【感想・ネタバレ】菌と鉄(2)のレビュー

舞台は「アミガサ」という世界政府によって人類が支配・管理されている、ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』を彷彿とさせるディストピアな世界。
人々は限られたエリアで決められた食事を与えられ、行動や思想を制限され、感情すらも制御される中、主人公のダンテだけが異質でした。

失読症なこともあってか、彼は周りのように同一の行動・同一の思想に染まることがありませんでした。
「危険思想」とみなされるダンテの行動でしたが、身体的能力の高さと失読症であるが故に見逃され処刑されることはなく厳罰で済んだのです。

D-18という領域でしか生きたことのないダンテは、ある日領域外に出て反乱組織「エーテル」を撃滅するという極秘任務に配属されます。
初めてエリア外に出るのでワクワクするダンテですが、待ち受けていたのは菌類に覆われた世界でした。
ほぼ部隊が全滅する中、ひとりだけ生き延びたダンテは女性区から来た「エーテル」一派の少女アオイと出会います。
彼女の
「自由な考えも会話も許されないなんてどう考えてもおかしいじゃない!」
という一言でダンテは自分の今までの違和感の理由を知ります。

彼女との再会を誓いエリアに戻るダンテでしたが、彼の帰還はアミガサにとっては予定外の出来事でした。
拷問を受けるダンテを待ち受けていたのは、「脳菌糸」を寄生させるというものでした。
なんとアミガサタケを脳に寄生させることで自由を奪い、思考を奪い、菌類は徹底した管理社会を築き上げていたのです。

通常なら思考を奪われるハズのダンテでしたが、奇跡的に支配を免れることに成功します。
更に脳のアミガサと金属を合成させるメタルカプセルを取り込むことで「エーテル」の戦士となったダンテ。
予定調和の世界で、異分子として覚醒します。
彼はこの世界で誰にも支配されることなく、世界を変えることができるのでしょうか。

作品内容紹介に
『進撃の巨人』諫山創が惚れ込んだ、新たなる"絶望"と"抵抗"の物語。
とありますが、先が見通せない物語設定に、少々粗さがある絵柄とコマ展開など、確かに『進撃の巨人』がはじまった当初を彷彿とさせます。

菌類がどうして人間を支配するに至ったのか、アミガサの目的とは?
更に菌類に対して鉄の力でどう人間は立ち向かうのか。
まだまだ謎が多い今作、今後それらの謎が徐々に紐解かれていくのではないかと期待しています。

“絶望”からはじまる物語は未だに注目度が高いジャンルです。
絶望からはじまるからこそ、そこからの成長が引き立ち、生きる意味・立ち向かう尊さを感じられるのだと思います。
この作品が新たな“絶望スタートの物語”の柱となってくれるのではないでしょうか。

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名作であります。

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2022年06月09日

Posted by ブクログ

アミガサとエーテルの最終決戦が2巻にして始まるという異例の展開。
両陣営の最大戦力がぶつかり合い、そして散ってゆく。あっけなく。

スキニーの死に様が唐突というか、淡白というか。それは彼女の登場から退場までの時間の短さによるもので、読者である自分の感情移入が足りていないのが原因なのだけど、違う衝撃でした。きっと、戦いになれば個人の情熱や信念の強さは関係なく、彼我の戦力差であっさり死んでしまうということを描きたかったのではないでしょうか。
なので、復活したことは残念。
自暴自棄にも見えるダンテの戦い方は危ういのだけどなぁ。アオイと再会した時に、五体満足でいられるのかどうか。アオイもただ助けられるだけのヒロインではないと思うので、彼女の方の戦いも気にはなるところです。今回の作戦でも、重要な役割果たしましたし。

対アミガサ用プラスチック弾。
そういえば、キノコが木材を分解することができるようになったので、石炭が現在では生成できないと聞きました。地球の歴史で大きな役割を果たしたキノコです。プラスチックは分解できないので、銀の弾丸としたのでしょうね。
そんなプラスチックを分解できる細菌が発生したとかいうニュースがあるそうで。自然の進化って予想がつかない。

アミガサの首魁である博士が真の力を発揮した結果、人間の無力に沈むエーテル首魁のグラント。絶望の中で見えたビジョンに映ったものは希望なのか。
最終決戦に敗北したものたちの逃避行が始まるのか。

管理社会に感じた虚しさの1巻。圧倒的な戦力差に打ちのめされた2巻。
絶望を次々と与えてくれる「菌と鉄」です。

0
2022年06月26日

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