【感想・ネタバレ】アメリカの政党政治 建国から250年の軌跡のレビュー

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Posted by ブクログ

アメリカは最も有名な二大政党制の国でありながら、その政党は、我々が想像するような「政党」とはかけ離れた、世界でも特異な「柔らかい」政党システムであり、我々日本人の常識をもってするとしばしばその実態を見誤ってしまう。本書は、序章にてアメリカの政治システムについて基本的な解説を丁寧に行い、読者に簡単な前提知識を与えたのち、第1章から第5章にかけて、建国からトランプ政権に至るまでの250年のアメリカの歴史における各政党のあり方と変化について解説する。
私は本書を読む前から、アメリカの政治システムについて基本教養レベルの知識を有していたが、例えば「今はリベラルである民主党は、かつては奴隷制を肯定し南部で議席を独占していた政党であった」という事実を知りつつ、その理由を解説できない状態であった。時系列で丁寧に当時の状況を説明していく本書のおかげで、それぞれの政党が多様な人々によって構成され、その時々の連邦を二分するアジェンダへの意見により結束したことで、時勢に合わせて徐々に姿を変えていったことを理解することができた。解説の丁寧さと簡潔さがほどよいバランスで非常に心地よく読み進めることができた。
本書の序章はとてもよくまとまっているが、しかしアメリカ政治についての基本的知識を有していない人は、もしかすると (本書の執筆者の岡山裕先生も加わっている) 岡山裕, 西山隆行編著『アメリカの政治』(弘文堂) を先に読み、基本的なアメリカの政治システムと現代の主要争点を知ったあとだと、よりアメリカへの理解を深められるかもしれない。

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2024年04月24日

Posted by ブクログ

アメリカの政治に対する解像度はあがったけども、やはり根本的に知らないわからない世界なので、書かれていたことの3割もわかってない気がする…

また読むべきだなと

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2021年03月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アメリカの政党は建国と憲法制定の時点で、政治の担い手として想定されなかった。党派の存在は共通善の実現を妨げるからだ。それでも連邦派と共和派が登場し、共和派の一党支配を経て民主党とホイッグ党による競争が始まる。以後19世紀末までに、二大政党は社会に深く浸透し「政党の時代」が訪れた。市民は支持政党を持つようになる。南北対立の際、共和党が奴隷制への反対政党として成立した。当時、奴隷一人を五分の三人として数えた。南部は奴隷を自由人にすることで、選挙人配分の基礎となる州人口を増やしたい。1861年からの南北戦争は、黒人奴隷解放のため白人が戦った。戦争は連邦が勝利し、リンカンは奴隷制を廃止する。20世紀に入ると党の候補者を決定する手段が党大会から直接予備選挙に変わり、誰でも政治家になれるようになった。政党の解放性が強まり、利益団体や社会運動の影響を受けやすくなる。

1970年代以降、共和党が保守、民主党がリベラルへと分極化する。それぞれの争点に関わるイデオロギー的な支持者層への配慮から、政策が明らかなリベラルあるいは保守になり、有権者の分極化も進んだ。政党政治家は幅広い層から支持を受けるのが困難になる。一方で連邦レベルの「決められない政治」と対照的に、多くの州では多数党がイデオロギー色の強い政策を実現させた。民主党は概ねリベラリズムが共有されており、主に女性・人種的性的マイノリティ・非プロテスタント・低所得者の支持を受けた。一方保守共和党の実態は、様々な分野の反リベラル勢力の連合であった。党内の諸勢力は、減税や人口中絶規制などお互いの主要目標の実現に向けて協力した。

アメリカの選挙は候補者中心に戦われる。連邦・州を問わず、公職の選挙では本選挙の前の予備選挙に勝つ必要がある。それは政党内の規律を弱めた。各自で選挙資金や人員を集めて選挙対策組織をつくり、有権者に個人を売り込まないといけないためだ。そのため議会では、党議拘束による議員の行動統制が難しい。また党員制度や恒久的な党綱領、党首に相当する役職が存在せず、党指導部が党内の政治家を指揮できる仕組みが発達していない。一方でアメリカの政治過程では、官僚制や裁判官といった日本などでは党派制が排除されている政府機関までに政党が入り込んでいる。アメリカの政党は組織構成の面でも、規律の面でもまとまりがない。まさに大きなテントのような存在なのである。

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2020年12月21日

Posted by ブクログ

 穏健な二大政党制が、分極化することで、現実への対応ができなくなった。
 やはり、こうしてみると、中選挙区制のダイナミズムを失ったことが、日本の政治の劣化に繋がったことを再認識する。
 
 ただ、それにしても、歴史を紐解いてみると、二つの政党のイメージが時間をかけて固まってきたことに。

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2021年04月25日

Posted by ブクログ

アメリカの政党政治の淵源から現代までの過程が分かる本。

例えば、以下のようなことが良く分かって良い学びになった。しかし、新書だからか遊びが無く、中々読み進まず、読み終わった頃には疲れ果ててしまった。

・建国者たちは党派制に反対していたが、連邦政府にどこまで権限を認めるかで、連邦派と共和派で対立したとこから党派制が始まる
・南北戦争の北部は、共和党のリンカーン大統領。このため、統一後も南部は民主党を旗頭として黒人解放に抵抗。この頃は、共和党の方が進歩的 
・しかし、100年前と比べて大統領選における民主党・共和党の支持基盤が真逆になっている。共和党は徐々に財界と結んで保守的に、民主党はリベラル寄りに
・南部民主党ってどんなグループだったのか(反リベラルの南部白人層)
・ゲリマンダリングが出てきた背景(農村部に強い共和党の影響)
・たまに第三勢力も出てくるが、二大政党によって政治制度自体がそれを前提として作り込まれていること
・とは言いつつ、政党の中央権力は強くなく、党議拘束や資金提供も限定的。自分の力で地元でのし上がることが前提の柔構造。このため、党議よりも支援者、地元アジェンダに縛られがち。トランプが突然共和党の大統領候補として出れたのもこういう背景。(日本では、自民党でキャリア積まないと総理は無理)
・両党は思想的には、大きな差が無かったが、ここまで国が分断したのは冷戦後の新現象であり、それまでは共和党と南部民主党などのように党派を超えた連携が珍しく無かった。
・最近の左右分裂で結果的に党の方針と議員の方針が一致してきている。

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2021年04月17日

Posted by ブクログ

知っているつもりだったアメリカの政党政治が全く違っていた。素人にもアメリカを理解する上で非常に有意義な本。

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2021年02月05日

Posted by ブクログ

わかりやすい、読みやすい。
法学政治系、国際関係界隈に関心のある高校生も読めるレベル。
アメリカ政治史とも、とれる。
ニュースで、細かく他国の政治アクターの解説はしないので、非常に有用。

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2020年12月26日

Posted by ブクログ

大統領ではなく二大政党制の形成・変容過程からみた米国政治史。現代アメリカの政治的分断も、決してトランプの個性だけによってできたのではなく、その下地が1990年代から形成されてきたことが分かる。

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2020年11月05日

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