著者の主張をまとめた本
平易な言葉で分かりやすく書かれているので、最後まで一気に読めた。私を含め、中国と韓国の振る舞いを不快に思っている人達にとっては、溜飲を下げるのに良い読み物ともいえよう。ただ、主張の根拠は不十分だと思う。中国漁船の尖閣沖での体当たり事件や、朴前大統領の「告げ口外交」等、近年報道された事柄については逐一根拠を示す必要も無いと思うが、沖縄県の翁長知事が「沖縄は日本ではない」という趣旨の発言をしたとか、「福建省福州市名誉市民」の称号を貰っているという指摘には、根拠が必要だと思う。
現在、中国や韓国で理解されている儒教は、孔子の頃とは違い、「仁・義・礼・智・信」という優れた要素が無くなり、「公」よりも「私」を重視し、嘘をついてでも身内をかばうものへと変質している、と著者は言う。それ故、国際社会においては身勝手な振る舞いをし、国内においては賄賂が横行しているらしい。人民解放軍に入りたければ採用担当者に賄賂を贈り、出世する為にも賄賂を贈る。出世したら賄賂を受け取る側になる、と言うが、これが本当であれば、このような国は早晩内部崩壊するであろうから、警戒が必要だとしても過度に恐れる必要はないと思う。
一方、日本の道徳規範は武士道であり、「利他」の精神等、中国韓国とは異なると説く。日本では王朝が一度も交代せず、天皇という「絶対的な公」が一貫して存在していることと、「和を以て貴しと為す」という聖徳太子以来の和の精神に要因があるらしい。
と、このように書かれると、日本人としては快く思うのだが、元は同じ儒教でも、大陸側では「呪われた」ものとなり、日本では武士道の要素となった理由については、学術書ではないのであまり掘り下げられてはいない。「中国では、孔子以前から先祖崇拝の精神が強く伝えられ、その家族愛や信義などを孔子が『論語』まとめました」(p24)と、記載されている程度である。