3つの重大な過ち
衝撃的な内容でした。
著者は予断を持つことなく、人と人とのつながり紡ぎ、途方もない取材によって陰謀とも言える警察・検察の捜査と無実の人を殺人犯に仕立て上げた不確実な証拠を暴いている。
重大な過ちとは、杜撰な捜査と不確実なDNA鑑定によって生み出された冤罪、そのDNA鑑定が証拠なって死刑となり、刑が執行されてしまった飯塚事件、そして未だに真犯人を逮捕できない現実。
著者は上記を執念とも言える取材によって明らかにするばかりか、タイトルの通り真犯人を特定し、本書の中で決定的な証拠まで提示している。
しかし警察は過去の捜査の失態や他の事件への波及を恐れて真犯人逮捕ができない。
本書ではそこまでの内容が詳細な取材によって語られている。
真犯人は今も同じ街でのうのうと暮らしている言うからかなりの衝撃だ。
冤罪被害者である菅家さんが逮捕された当時の報道は幼かった自分には判断出来なかったであろうが、歳を重ねた現在の判断力をもってすれば無期懲役は当然と感じるだろう。
上辺だけの報道で判断したならば。
この本で自身の固定観念や先入観を著者に見事に見破られた気がした。
私は元々死刑に関しては必要だと思っている。
それは本書を読んだ今でも変わらない。
世の中のあまりに無慈悲とも言える凶悪事件が確実に存在し、極刑を以ってしても報われない被害者と遺族がいると考えるからだ。
しかし、如何なる事件であっても一方的な意見に偏った判断はあまりに危険である。
同じく著者の桶川ストーカー事件でも語られていたような情報操作とも言える報道が現実としてある。
報道被害を生むような不確実なものではない、真実を追求した本書は価値観を変えるに値する見事な一冊である。