ぬこと、
嘘だらけの世界で自分だけ幸せに暮らす事、
そんな状況が、個人的に認知症の母と重なってしまい、これ、認知症の話??って気がしてくる。
自分は生きてるってことを実感したくなる。
とても素晴らしい作品でした。
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タイトルのように夜明け前の静かな時間に読んだら、ひとりぼっちで生きてきた(そして死んでいく)主人公の寂しさにちょっとシンクロできるような気がしました。家族、恋人、みんな自分を置いて先立っていく。そして他の人類が宇宙へ旅立つのを見送り、自分は地球に残る。これ以上に寂しいことってあるだろうか。でも終盤の主人公の感情は、夜明け前のような希望に満ちているんですよね。
主人公の幼さが少し気になってしまった。適合手術を受けた実年齢(?)は25歳だけど、文体や思考回路はそれよりずっと幼く感じられる。幼少期に父親から被害を受けた精神的ストレスから、心が成長を止めてしまったということなのか?
主人公が手術を受けた理由も不思議で仕方なかった。父親が半ば強制的に望んだ、コントロールされていたとも思えるが、「死にたい」という感情と「不老不死の体になる」って結果は180度違うものじゃない? それとも不老不死の体になったら自分の感情が全部消えて無になれると思ってたのかな。実際はそうじゃなかったみたいだけど。
一人称小説だからこそ、わからないことがたくさんあって、だから誰かと感想を語りたくなる。そんな小説でした。若い作者の、これからの作品にも期待してます。
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ひらがなが多くて読みにくいところも多かったけれど、それに意味があるから読み切った。
読書会したら面白そうな小説だったな。
読んで良かった小説だ。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ好みの作風のSFでした。
一人語りで進んでいき、何故文章がひらがなばかりなのか、一体主人公に何があってどんな世界、どんな家族の中で生きてきたのかがじわじわとわかってきます。
わかってくると、なかなかしんどい内容がてんこもりではありますが……だいぶ酷い…。
「アルジャーノンに花束を」を少し思い出しました。
こういった未来のSFを多々読んでいるといつか本当にそうなりそうだと怖くなってきますね…。
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あらすじを読んで、絶対に読みたいと思っていたのが、実際に読むと本当にドストライクなSFだった。
出てくる曲や動画が実在するもので、書き手の言葉なども現代っ子っぽい雰囲気があり、気が抜けるのにシリアスだった。私は「わたし」とは全く違う人生を歩んでいるのだけど、「わたし」の言ってることは、すごくよくわかる気がした。
過去の自分を救えるのは、結局、いつかの自分なのだ。
Posted by ブクログ
約120ページの中編でお値段が1,430円なのでちょっと割高かなと思ったが、この作品が第11回ハヤカワSFコンテストの特別賞ということで、作者への御祝儀として購入した。SFマガジンにも既に掲載されていたこともあり本当に購入を迷った迷った。
さて、作品の方はと言うと、最初から大量のひらがなで面喰う。ひらがなのみの文章は非常に読みにくい。文章の切れ目が判らず、なかなか読むスピードが上がらない。継続して読むのにかなりストレスが溜まる。その打開策としていろいろ試みたが、小さい声で音読しながら、つまり朗読しながら読むと少しはスピードが上がり、理解力がようやく高まった。本当に難儀する作品だ。最初から2/3は殆どひらがなで進むが、途中、未来の能代市の話になった時に、突如として漢字が通常量の文章になってホッとした。やはり漢字って偉大だな。そして最後の10ページでひらがなに戻る。朗読朗読、10ページで良かった。しかし、この様にひらがなと漢字を使い分ける理由は何かと考えた。感情の多寡、昂ぶりの表現なのかもしれない。最初、ひらがな中心の文章で奇をてらう、ひらがな部分は要らない、単なる水増しではないか、といろいろ考えたが、全部読み終えてからひらがな記載の意味、効果が判った様な気がする。ひらがなに慣れ始めた頃に、急に漢字中心になり読むスピードが急上昇し、感情の爆発で一気にクライマックスとなり最後はひらがなで静かに終わる。私は作者の作戦にまんまと嵌ってしまったようだ。途中で読むことを放棄しなくて本当に良かった。良い本に出合えた。流石に賞を貰うだけのことはある。でもこの手法は一回きりだからね。
この作品は第11回ハヤカワSFコンテストの特別賞する一方で、矢野アロウの作品が大賞となった。SFマガジンでは審査の際にかなり揉めたと言う。審査員のうち、東のみが強力に推したものの、菅と塩澤の抵抗にあったようだ。ということは、大賞はきっと私をもっと感動させてくれる作品なんだろうね。後でしっかり読まさせて貰いまっせーーー!
Posted by ブクログ
「息さえ忘れて」という言葉があるけれど、読書を続けていると稀にそうとしか表現できない状態になることがある。
心地良い…というより深海を潜ると言った方が適切で、けれど息苦しさとはまた違う独特の感覚。この本を読んでいる時は、ずっとそんな状態だった。
主人公たちの倫理を問うことは一概に出来なくて、まぁ言ってしまえば時代が違うんだけど、ここはSFの近未来設定を上手く使ったなーと思った。
人類史の黎明と、主人公の個人史の夜明け前。もしかしたら、一瞬後に何もかも終わってしまうかもしれないけれど、明日を目指すことは決して間違っていないんだな。
でも子供の頃から変わらず若いお姉さんがずっと優しかったら惚れるよね!分かる分かる!時代はいつだって姉キャラが正義ってワケ。
つか間宮氏はデビュー作がコレってマジです?尖ってるなー…。
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この先起こるかもしれない未来。長寿命化が進み、時を止めるゆうごう手術というものができた。死んだ愛する妻に似たーーーちゃんがかわいくて手放したくなくて、歪んだ愛情、いや虐待で父親はーーーちゃんに手術を受けさせる。きょうだいたちは気味悪がり、またーーーちゃんも思考が機械化してくる。
またさらに未来。編集されたゲノムで体外受精後、人工子宮で育てられた新人類と対したーーーちゃんが、すごく人間くさく思えてほっとした反面、究極の合理化。論理的すぎる考え。トムラさんが怖くなった。
ーーーちゃんのきょうだいたち。シンちゃん。ーーーちゃん。新人類の行方。どこにも想いを馳せられる読後感。また読みたい!
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著者が本作で第11 回ハヤカワSF コンテスト特別賞を受賞し、作家デビューされたこの作品は話題となっていて、週刊売上ベストテンにも入っていて、気になっていました。
まずはその装丁、表紙に驚かされます。今までにカバーに本文が印刷されている作品を私は知りません。
そして次に驚くのが主人公が
マシンの手だから疲れないけれど、漢字は画数が多くて面倒、面倒臭いものはひらがなで書いてしまおうと思う(画数以外原文ひらがな)本文p5抜粋
という理由で、家族史のほとんどをひらがなで書いているため、普段漢字、カタカナ、ひらがなで文章を理解してきたものにとって、これはキツかったです。
日本語が、漢字、カタカナ、ひらがなで書かれているありがたみをこんなに感じると思いませんでした。
主人公が書いている時代は今から10年後の世界ですが、家族史なので、彼女の家族の有り様は現代社会の問題点を鋭く指摘する内容になっていました。
主人公の出産で、妻を亡くした寂しさを、娘を偏愛することで生きる父親。
3Dプリンターか何かで人工身体を作って行う融合手術は、2021年から老化に対する治療法として認められた自由診療ではあるものの、父親による過度な希望で手術を受け、永遠の命を授かってしまう主人公。
永遠の命ではありますが、体はもはやロボットに近く、兄姉はもとより手術を望んだ父でさえ距離を置く存在となってしまい、主人公が最後に看取るのは、唯一彼女を愛した甥のみという寂しい人生です。
私も年齢を重ね、老いを心身ともに感じることが多いですが、若さを求める気持ちは無くなりました。外見だけ若さを保っても無意味に思えます。
2123年地球が気候変動、海面上昇の影響で近い将来人間が住めなく星になるとわかり、住める確率50%の地球から約5光年離れた惑星に向かって人類が12月25日に出発することが決まり、主人公も同乗を勧められますが、地球に残ると決めます。
人生でたった一つでいいから、私は間違ってなかったって思うことがしたいんです。(中略)自分を許して、忘れることって、これから生きていくには、とても大切なことだと思います。そうじゃないと、人は生きていけないから。p 114(原文は全てひらがな)本文p114抜粋
最後は人生観に至る主人公。これからの地球の未来、まだまだ深く読めそうな作品でした。
Posted by ブクログ
ひらがなが多く、最初はとても読みにくい。
しかし、慣れてきてその世界観を受け入れ始めると、だんだん主人公の語る物語に没入してゆく。
純文学であり、SFであり、恋愛小説でもあるこの作品、読後におとずれる、このじわじわくる何かは、読んでみないと体験できないと思う。
Posted by ブクログ
するりと読めるけど内容は重めでどんな結末になるか分からなくて、でも惹き込まれてあっという間に読み終えた。
物語を消化するのに時間がかかりどんな感想を書いたらいいのか悩み、上手く言葉に出来ないがとても凄い作品を読んだ。
わたしの最後の思いに晴れやかな気持ちになり、なんだか救われた。
Posted by ブクログ
82点
読後感がふわふわしていた。読み終わって消化するのに時間がかかった。こう、言葉にできないのって良い読書体験だったことを実感する。
コンセプトが面白く楽しめた本。ひらがなが多用されていて多少読みづらいが、意図のあるものなので良い。
ネタバレになるので詳しく書かないが、伝播するものと表現されていて、納得感があった。
主人公の心情がストレートに伝わってくる。たしかに、SFというより純文学のような。
Posted by ブクログ
或る女性の人生。
融合手術なるものでロボット化し、若い姿のまま100年を生きる。両親の死を看取り、兄弟の死を看取り、甥を恋人とする。
火の鳥、復活編、望郷編を併せたような内容であるが、時は正に今。もう未来が未来でない時代に来てしまった。AIの進化、エアカー、アバター、メタバース、ロビタ、不老不死。進化に人の感情は置いていかれる。冒頭からアルジャーノン同様、ひらがなだらけの文章に四苦八苦しながらも引き込まれる。途中、都度道に迷いながら、また先に進む。不思議な行ったり来たりを繰り返し終盤へ。読後の余韻が半端なくじわる。感情が揺さぶられる。これはあれか?
旅する練習を読み終えた後の感覚に似ている。途中、辛かったのは確かだが、素晴らしい作品である。
Posted by ブクログ
YouTubeのshortでオススメされてたので購入しました。SFかつページ数も130程と短い小説でありながら、人間味を味わう事も出来、倫理観について考える描写もあり読み応えがありました。
Posted by ブクログ
平仮名にやっと慣れてきたと思ったら、漢字混じりになり、また終盤に平仮名のみの文章に。
この使い分ける理由が何なのか、よく分からなかった。
主人公の名前が空白なのも、意図がよく分からなかった。
100年の人生にしては内容が薄く、考え方も稚拙で共感できない。
『アルジャーノンに花束を』も同様なので、私の読解力不足か、
SFが苦手なのかもしれない。
辛口で申し訳ない。
Posted by ブクログ
幼さが文章で表現されていた。
文体に最初は慣れずモヤモヤしたけどだんだん慣れた。
話題になっていたから期待して読んだけど、まあ面白かった〜程度だった。
老いること、
オチのない話をすること、
だめだとわかっていてもやっちゃうこと、
愛されたい気持ち、
人を憎む気持ち、
後悔の気持ち、
今までの過去 全部合わせて今の自分。
人間の醍醐味。
Posted by ブクログ
ほとんどがひらがな多めの文章でできていて、すこし読みにくい。
でも慣れると時々「ん?」って読み返す程度。
2123年。九州の山奥にいる「わたし」が家族について語る物語。
ただし、
「わたし」はもはや人ではない。かつては人だったけども。
父親によって、融合手術をうけ永遠の命、老化しない体になってしまった。
この体になる前は、死にたいと思っていたのに。
そして、その父は冷たくなった体の私に失望して、触られるのも嫌がるように。
私が産まれた時に母がなくなったので、兄も2人の姉も私の事を嫌っている。
そして、彼らも死んでしまう。
融合手術をうけて101年、「家族史」を綴るんだけど、あえて手書きをするため、漢字がめんどくさいと、ほとんどひらがな。でも時々、え?これは漢字なの?ってのが漢字でかかれている。
「わたし」は25歳当時の見た目から変わらない。
脳は人のそれのままなのだけど、どうみても少し幼稚な精神かな。
その歴史のなか、恋人もいた。シンちゃん。
でも、シンちゃんは甥っ子。おむつを替えたりもしたような子。
彼がいなくなって、ようやく筆をとったらしい。
口語でかたられるので柔らかだけど、内容が酷かったりして、
そこがなんとなくさらっと読んでも、不気味さがあとをひく。
永遠の命の技術がある一方、
自殺幇助の法律があったりする。
もう、カオスな世界。
最後、シンちゃんにかなりの罪悪感をもっているんだけど
それは違う!っていってやりたい。
他の道があったのかもしれない。
でも、シンちゃんはあれで幸せだったんだから、これはこれで正解なんだよ。
今から100年後の話なんだけど(でも融合手術をするのは今の時期)、「日本ってこんな世界になるの?!」ってちょっとショックだわ。
口語文で、ソフトSFで、最後の一人・・・ってのは
新井素子さんを思い出した。
あれはなんの話だったかなぁ?「チグリスとユーフラテス」かな?
確か、どっかに本が残っていたはずだからもう一回読んでみようかな
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星野源ANNでの言及を機に手に取った一冊。
すごく独特の文体。新井素子「チグリスとユーフラテス」を彷彿とする。名久井直子さんの装丁がとても綺麗。
「人生でたった一つでいいから、『わたしは間違ってなかった』と思うことがしたい」という願いの、あまりに清らかなこと! わたしをわたしたらしめるもの、わたしをかたちづくるもの、たとえば記憶、そこには喜びも悲しみも痛みも息づいて、ではそれを手放せば「幸福」になれるのかといえば、おそらくそうではない。
だってその全てを、包摂するものが、わたしなのだから。その先には、夜明けが待つ。老いや病、死からの解放は、決して救いではない。
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ひらがなが多く、はなし言葉でつづられるわたしの家族史
やわらかい文体とはうらはらなざんこくなわたしの歴史
たべるのもおっくうな死にたがり
いきていたくないのに、老いないからだになってしまう
しにたいのにしねない
あいされなかったから、あいされたい…
現代と並行して存在する近未来の世界の話。
安楽死や不老不死の実現、体内に埋め込まれたチップによる健康管理、AIと人間の融合、そして人類の存亡をかけて移住するために宇宙へ。
この作品に描かれる未来人の無機質な感じが空恐ろしかった。
彼女が生きていたくない理由が分かると、黒い感情が湧いて心が重く沈んだが、なんだか読後感は悪くなかった。
Posted by ブクログ
SFは久しぶりに読んだ
このユートピアなのかディストピアなのかわからない、ただ技術が進化して、今とは異なる倫理観を持った人々が生活していて、それが当たり前で、そのちょっと無機質で無慈悲な感じが、怖い気がした。
1人称で彼女の家族師として描かれていて、ひらがなが多くて変わった語り口調だったので、100%楽しめたかはわからないけど、たまにはこういうのを読むのもいい。
Posted by ブクログ
父親から虐待を受けていた女性がある時不老不死の手術を受けた。それから彼女は家族の死を見舞い孤独ながら生きていく。彼女が書いた家族史には家族との思い出が詳細に書き留められている。テクノロジーの発達と共に人間の肉体は合理化されていき種の存続と個人の幸せが求められていく。安楽死が合法化された世の中で生きるとはどう意味を持つのか、価値観も多様化し幸せのあり方も人それぞれでどんな未来を想像するのか。彼女の終盤の独白は生に対しての希望をひしひしと感じた。
Posted by ブクログ
ひらがなが多く少し読みづらかったが主人公の幼稚さが文章から滲み出ていることで感情移入をせずに一歩引いた目で物語を堪能できた気がする。
「自分を許さないことで許す」という償い方が印象的。
人生単位で相手の心を奪ってしまった罪は重いが、一定期間だけでも同じようなことをしたりされたりした人は世の中には山ほどいるのではないかと思う。
恋愛においては愛するよりも愛される方が幸せになれるなんて言うけれど結局は自分も相手を愛せないと幸せになれない。
でも主人公の残酷な嘘を見破れなかったシンちゃんは最期まで幸せだったのではないかな。
最後に苦しむのは嘘をつき続けた人間なんだと気付かされる。
Posted by ブクログ
本を開いた瞬間の違和感がすごい〜!ゆう合しゅじゅつによって老いない体となった"わたし"が見つめた家族の話。現代社会の問題点も描かれていて、どこか現実味があり、不気味感が増す。これは私たちの未来かもしれない...やだな(呟)
Posted by ブクログ
ほとんどひらがなの文章が「アルジャーノンに花束を」を彷彿させる。第十一回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。
父親から肉体的、精神的虐待を受けてきた女性が脳を機械の体に移植し、ほぼ不老不死の体になる。そして自分が受けてきた虐待を、それと気づかずに甥に対してしてしまう。その後、地球は人間の住める環境でなくなる。彼女は他星への移住ではなく、地球に残ることにする。本作は彼女「家族史」として書かれたという形をとっている。
ストーリー性があり、小説としても完成度も高いと思うのだが、SFとしての「面白み」ない。SFコンテストに応募する必然もない。ここが大賞受賞作の「ホライズン・ゲート 事象の狩人」と大きく違うところ。☆の数もそこを考慮した評価です。
なお読んだのは単行本ではなく、SFマガジンに掲載されたものです。