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世界の恒久的平和はいかにしてもたらされるべきか。カントは、常備軍の全廃・諸国家の民主化・国際連合の創設など具体的提起を行ない、さらに人類の最高善=永遠平和の実現が決して空論にとどまらぬ根拠を明らかにして、人間ひとりひとりに平和への努力を厳粛に義務づける。あらためて熟読されるべき平和論の古典。
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Posted by ブクログ
カントの晩年の代表作である「永遠平和のために」、やっと読むことができました。本書は訳注や解説を含めても150ページ程度なのであっさり読めるかと期待していましたが甘かったです。一行一行噛み砕きながら読み進めたものの、カント特有の婉曲的な表現なども多数散りばめられていて苦戦しました。そして本論よりも付録...続きを読むを読み解くことにさらに苦戦し、これは全体の3割くらいしか理解できていないのでは?と怖れを抱いていましたが、最後の訳者による解説によって理解度が一気に8割くらいに上がった気がします。おかげさまで腹落ちしてきた感じがするのですが、少し時間を空けてまた最初から一読しようと思っています。単なる理想像としての永遠平和ではなく、リアリズムの視点からも永遠平和がなしうることを説いた本として、とても興味深く読みました。 以下、備忘録としてカントの述べている永遠平和のための条項です。 <国家間の永遠平和のための予備条項> 第1条項:将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない。 第2条項:独立しているいかなる国家(小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できることがあってはならない。 第3条項:常備軍は、時とともに全廃されなければならない。 第4条項:国家の対外紛争にかんしては、いかなる国債も発行されてはならない。 第5条項:いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力を持って干渉してはならない。 第6条項:いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。 <国家間の永遠平和のための確定条項> 第1確定条項:各国家における市民的体制は、共和的でなければならない。 第2確定条項:国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである。 第3確定条項:世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない。
・カントの永遠平和論。国家間の連合による世界平和構想。 ・カントは、社交的だったという人物評があるが、カントの平和論もさもありなんという感を覚えた。 ・自分は、人と仲良くするのが苦手なので、カントの議論のようにうまくいくのかと思った。
カントの実践哲学を現実の政治に当てはめて考えるとどのようなことを論じうるかを、カント自身が示した名著。 カント自身が本書のタイトルを「風刺的」と呼んでいることに象徴されるように、永遠平和など実現不可能な絵空事と見なされがちである。 カントはただ理想を語っているのではなく、人間の本性を「利己的」とし...続きを読む、法的状態が構築される以前の自然状態を「戦争状態」とした上で、地に足の着いた議論を展開している。 人間が利己的で、各国家が言語と宗教によって互いに隔離されているということは一見戦争の種であるように思われるが、カントはむしろ、そのような現実があってこそ、平和は構築可能だとする。人間の利己性は社会契約による共和的国家の樹立を促し、言語と宗教による隔離は、国家の規模を大きくなりすぎないように役立ったと。目からウロコであった。 「付録」では、政治と道徳の対立、すなわち利益と正義の対立について語られており、「前者が後者に従属すべし」というカントのリベラルな立場が簡潔に表明される。 薄いけど中身の濃い、素晴らしい本だった。
第二章がかなり衝撃的。「自然状態は、むしろ戦争状態」「平和状態は、創設されなければならない」。おそらく「永遠平和」の理念、思想が、これらの言葉に凝縮されている。まるで第一次世界大戦と国際連盟創設を予言していたかのように。
永遠平和のためには無味乾燥な法律だけでなく、道徳的な哲学者の意見も政治に取り入れられるべきというカントの願いが込められている内容。哲学や道徳に対する重要性を改めて認識、確認することができました。
1795年に公刊されたカントの小著。おそらくカントの政治論では最もよく知られている著作であり、国家連合体制の提案など今日の国際関係構想の源泉ともなる提案が多々含まれている。バーゼル講和条約を諷刺するかのように、予備条項、確定条項、秘密条項、補説という構成をとる。各々の小論のなかで、これまでカントが展...続きを読む開してきた道徳論に基づく義務としての平和達成を、目的論に基づく平和達成の予言によって客観的実在性を補完するという全体構成をとっている。一国での共和制実現、国家間での国際法の遵守、交際権としての世界市民法など、18世紀末に書かれたとはいえいまだに政治的に課題とされうるような提案を余すところ無く展開している。このカントの構想をいかにして達成するかということに頭を悩ませている間は、政治が道徳に屈服せねばならないことを否定することはできないだろう。
カントの平和論が「ひとりひとりの心を変えれば世界は変わる」にとどまらない単なる理想論、単なる理念的なものではないことが分かる。 「一緒に生活する人間の間の平和状態は、なんら自然状態ではない。自然状態はむしろ戦争状態である。」 と現実を受け入れ認めつつ 「それゆえ、平和状態は創設されなければならない...続きを読む」 と、その現実を国家間において、具体的に様々な条項を提案することで永遠平和を実現しようとしているのである。
カントの政治哲学(?)、国際法のありかた、政治と道徳(倫理)のあり方などが書かれている。 難しいけど、完全にわからないわけではない。 現在にも十分通じる部分が多くあるように感じた。
イマヌエルカント 永遠平和のために 永遠平和のための9条項(予備条項6と確定条項3)を論じた本。一つの世界共和国を作るというより、それぞれの国家の独立を維持しながら、平和連合体制を作るイメージ ソンタグの「世界平和を信じる人間などいない」という諦めの論調より、カントの「世界平和のために9条項に着...続きを読む手せよ」というメッセージの方が 読む価値がある。 永遠平和は人間の利己的傾向から自然に導かれるとする第一補説を入れたあたりが、永遠平和が空想でなく実現可能であることを証明したいカントの哲学者としてのプライドを感じる 9条項の中で最もハードルが高そうなのは「常備軍の全廃〜自衛軍は認めるが、段階的に常備軍はなくせ」という条項。カントは「平和とは、一切の敵意が終わることであり、軍事力による均衡は 平和につながらない」と考えていることがわかる 6つの予備条項 1.平和条約は将来戦争の種を残さない 2.国家は 他の国家に取得されない 3.常備軍の全廃 4.戦時国債は発行しない 5.暴力により他の国家に干渉しない 6.戦争の最中においても卑劣な行為はしない 3つの確定条項 1.共和的な市民体制 2.諸国家の連合制度に基礎を置いた国際法 3.友好をもたらす世界市民法〜外国人が入っても敵意を持たれない 共和的体制 *自由と平等の権利が確保された国民が、共同の立法に従っている *代表制を採用し、国家の立法権と執行権が分離している *共和制の下では戦争をするには国民の賛同が必要〜戦争という割に合わない賭け事を国民は求めない
永遠平和のための6つ条件:(第1章)予備条項 殲滅戦に突入するのを防ぎ、永遠平和の展望を開くための条項 1. 将来戦争の種が保留された平和条約は平和条約とみなされない 2. 独立国家の相互不可侵性 3. 常備軍の撤廃 4. 戦争国債の禁止 5. 他国への不干渉 6. 国家間における信頼を損ないうる...続きを読む行為の禁止 3の常備軍の撤廃は最も有名な条文。常備軍の存在が先制攻撃の原因となり、かつ国家が人を殺したり、殺されたりするために人を雇うのは、人間性の権利に反する。後者はカントの定言命法からも帰結する条項。ただし現在のスイスの国民皆兵のような自衛措置は認められる。 予備条項を実現するための3つの条件:(第2章)確定条項 永遠平和を実現するための具体的な条件 1. 人間の法に完全に適合している唯一の体制は共和的体制 2. 国際法の理念は諸国家は分離を前提とし、連合体制を基礎とする 3. 世界市民権では普遍的な友好権が確立する
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