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『幻海紀行』
終戦の年、タカオは一人、島の祖母の家に疎開した。その日、広島にピカが落ちて母が死んだことを聞かされたのはずっと後の事だった。身寄りのなくなったタカオはそのまま島の祖母の家にひきとられた。 「おばあちゃん、もうすぐお医者さんが来るからね」「タカオ、ばあちゃんは死んでもお前のことを見守っているよ。そしてお前を守ってあげるからな」……。 孫を遺して逝く祖母の無念さ、死してなお孫を守る情念の強さに胸を打たれます。 一話が短いので気兼ねなく読むことが出来、おすすめです。
#ほのぼの #切ない #深い
『せいくらべ』
三浦さんは一粒種の新一郎を目の中に入れても痛くないほど可愛がっていた。しかしその年の夏、新一郎は疫痢にやられた。それから五年後、三浦さんの家では養子をもらった。 (死んだ新一郎と比べちゃ可哀想だけど、どうも落ちるなあ、雄一郎は顔も頭も)……。 子を想う親の気持ち、時の流れによる慰めを知る短編です。 一話が短いので気兼ねなく読むことが出来、おすすめです。
『振り子時計の下』
考えてみれば母は不思議な人間だ。田舎にいた頃のあの平凡な母、そして町へ出てからの魔女のような母。女はこんなにも変わる事ができるものなのだろうか? 「耕太郎、迎えに来たよ。一緒に帰ろう」「母ちゃん、なあにあの火は」「あれは誰かが死んだんでお狐さんが送り火を焚いているんだよ」……。 切ない母の愛に圧倒される短編です。 一話が短いので気兼ねなく読むことが出来、おすすめです。