【感想・ネタバレ】記憶のデザインのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

«本書は…記憶に関するエッセイである。ここでエッセイとは、「試論」というくらいの意味だ。…本書は、物覚えをよくするための記憶術を伝授する本ではない。…記憶にかんする学術研究の最新情報をお伝えするものでもない。»(pp.10-11)と「はじめに」でこの本の性質がしっかり注意されている。にも関わらず、読み進めていくとそのことを忘れてしまい、終章に至るところで「あれ?記憶を上手くデザインする手法が書かれていないぞ?」と気付いて「はじめに」を読み返してしまったのが私です。

なにせ序章で«①記憶がつぎつぎと書き換えられる情報環境でどうするか ②知りたいことは、ネットで検索できるので記憶しなくてもよいか ③フェイクコンテンツが溢れる中で、情報の真偽をいかに見分けられるか»(p.35)というように、個人的にも気になっている事柄が挙げられていたので、「ならばこの本はそれらの問題に対する答えが用意されているに違いない」と思い込んでしまっても仕方ないじゃないですか(言い訳1)。
そして第1章では章題が「検索すればOKか」とあり、先ほどの②の問題を取り上げているわけで、結論としては「検索するためにも記憶や技術を要するので、その前提は否定される」(個人的要約)のように、まがりなりにも回答が載ってる。となれば「引き続いた章では①③の回答が載ってるんじゃないか」と思い込んでしまうわけですよ(言い訳2)
と思っていたら、第3章から第6章までは«私たちの記憶がどのようにかたちづくられているか»(p.93)という話に移り、それぞれにおいて納得出来る内容であるものの、しかし「思ってたんと違う」状況へと迷いこまされちまったのです(言い訳3)
第7章になり本題と同じ「記憶のデザイン」という章題が現れてきたので「おお、ようやく答えが提示されるんだな」と期待するわけですが、読み進めると、書かれているのは、山本さんが実践している記憶術的な案内と、現在進行中の「知識OS作成構想」が提示されています。残りページは少なくなっています。そして気付けば終章に至っていました。…この本の性質を理解していないまま、ダラダラ読んでいたのが良くなかったのでしょう(言い訳4)

…などとダラダラと言い訳を書いてきたわけですが、私のような「思い込み読み」をしないために、この本は入手したら一気読みすることをオススメします。
繰り返しますが、この本はエッセイです。山本さんの体験を追体験するための内容が示されています。提起された問題に対する答えは書かれていません。山本さんとはまた別の答えを読者自身で見つけるモチベーションを生み出すための本、とでも言えば良いでしょうか。

個人的には「個々人の記憶のデザインはやはり個々人に依存する」ことを改めて認識しなおせたのが、この本を読んだ効用です。
また、私も«知識アトラス»(p.211など)が欲しいです。個人的には、書いているテキスト(ブログやらツイートやら)から典拠へのリンクを配するように日々努めています。
山本さん、楽しい本をありがとうございました。

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2021年02月07日

Posted by ブクログ

「哲学の劇場」での丁寧な語り口と深い知識に好感を抱き、ちょくちょくお二人の書籍を漁っております。

本作の結論はプログラミングの知見もあり、且つ人文学や社会学などの思想系にも精通する著者ならではの発想ではないでしょうか。個人的に、このような知的OS興味有りで、ぜひ使ってみたいと思う。

最近は紙と電子書籍併用しているが、電子書籍の平面でかつ限定的なディスプレイだと積読している本を思い出すきっかけが確かにないなーと感じている。スクロールしてみると、そういえばこんな本買ったなと記憶が蘇ることしばしば。

記憶の曖昧性、個人的な記憶と社会的な記憶、記憶の形態なんかも学ぶことができて、理解の網の目が細かくなったかな。適宜参考文献紹介してくれるスタイルも好きで、おかげさまで読みたい本が増えました。

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2023年03月16日

Posted by ブクログ

記憶そのものについてというより「記憶と技術」についての思索を試みる本。「検索ができれば記憶は不要では」という仮説に対する違和感は著者と似た感覚を持っていて、新たな気づきは多くなかったがその分スラスラと読めたし、思考を整理してもらった気分。著者のいう「知識OS」「知識アトラス」のようなものは個人的には欲しいし実現しそうな気もするけど、その使いこなし方に格差が生まれるであろう問題とこうした技術自体は別問題。結局は知性のあるべき姿や水準の社会合意と教育の問題になるのか、技術でどうにかできるものなのか。

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2022年12月04日

Posted by ブクログ

エコロジーという語句が何度も登場するが、カタカナ語の特徴で何となく意味が分かったような気になってしまう.「生態学」と漢字で表記した方がより理解しやすいと感じている.本書では記憶のあり方について、エコロジーの観点から論じているが、生態学的に、自然、社会、精神(個人)と技術に分けて議論している.PC上に効率的な書斎を構築するアイデアとして、知識OSと知識アトラスを提案しているが、知識OSには非常に引き付けられた.このようなOSを何とか作りたいものだ.

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2021年08月02日

Posted by ブクログ

 テレビ、新聞、本の他、ネット、SNSの普及により絶えずして情報の濁流に飲み込まれている現代人にとって、自分の記憶を「世話」することは可能か?

 私の実感として、ネットで見たことはほとんど記憶に残らない。インターネット上のどこかのファイルに仕舞い込まれており、自分の目の前に並んでいるわけではないので、思い出すトリガーが限られるからか。また、たまに脳内の引き出しから出てくることはあっても、ではその出典はどこだったかなどは、全くと言っていいほど思い出せない。
その点、紙の本はそれが並んだ本棚を見るだけで、読んだ内容がほのかに甦ってくる感覚がある。例えばジャンルごとや著者ごとといった風に、自分で本を体系化して本棚の中で並び替えられるのも思考を整理するのに便利な気がする。

 とはいえ有形のものは収納スペース等に限界があるし、そうした自分だけの体系化された記憶をネット空間で整理できて、見やすく整理できたらそれは便利だろうな。山本さんが考えるような知識OSが早く実現してほしい。

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2021年04月04日

Posted by ブクログ

記憶というものがどういうものか。記憶は、自然と人工物の重なり合った時空間を基礎として、他者との関わりの中で形成される。さらに、インターネットとコンピュータによる情報環境が加わることで、意識には上がらない定着することなく忘れ去られてしまう膨大な記憶がある。
そのような現代社会において、自らの記憶をどのようにデザインするか。内部記憶と外部記憶の役割を整理することで、ネット社会における内部記憶の重要性を再認識させてくれる。
最後に提案される知識OSは、情報環境の発展に寄り添った画期的なアイデアであり、好奇心くすぐるものであった。

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2021年03月29日

Posted by ブクログ

インターネットでいつでも検索できるにしても、それらは巨大な倉庫に格納されている素材にすぎず、人が自らの人生を生きるためには、それらのフラグメントを自己の時間的/空間的にネットワーク化された記憶(五感も組み入れられた自分自身の内なるシステムともいえる)と相関させることが必要であるはず。その際には、自分自身の記憶について、「上手くできたインデックス」を活用できるとうれしい。コンピュータ/通信の技術を役立てるとしたら、このインデックスを洗練・高機能にできるという面ではないか。
と、いうようなことを語っておられるようだ。かっちりした解説書というよりも、ふんわりとしたケーブのような印象のエッセイ。

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2021年03月07日

Posted by ブクログ

記憶を自然、技術、社会、精神の4領域の観点から語るエッセイ
現在を情報の濁流と表現しており、まさにそうだと思われる
その中で適切に記憶するにはビオトープ、つまり安定した池のような環境形成が大切だと語られている
まさにその通りで、流れる情報をそのまま受けていたら処理しきれない
ビオトープを作るには工夫が必要であり、情報の遮断というのも一つ
また書籍での情報というのも一つの形
書籍は開かない限り情報として入って来ないが、置いてあるだけでもタイトルや物理的な形から漏れ出る情報は拾える
暗知的な情報取得の手段となる
普段、明確に言語化できていなかったことを文章として明示してくれて有り難かった

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2024年04月14日

Posted by ブクログ

検索すればある程度の情報が手に入り、多くの情報を扱える情報端末が普及したことで色々記憶に関する事柄を考察している

新たな気付きが得られるかも?

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2021年03月15日

Posted by ブクログ

SNSとの付き合い方を見直せないかな、と思い手にとった本です。

読んでみると、検索・記憶すること・莫大な情報(電子書籍、データ)から思い出すには…というような内容がメインなので、ややズレたのですが、都度入るコラムが分かりやすく、紹介されている書籍も面白いので、読んで良かったです。

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2020年11月02日

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