ドラママチ
これまでの話で一番自分の将来に近そうな感情で、実感を伴ってぐんぐん頭に入ってきた。主人公がバーに入って「若い子」を見て、「世界の中心が自分たちで、実際の姿と、思い浮かべる自画像とのギャップに気がつかない年齢。」と形容するシーンでがんときた。急に彼氏に冷めるとき、私でいえば、トルコアイスのお兄さんに弄ばれて鼻にアイスをつけた彼をかわいいではなく恥ずかしいと思ったとき、みたいな、そんな、育んできたドラマチックな愛が実はつまらないものだと気付いてしまう瞬間の恐ろしさには心当たりがあって、だからこそすごく怖くなった。自分が主人公でもなんでもなく世界のOne of themであることをリアルに実感してしまう時が怖いな。
そんな絶望に近い感情を感じさせておいて、後半大家の老婆が登場してから一気に光がさす。「デートは買い出しになり、ディナーは夕ごはんになり、王子さまは蛙になり、それがきっと私のドラマなんだろう。起承転結の、承をずっとリフレインするような、そんなドラマなんだろう。」この言葉が刺さった。承のリフレインを、歩いて5分くらいのところから始まる喫茶店巡りを、楽しめるような心を失ってしまっちゃダメだね。プロポーズはしてほしいけど。