【感想・ネタバレ】イエスの意味はイエス、それから…のレビュー

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Posted by ブクログ

旧西ドイツに生まれた著者、カロリン・エムケは、日本ではまだメジャーではないジャーナリストだ。
現在は議論の場を設けたり、幅広いテーマで著作活動を行なっており、精力的な活動を行なっているという。
彼女、そして本書に出会えたことは、大変良い出会いであった。

日々、私には何ができるのだろう、とか、なんとなくの違和感とか、不快とは言えないけれど、モヤっとすることがある。
それは会社での会話だったり、新聞の投書だったり色々なのだが、こんなことが一例としてあげられる。
ある日の新聞のオピニオン欄で、女性の生理用品を買えないことについて、識者や読者の意見が載っていた。
読者である年配の男性は、たかが数百円のものが買えないなんておかしい、生活を見直せ、という意見を述べた。
その意見は、この事を矮小化しているように感じた。
そんな意見を読んで感じたモヤモヤを、本書の一節が私の思いを端的に言い表した。
「他者の体験に耳を傾けること。彼らの話を、自身では一度も体験したことがないというだけの理由で、即座に「あり得ない」と否定しないこと。」(62~63頁)
例の投書の男性を責めるつもりはないが、どうか即座に否定せず、想像力と、聴く姿勢は持って欲しい。

著者はこうも述べる。
「多様な関係性を常に自覚」することを大切にし(68頁)、「尊重は、誰にも与えられてしかるべきもの」(91頁)だと。
私たちは互いに尊重しあい、自分自身の事も尊重していい。
誰かの価値観で自分を縛らなくていい。
私の価値をなぜ、他人が決めるのか?
相手の思い込みで「私」を取るに足らないもの、なんて思う必要はないのだ。

じわりじわりと響いてくる著者の言葉は、地下水脈のように私を潤す。

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2021年06月13日

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