騎士団長の機嫌も社畜次第
出逢いは治療目的。異世界の栄養剤(ここまで効くとは、もはやヤバいクスリでは…)を飲み過ぎて中毒を起こした主人公・誠一郎をたまたま拾った第三騎士団団長・アレシュ。誠一郎に回復魔法を施すが、魔力に耐性のない彼は魔力酔いをしてしまったので、魔法を「馴染ませる」必要があり、そのために最も手っ取り早い方法が「致す」ことだという。情緒の欠片もない。しかし、なぜか美貌の騎士団長様は、目の下に隈をつくり死んだ魚のような目をした誠一郎にご執心で…
現代日本社会で勤労する身としては、誠一郎の社畜根性を嗤うことなどデキナイ。しかし、アレシュの言うことは人間として正しい。誠一郎の健康を気遣い、あれこれ世話を焼きたがるアレシュが可愛すぎる。庇護欲が恋心に変わったのか?その辺りの心の機微が書かれていないのは、誠一郎目線だから、ということで正解?同じ場面をアレシュ目線で書いたものを読みたいです先生。アレシュ可愛い!美形で黒髪、仏頂面、天才、寡黙と、どこをとっても私の好みのど真ん中。誠一郎を他人が面倒見ようとすると玩具を取られた子供みたいになるところも萌えポイントです!
対する誠一郎はというと、ハジメテの翌朝も急いで出勤するような仕事中毒だから、アレシュの気持ちに気づいていないのかな~と思ったら、気づいていた。気づいていながら、目の前の仕事を優先して恋愛感情は横に置いてしまうのである。ヒドイ。いやでも、彼は真面目だから仕事の片手間にしてはいけないと思っているのだろう、きっと。魔力及び魔素(という物質がかの地ではそこらじゅうにあるらしい)耐性が皆無で異世界ではすぐに死にそうになるくせに、精神は鋼鉄製で腹黒いので、官僚にものすごく適性があると思われる。そういえば、宰相カミルに勧誘されていた。さもありなん。
こんな主人公の目線で語られる本作は、BL としてはかなりの異色ですが、軽妙なタッチで私は嫌いじゃない。恋愛ものを読みたい人には不向き(BL なのに)だけど、恋愛を絡ませたコメディとしては充分面白い。そういう意味の星4つ。今後、どのように恋愛要素が増えていくのか気になります。アレシュ頑張れ。