【感想・ネタバレ】菌と鉄(3)のレビュー

舞台は「アミガサ」という世界政府によって人類が支配・管理されている、ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』を彷彿とさせるディストピアな世界。
人々は限られたエリアで決められた食事を与えられ、行動や思想を制限され、感情すらも制御される中、主人公のダンテだけが異質でした。

失読症なこともあってか、彼は周りのように同一の行動・同一の思想に染まることがありませんでした。
「危険思想」とみなされるダンテの行動でしたが、身体的能力の高さと失読症であるが故に見逃され処刑されることはなく厳罰で済んだのです。

D-18という領域でしか生きたことのないダンテは、ある日領域外に出て反乱組織「エーテル」を撃滅するという極秘任務に配属されます。
初めてエリア外に出るのでワクワクするダンテですが、待ち受けていたのは菌類に覆われた世界でした。
ほぼ部隊が全滅する中、ひとりだけ生き延びたダンテは女性区から来た「エーテル」一派の少女アオイと出会います。
彼女の
「自由な考えも会話も許されないなんてどう考えてもおかしいじゃない!」
という一言でダンテは自分の今までの違和感の理由を知ります。

彼女との再会を誓いエリアに戻るダンテでしたが、彼の帰還はアミガサにとっては予定外の出来事でした。
拷問を受けるダンテを待ち受けていたのは、「脳菌糸」を寄生させるというものでした。
なんとアミガサタケを脳に寄生させることで自由を奪い、思考を奪い、菌類は徹底した管理社会を築き上げていたのです。

通常なら思考を奪われるハズのダンテでしたが、奇跡的に支配を免れることに成功します。
更に脳のアミガサと金属を合成させるメタルカプセルを取り込むことで「エーテル」の戦士となったダンテ。
予定調和の世界で、異分子として覚醒します。
彼はこの世界で誰にも支配されることなく、世界を変えることができるのでしょうか。

作品内容紹介に
『進撃の巨人』諫山創が惚れ込んだ、新たなる"絶望"と"抵抗"の物語。
とありますが、先が見通せない物語設定に、少々粗さがある絵柄とコマ展開など、確かに『進撃の巨人』がはじまった当初を彷彿とさせます。

菌類がどうして人間を支配するに至ったのか、アミガサの目的とは?
更に菌類に対して鉄の力でどう人間は立ち向かうのか。
まだまだ謎が多い今作、今後それらの謎が徐々に紐解かれていくのではないかと期待しています。

“絶望”からはじまる物語は未だに注目度が高いジャンルです。
絶望からはじまるからこそ、そこからの成長が引き立ち、生きる意味・立ち向かう尊さを感じられるのだと思います。
この作品が新たな“絶望スタートの物語”の柱となってくれるのではないでしょうか。

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Posted by ブクログ

エーテル最大の作戦失敗の後、ただ逃亡するだけのダンテ達。逃亡することが目的になっているかのような彼らの前に、旧人類(でいいのか)の生き残りが現れます。
乾坤一擲の作戦が失敗に終わったエーテル。彼以上に乾坤一擲のチャンスを伺い続け、違う生物になってしまったかのような見た目になっても、復讐の時を伺い続ける旧人類の執念。

彼らの執念に圧倒され、怖気が走る3巻。

旧人類の歴史を知ったダンテが「人類ってけっこう…ダメでは⁉︎」と疑問に思う場面。今後の彼の思考・理念のようなものに何を刻み込んだのか。
ただね、ダンテくん。どんなにダメな存在だったとしても、それを他者からつきつけられて存在を否定されたとしても、はいそうですか、とはならないのですよ。
その気概、叛骨それこそが、旧人類が原型をとどめなくなっても、ただ一筋の復讐の機会を伺い続けたものなのですよ。

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2022年12月02日

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