【感想・ネタバレ】ダーウィン事変(7)のレビュー

動物実験などに対し過激な手段をとるテロ組織「動物解放同盟(ALA)」がカリフォルニア州の生物科学研究所を襲撃。
そこにいた動物を解放している中で見つけたのが、出産間近のチンパンジーでした。
運び出されたチンパンジーは無事出産をするのですが、驚くべきことに生まれた嬰児は人間とチンパンジーの交雑種「ヒューマンジー」だったのです。

ヒューマンジーはチャーリーと名付けられ、チンパンジー研究の権威スタイン博士夫婦に引き取られます。
成長したチャーリーは服を着て二足歩行をし言葉を話し、見た目はチンパンジーっぽさがありますが人間と変わらない生活を送っています。
高校に通うことになったチャーリーですが、学校では注目の的で…。

読み始めた最初は、人間を超えた生命体が生まれ人間を脅かす存在になる…といったSFかと思いました。
しかしこの物語はそんな簡単な構造ではありませんでした。

それを最初に感じたシーンが、チャーリーが学校で仲良くなった陰キャの優等生ルーシーとの会話です。
「ヒューマンジーなのってどんな感じ?」
というルーシーからの質問に対し、チャーリーは
「人間なのってどんな感じ?」
と聞き返すのです。

ルーシーは無意識にチャーリーを人間ではない異物と考えて質問をしてしまったのです。
正に「潜在的の差別意識」を比喩したシーンだと思います

また、チャーリーと両親がヴィーガン(動物への搾取と残酷さを排除しようとする考え)である事に対し、スクールメイトがヴィーガンの平等性を揶揄しました。
その際、チャーリーが平等について考えを述べるのですが、人間の考える「平等」とは異なる「平等」でした。
それは人間第一主義からするとゾっとする考えだったのです。

このように、この物語は随所で「差別」と「平等」を考えさせられます。

そんなある日、町で爆発テロが起きます。
犯人はチャーリーの産みの親のチンパンジーを解放したALAでした。
彼らは人間だけを特別視せず、すべての動物の平等を目指し、反する人間に鉄槌をくだすことを知らしめるため、更に過激な手段を選んだのです。
そんなALAは彼らの戦いにチャーリーを巻き込むことを画策します。

「人間だけを特別にする理由はあるの?」と問うチャーリーの平等はALAの目指す平等と近しいような気がします。
しかし、今まで両親としか接してきていなかったチャーリーが色々な人と出会い、多くの人間を観察することでどう変化していくのか…。

最初はSFかと思いきや、中盤はヒューマンドラマ、後半に至ってはサスペンス要素があり、1巻だけでも充実感が凄いです!!
序盤でこんなに面白くて、続きはどうなってしまうのか…。

チャーリーが生まれた意味とは?
ALAの戦争に巻き込まれてしまうのか?
気になることがいっぱいです!

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Posted by ブクログ

全員集合のゴルトン社にてついにグロスマン博士がその姿を現すという展開。ALAもファイアアーベントとオメラスではそれぞれ思惑が違ってそうでなかなか混沌とした状況に。
アニメ化決定らしいけど、これ絶対にNetflixあたりで海外のスタッフ・キャストで実写ドラマ化の方が向いてるよね。

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2024年06月05日

購入済み

7巻までの感想

主人公チャーリーの人間的からズレた発言は彼が人では無い何かであるとわかりやすく印象付けられていて面白い。いちいち哲学的な発言が多く、手を止めて考えさせてくれるという面白さもある。
少しずつ近づいていくルーシーとの距離感も急ぎすぎず心地よかったです。

個人的な感想としてメインで出てくる大人達は全て傲慢だと感じました。向きの違う傲慢さのいずれかに気持ちが悪くなることもあるかもしれません。読中には作者を軽蔑したくなるほど心を揺さぶられる事もありました。
精神的に成長している途中のチャーリーとルーシーがどう変わっていくのか続きが楽しみです。

色々書きましたがサクッと読んでも楽しめそうです。割と幅広く高校生以上にはオススメ出来るかなと思います。
社会正義とは何か?とぼんやりとした違和感を抱いてる人に参考にして貰いたい作品です。

#深い #タメになる #怖い

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2024年06月05日

購入済み

生が苦しい時に、親を恨むか

私は片親で育ったがそれは虐待をする親だった。
もう片方の親とは連絡が取れたが、その人は再婚したので喪失感は充分にあった。

虐待を受けながら、親のいる苦しみと片方とはいえ親のいない苦しみは味わった。

だが「男女が出会って結婚して子供が産まれ、その子を虐待する」そのどこにも「誰が悪い」とか「誰のせい」というのが無いと考えていた。

前段は祝福すべきことだし、後段は不幸な化学反応だと思っている。

なので、虐待親を敵として排除する思いはあっても、なぜ産んだのかとは考えなかったな。

そんなことを思い出させた作品でした。次巻も楽しみです。

#アツい

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2024年05月24日

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