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ジョン・レノンが死んだ日、ラジオからはビートルズの曲がずっと流れていた……。その日、エンジェルは、かつての友人たちを悲しみとともに回想する。死海砂漠で遭難して死んだ義父ティモシー・アーチャー主教。精神の安定を失い自殺した義父の愛人キルスティン。父への劣等感とキルスティンへの欲望に耐え切れず自ら死を選んだ夫のジェフ。絶望の70年代に決別を告げる〈ヴァリス〉三部作完結篇にして鬼才の遺作・新訳版。
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Posted by ブクログ
「ティモシー・アーチャーの転生」 ディックのヴァリス3部作の最後。そしてディックの遺作とされている作品。 個人的にはすばらしい作品だと思う。模造品について書いてきたディックが、その一番深いところにたどりついた。 生きるための軸となっていたもの、たとえば信仰が揺さぶられたとき、人はどうなるのだろ...続きを読むう。という問い。ヴァリス同様、大量の情報におぼれる人々。今回は情報が大量だからではなく、大量の情報の中から、アイデンティティを崩壊させる「真実」を発見してしまう。自分の存在が否定された人間の物語。 ディックはここまで辿りついたか、という感動を覚えた。純文学の作家を目指していて、でも金のためにSFを書かざるをえなかったディックが、最後は純文学を書いていた。しかもみんなが知っている彼のSF小説を深化させた形で。これがすばらしい。 この偽物だらけの世界で、ディックは本物の作家だったなあ。
山形浩生さんの訳で読みました。とてもおもしろかった。ジョンレノンの亡くなったニュースはそろばん塾で聞いたなーとか。そんときそもそもビートルズってまだ生きてるんだくらいに思ってたこととか。シャタックアベニューの中華料理屋とか言われるともうなんか懐かしくて泣けるし。
〈ヴァリス〉三部作の第三弾。 とはいえ、前二作とのストーリー上のつながりはなく、共通するのはそのテーマ性。これまでに引きずってきた神学談義や神秘体験などのオカルト妄想に決着をつけた作品である。 小賢しいが常識的な感覚を持ったインテリ女性の一人称による語りが、「そっち系の話を信じる人」の実態を暴き出す...続きを読む。 形而上学的な論議など役に立たない、地に足をつけて現実を直視せよ、即物的、具体的な行動に幸せはある、というような話になってしまうが、ある意味で過去作を否定することで前に進もうとしたディック最晩年の決意が汲み取れる。 読み方によってはどっちにも解釈できるのでは?と思える書き方がされているのがタイトル。アレが実際どうなのかは、読者にゆだねられているのかもしれないが、三部作の最後にして、確かな前向きさを感じる結末なのが救いだ。
自由書房で購入 遠い未来・放射能に汚染された2020年の異世界を描く作家なんだが、ホンダシビック・Jレノン殺害を体験し時代を共有していたと気付かされる
本作はSFの巨匠、フィリップ・K・ディックの遺作。SFでは映像化作品も多く、圧倒的な知名度を誇る著者であるが、本作はSF要素がない所謂「一般小説」となる。「ヴァリス」、「聖なる侵入」と合わせて「ヴァリス3部作」とも言われているが、SF的要素のある前2作とは形を異にしている。 そして前2作と本作とで...続きを読むは語られる視点に大きな違いがある。3作とも共通のテーマとして「神秘体験」があるが、前2作は体験した者の視点で描かれるのに対して、本作は体験した者を客観的に観察する立場から描かれる。 本作では、「神秘体験」をした者(ティム、キルスティン)は悉く悲惨な末路(死)を辿っており、そこから救うことができなかった主人公(エンジェル)は自身の行動・判断を嘆く。そして彼らの死後、新たに「神秘体験」の当事者となったキルスティンの息子であるビル(ティムが転生して自身に宿っていると言う)を、今度こそは救済すると決意して物語を終える。 前2作と違い、本作は神秘体験・宗教・信仰という名の迷宮に陥った者を、他者が救い出すという希望が描かれているのが特徴的である。 「ヴァリス3部作」はディック自身の神秘体験をきっかけに著されたというが、元々彼の作品には「現実と虚構の曖昧さ」や「自己疑念」をテーマにしたものが多く、著者自身の永遠のテーマでもあったのではないかと思う。「神秘体験(=超自然的なもの。現実と虚構を曖昧にするもの。)」で心惑わされた者へ救済の手を差し伸べるラストを描いた本作が遺作というのは、どこか考えさせられるものがある。
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ティモシー・アーチャーの転生〔新訳版〕
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