【感想・ネタバレ】合成生物学の衝撃のレビュー

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Posted by ブクログ

わずか数カ月で新型コロナウイルスのワクチンが開発されてしまったことには驚きを禁じ得ないが、その背景には、合成生物学があったことが本書でよくわかる。

振り返ってみれば、数年前、中国の研究者がゲノム編集を施した双子を誕生させ、世界中に衝撃を与え、そして非難されたことは記憶に新しい。その背景には、好むと好まざると、発展を続ける合成生物学があった。

そして、冒頭の新型コロナウイルスワクチンである。これは間違いなく、合成生物学の成果である。しかし、合成生物学にはゲノム編集ベイビーを生み出してしまう可能性や、著者も懸念していることであるが、生物兵器への転用の可能性が常に付きまとう。

世の中を便利にしたインターネットやGPSなどが、実が、軍事技術の研究を基としていることはよく知られていることである。合成生物学も、そのような過程を経てしまうのであろうか?

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2021年12月31日

Posted by ブクログ

合成生物学と呼ばれる学問を知らなかった。
もっと難しい内容なのかと思ったら、とてもわかりやすく
最先端の技術を知ることができた。
昨今の肺炎ウィルスが、人工的に作られたものではないかとの噂をネットで目にしたため、興味が沸いたので読んでみたというわけです。

「デュアルユースジレンマ」は生物学だけに限らず、原子力にも言えることだ。他にもたくさんあるのだろう。

遺伝子組み換え技術については、食品関連の情報で知ってはいたが、細菌やウィルス、人間のDNAまでも作り出すことが可能であるという事実、巨額を投じて研究されたものが、私たちの知らないところで、私たちが知らないうちに使われているのかもしれないと思うと、恐怖すら感じた。
この本に書かれているような情報を、頭の片隅に置いておくことだけでも、自衛の手段になるのかなと思う。

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2021年07月08日

Posted by ブクログ

須田桃子(1975年~)氏は、早大大学院理工学研究科修士課程修了、毎日新聞科学環境部記者等を経て、NewsPicks副編集長。『捏造の科学者 STAP細胞事件』(2014年)で大宅壮一ノンフィクション賞、科学ジャーナリスト大賞受賞。
本書は2冊目の単著で、2018年に出版、2021年に文庫化された。
合成生物学(synthetic biology)とは生物学と工学の学際的な分野で、構成(的)生物学とも訳される。その対象領域は、バイオテクノロジー、遺伝子工学、分子生物学、化学工学、生物工学、電気工学等に及び、もともとは様々な領域を統合して生命の仕組みを理解しようとするものであったが、その進歩とともに、新しい生命機能あるいは生命システムのデザイン、組み立てにも及ぶようになり、いまや最も勢いのある科学分野の一つである。
本書では、世界初の人工生物「ミニマル・セル」を作り出した孤高の科学者クレイグ・ベンター、生物のゲノムをピンポイントで改変できる究極の遺伝子改変技術「CRISPA-Cas9」を発明し、2020年にノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナ(受賞はエマニュエル・シャルパンティエと共同)、旧ソ連で合成生物学を使った生物兵器の研究を行っていたセルゲイ・ポポフ、米国国防総省の研究機関で、合成生物学研究の最大のパトロンとも言える国防高等研究計画局(DARPA)のメンバーら、多数の研究者・専門家への取材を通して、合成生物学の最前線で今何が起こっているのか、また、今後どのようなことが起こり得るのかを明らかにしたものである。
そして、著者は本書の中で大きく3つの問題を提起しているのだが、それは、①ゲノムに人間の手が加えられた生物が生態系に与える影響、②合成生物学の軍事目的での使用、③人間が、ゲノムを書き換えたり、新たな種を作り出す、即ち、生命を操作したり、生命の進化を操ったりすることが許されるのかという問題(究極的には、カズオ・イシグロの小説『わたしを離さないで』に出てくるような、親を持たない人間が生み出されるかも知れないのだ)である。
私は読み進めるにつれて段々気分が落ち込んで来さえしたのだが、それは、③のような人類にとって最も根源的な問いに、我々は正しく対処できるのか心配になったからである。
著者もエピローグの最後に次のように書いている。「新たな技術をあみだし、それを応用する能力を知性と呼ぶなら、ベンターが言う通り、人類には確かに他の動物にはない圧倒的な知性がある。だが、その技術や知識を駆使して生命の設計図を改変し、進化の新たな担い手となるときには、また別の種類の知性が必要なのではないだろうか。日進月歩の技術の見通しを探り、その応用が適切な目的かどうかを議論する。社会全体で協力して悪用や誤用を防ぎ、時には立ち止まって考える。そうした知性を併せ持たない限り、合成生物学がもたらす未来もまた、「無慈悲で、残酷な」世界になってしまいかねない。」
人類は今、様々な意味で大きな分岐点に立っていると言われるが(合成生物学に限らず、気候問題、食糧問題、格差・貧困の問題、AI技術、等々)、30年後、100年後の人類がどのような生活を送っているのか、それは我々が現在をどう生きるかにかかっている。「合成生物学」。。。その行方に関心を持ち続ける必要があるだろう。
(2021年11月了)

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2021年11月17日

Posted by ブクログ

専門的な話ではなく研究者に焦点を当てて書かれている。
研究者からしたら可能性のあることはやってみたくなるだろうから社会的な議論をっていうところは同意できるな。

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2021年07月17日

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