【感想・ネタバレ】死にかた論(新潮選書)のレビュー

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Posted by ブクログ

人生の後半戦に突入した自分の今後を考える参考になれば、と思い手に取る。著者が冒頭で述べている通り、「これ」という結論が容易に出せる問いではないが、末尾で述べている通り、解を模索する試行錯誤の過程を辿ることで、いろいろと考えさせられた。
西洋的な近代合理主義では、二律背反となってしまう「死に方の自己決定」について、古代日本あるいは日本仏教の中に解の手がかりを求めようとすることは、やはり日本人である自分には響いた。

特に心に残った箇所は以下の通り。
●「人格」とは、人を社会的存在として形成する接着剤であり、結節点である。人は相互に、それぞれの「人」の「格」を測定し、評価し、それによって、様々な共感のレベルを作り出し、多様な層をもった社会を生み出す。(中略)社会的存在としての他者に対する共感があってはじめて他者を「人格」として尊重できるのである。(P.51-52)

●われわれは常に「いずれ死ぬ」と思っている。しかし、よくよく考えてみれば、われわれは常に「いつでも死ぬ」可能性に取り囲まれている。だからこの一瞬の生は、常にその奥底に死をもっているというべきであろう。「生」は「死」によって支えられてある、といってよい。(P.79)

●「死」とは、最後の「生」であり、「生」の頂点であり、その到達点ともいえる。「よい生」にこだわる者が、「よい死に方」へと生の最後の精神の緊張を向けるのは当然のことであった。「生の尊重」というなら「死に方」も尊重されなければならない。(P.196)

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2022年01月25日

Posted by ブクログ

佐伯啓思(1949年~)は、東大経済学部卒、東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、滋賀大学経済学部教授、京大大学院人間・環境学研究科教授等を経て、京大名誉教授。京大こころの未来研究センター特任教授。専攻は社会経済学、社会思想史。一般向けを含めて多数の著書あり。
本書は、月刊誌『新潮45』に連載された「反・幸福論」(2018年6~9月)(同誌はその後廃刊)に、書下ろしを加えて出版されたもの。同連載は、2010年12月から、その時々の時流を勘案したテーマを論じ、いずれも後に書籍化されているが、死生観的な論考がまとまっているのは『反・幸福論』(2012年)、『死と生』(2018年)で、本書はその続編になる。(私は『死と生』は読んだ)
本書は、「安楽死」を導入に、日本的死生観、特に仏教に関わる死生観がメインに書かれているが、著者の他の著書同様、古今東西の先人の思想や著書が引用されており、本書をきっかけに思考を広めるのに大変役に立つ。
「死」、「死にかた」について様々な示唆を与えてくれる一冊である。
(2021年6月了)

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2021年06月22日

Posted by ブクログ

西欧と日本の「死生観」を対比した論考が興味深い。

仏教にかなり立ち入った後半は少々重たいので、ここでしんどくなったら、最後の章まで飛ばして読んでもよいと思う。

「結論」や「正解」は書かれていないが、著者の巡らす思いには共感できるところが多い。

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2024年05月13日

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