【感想・ネタバレ】言論統制というビジネス―新聞社史から消された「戦争」―(新潮選書)のレビュー

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Posted by ブクログ

この本は非常に面白く、非常に興味深い本だった。サブタイトルの「 新聞社史から消された「戦争」」、「「愛国」は儲かる!」という帯に非常に心惹かれた。

メディアでは決して取り上げない、戦前戦中の報道を新聞を基軸として取り上げ、新聞がどのように国と向き合い、国にもたれ掛かり、国と心中したのかを、二人のメディアの巨人をベースに、話を進めている。古野伊之助 氏と、対立軸としての正力松太郎氏だ。

この二人がどのように新聞に向き合い、 国に働きかけていったかを、同盟通信社という会社をベースにして描き出している。満州で行われた言論統制という実験を日本国内に持ち込み、13428紙あった新聞を、一県一紙態勢まで持っていった。

現状の新聞にもつながっていく、戦前戦中の新聞業界がどのように作られていったかを、抉りとっていて非常に面白い。なかなかメディアでは取り上げづらい歴史と真実だからだ。戦前戦中の政治に限らず、メディア研究にも役に立つ、一級の書籍である。

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2024年01月03日

Posted by ブクログ

書名がマニアックなので手に取りづらい本なのですが、読んでよかった、危なくスルーするところだった、ということでメディアに興味ある人へ、どんどんおススメ状態になっています。今年は日本のパブリッシャーの歴史を紐解く本が目に付くのですが、その代表例の「出版と権力」に倣って言えばまさに、「新聞と権力」。でも、これだと逆にフツーか…「言論統制というビジネス」で、正解だったのかも。中身は、もう、知らなかったの連続です。しかし現在の新聞業界の母型が太平洋戦争へ向かう1941年の新聞統制から生まれたものであり、しかもそれは国から業界が強いられたものではなく、自ら求めたものであることが丁寧に詳細に物語られていきます。なんとなく第二次世界大戦は軍部の独走にその要因を押し付けるだけではなく、新聞が売れる記事として戦争を煽ったことと、それに国民が熱狂して世論が戦争モードに入ってしまった、という様子は今までも語られていましたが、業界の動きについての研究は、なるほど…だらけ。全国紙と地方紙の対立、地方紙と通信社の依存関係、満州国通信社という実験、電通と陸軍、聯合と外務省という2ライン、広告と記事の連環、同盟・古野と読売・正力のバトル、朝日の事情による資本と経営の分離、日本新聞会という統制団体の存在…このどれもが現在の新聞業界に繋がっていることに驚愕しました。現在の新聞は戦争のレガシー、ってことになります。今年のオリンピック中止を求める社説を掲げた朝日新聞というメディアとオリンピックメディアスポンサーであることを辞めれなかった朝日新聞社という事業会社の矛盾の原因も、この本にある要素で語ることが出来そうです。戦争体制という無双モードだからこそ、昨今のデジタル変革に対応できなかったのかもしれません。2021年3月の一般紙朝刊の発行部数は3000万部。コロナが始まったばかりの20年同月比では234万部の減少…つまり1年間で毎日新聞の発行部数を上回る数が消滅しているという状態。これから、本書にある80年前の業界大変革、起こるかもしれませんね。

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2021年11月02日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦下の日本で言論統制があったことはある程度理解しているつもりだったが、本書で官側の規制に対して民間側の対応策に様々な駆け引きがあり、ある意味で規制をうまく利用していったしたたかな知恵者がいたことに驚嘆した.古野伊之助と正力松太郎だ.全国紙と地方紙、さらに通信社の生き残りを図るためのアイデアが続出していた.一県一紙が要請された際に、全国紙(朝日/毎日/読売)の正力と地方紙の古野の駆け引きは面白い.地方紙として東京3、大阪2だが、なんと広島は海軍の関係で2(中国新聞と呉新聞).1944.7発足の小磯内閣で、朝日新聞副社長の緒方竹虎が国務大臣・情報局総裁に就任したのが笑える話だ.

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2022年02月07日

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