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奈良・猿沢池の畔に鎮座する春日大社の末社。なぜか池に背を向け、普段はひっそりと門を鎖す。年に一度、連綿と続く祭の二日間以外は……。そこに祀られる入水した采女とは誰なのか。異端の民俗学者・小余綾俊輔が采女神社の謎を解き明かす時、壬申の乱から奈良朝に至る歴史の真実が塗り替えられる。長編歴史ミステリー。
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Posted by ブクログ
面白かった!前作の『源平の怨霊』はハードカバーでヴォリュームもあったが、今作は短いし、ソフトカバーでライトな感じで少し物足りなくはある。奈良猿沢池の畔にある采女神社の采女祭、采女は誰なのか。そして、壬申の乱の謎解き。大友皇子とは?!今回の小余綾説も非常に危険。小説的に、タタルシリーズと違って、この小...続きを読む余綾シリーズは現代人が死なないのが良い。ブレない高田節歴史ミステリ。春日神社の辺りもとてもファミリアーな土地で、フィールドワークにもよく出かけた地域なので、望郷の念にかられる。それに、近江はコロナ前に、目前まで行きながらスケジュールがどうにもならんで断念したところなので、ものすごく現地に足を運びたい。もちろんん奈良や地元和歌山にも。いつもながら高田本の謎解きはセンセーショナルで、しかもとてもナチュラルなところに着地するので、するっと丸呑みしたくなるねぇ。
前作に比べると題材的に地味な感じ。 QEDシリーズと違って現実世界のミステリはなく完全なる歴史ミステリのため、題材に興味がないと読みにくい。 次に春日大社に行った時には采女神社にもお参りしたい。
たぶん、この次の作品で話題になるのだろう、「世の中に絶えて桜のなかりせば」の句。どう謎解きされるのかが楽しみ。 本作は、図式的には納得できるのだが、どうもちょっとワクワク感は乏しい。前作の池禅尼の話の切れ味が鋭かったからな。
小説としては、2人が奈良をウロウロしていろいろ考えているだけ。びっくりする日本史の説が出てくるねえ。 ・天武は天智より年上で、皇室と関係ない下層の遊民。 ・天智は天武に暗殺された。 ・即位した大友皇子は天武に敗れて逃げる時に側近に殺された。だから石山寺の若宮に祀られている。 ・天智の同母妹・間人皇女...続きを読むが、中大兄皇子が即位しなかった7年間、天皇だった。 ・元興寺や興福寺のある平城京の外京は鬼や怨霊を祀る、朝廷と藤原家を護るための空間、防御システムだった。 ・自死とも暗殺されたとも言われる、天武と額田王との娘・十市皇女の養育係だったのがもともと和邇氏と名乗っていた十市県主(春日県)。和邇氏は海人族で安曇氏と関係が深かった。大怨霊の安曇磯良は若宮おん祭で鎮魂される春日大明神。 ・郡山の安積采女春姫は聖武天皇の皇子・安積皇子を産んだが、安積皇子が暗殺された後、猿沢の池に入水した。猿沢の池のほとりにある采女神社の采女祭は、この安積采女春姫を鎮魂するためのもの。
古代史はきちんと把握していないと人物や関係性が分からなくなる。采女も初めて目にする言葉で神社もある。天皇に下賜された女性を指しているが誰の事を祀っているのか??高貴な人でなければ祭りまでしないはず。との疑問からどんどん明かされていく。けど、内容が把握できていないのでうまく説明できない自分にイライラ。
日本書紀の大友皇子の母親が伊賀の豪族出身であると言う記述と大海人皇子が伊賀の豪族から援軍を得たと言う記述は確かになんだか矛盾してるような気がする。
膨大な資料からの深遠な歴史を掘り下げ、解釈もこれまでのとは目から鱗が落ちる展開で。尚かつ現代小説の筋立ても興味深く作ってゆく高田さんの『QEDシリーズ』はずっと読み続けてきました。 こちらのシリーズは未読でしたが、壬申の乱ネタということで。 「私の知ってる壬申の乱とはちがーう!」と声をあげそうになり...続きを読むました。 永井路子先生の『茜さす』が好きでこの小説から派生的にアレコレ他の壬申ネタも読んでたけれど采女を母とする皇子という存在、疑ってもみなかった。それだけにこの高田さんの采女の解釈が斬新でそれもアリなのかと妙に納得。しかも采女祭り……うん、身近で見聞きしてるのに疑ってもみなかったので。 日本史の解釈、『日本書紀』が勝者の記録だということ、改めて気付いたし、天武系の歴史をもう一度順を追って読み直したくなる。 とは言え、私は永井路子先生の本が好きなので『美貌の女帝』あたりはやはり正統だと信じている。 歴史って奥深い。 どれもこれも信じたくなる代わりに疑ってみなければならないという気にさせられる。
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采女の怨霊―小余綾俊輔の不在講義―
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高田崇史
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