【感想・ネタバレ】戦争と平和3のレビュー

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Posted by ブクログ

3巻は戦時ではなく、それぞれの理由からモスクワに集まった主人公たち(20代前後の貴族の子息令嬢)の人間関係と人生の岐路、とりわけ誰を結婚相手とするかという問題について描かれる。

登場人物はおおよそ以下の通り。

─アンドレイ・ボルコンスキー
幼い息子を遺して妻に先立たれ隠居を志すが、ナターシャに出会い一念発起、プロポーズ。優秀な実務家だが、少し上から目線。
─ピエール・ベズーホフ
育ての親から莫大な遺産を相続。一時放蕩生活を捨てて宗教と社会貢献にのめり込むが、思うように行かず、再び元の生活に戻る。妻エレーヌのことは、軽薄な社交家だと嫌悪している。
─ニコライ・ロストフ
財政の傾いた実家を支えるべく裕福な令嬢との結婚を期待されるが、孤児の従妹ソーニャと人生を共にすることを決意する。熱血タイプでややお人好しなところがある。
─ボリス・ドルベツコイ
世渡り上手な出世頭。父を亡くし、未亡人の母を助けるため、裕福なジュリー・カラーギンとの結婚を決意する。
─ナターシャ・ロストフ
ニコライの妹。純愛に基づく結婚を夢見る17歳で、美貌と愛嬌を持った華やかなキャラクター。アンドレイのプロポーズを受ける。
─ソーニャ
ナターシャとニコライの従妹で、ロストフ家に暮らす。ナターシャの真面目で良き友人。
─マリヤ・ボルコンスキー
アンドレイの妹。厳格で偏屈な父に縛られ、鬱屈とした日々を送る。「神の遣い」と呼ぶ、貧しい巡礼たちとの密かな交流を、唯一の楽しみとしている。
─エレーヌ・ベズーホフ
ピエールの妻。類稀なる美貌と社交力の持ち主で、知的な集団の中心と見られている、フィクサーのような存在。


戦場のシーンが多かった1巻や、ナポレオンとアレクサンドル皇帝がついに相見えた2巻に比べると、3巻は恋愛や結婚といった身近なテーマが中心で歴史的なイベントや登場人物が少なく、1巻や2巻ほどの壮大さは感じなかった。
史実に基づいた物語であるならば、ここまで恋愛模様を複雑にする必要があるのかということにやや疑問も抱いたが、巻末の解説によればこれは物語後半に向けた布石ということなので、今後を楽しみにしたい。

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2022年12月18日

Posted by ブクログ

第2部第3~5編を収録。舞台は戦場から貴族社会へと移り、青年たちの恋愛と結婚についての騒動が描かれる。

人生の新たな局面に取り組むアンドレイとピエールだったが、虚飾に満ちた社会にぶち当たり、それぞれに行き詰まっていく。直接からむ場面は少ないものの、この二人の友情は強いものに育っており、アンドレイが旅立つ際、ピエールのことを「黄金の心の持ち主」と言って評価するのが印象深い。

本巻で最大の見どころはナターシャがとる行動とその顛末。オードリー・ヘップバーンの映画ではナターシャの行動が唐突で意味不明に思えて、彼女が軽率で悪い女にしか見えなかったのだが、原作ではそこに至るまでの状況の経緯や心境の変化が克明に描かれており、彼女の若さやボルコンスキー家の対応の酷さなども考えると、この流れでは仕方ないよなぁとようやく納得した。

ロストフ家の財政危機のなか、ニコライに迫られる「愛していない金持ちの女か、愛している貧乏な女か」という究極の選択がシビア。また、ボリスやアナトールのような、ピエールやアンドレイとは全く異なる価値観や行動原理を持つ人物が幾人も登場し、その豊富な人物群や人間観察の鋭さが、非常に興味深かった。孤独なマリヤさんの信仰心と現実との葛藤も心に残る。

第2部の終盤では悲劇のような重い結末のなかに、思いがけない新しい関係が生まれ、かすかな希望の兆しが感じられた。大彗星を見上げる美しいラストにしばし呆然とする。

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2022年10月02日

Posted by ブクログ

結ばれた恋人たちを待つ、思いがけない試練。
幻滅から再び立ち上がる若者たち。
戦争はまだ、終わっていない。

いくつもの「その後」と「予感」が休みなく紡ぎ合わされ、人々の運命はどこまでも遠くへ運ばれてゆく......ようやく後半へ。

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2021年11月25日

Posted by ブクログ

華やかな上流社交会で繰り広げられる、人々の付き合いの中での人間関係や登場人物の気持ちの変化が面白く、絶妙な物語展開に引き込まれた。

「自分にはかかわりのない事柄については、冷静なる観察者であるべきなのだ」p68
「私は自分がこの相手より上だと意識しているので、そのせいで相手よりはるかに劣った振る舞いをしてしまう。こちらが無礼な言動をしても相手は寛大に聞き流しているのに、こちらは逆にますます相手を見下すという始末だ」p72
「(狩猟犬)私なんかの出る幕かね! あんたがたの犬ときたら、犬一頭の値が村ひとつというような、何千ルーブリもする奴ばかりじゃないか」p239
「敵の砲火を浴び、何もできない状況の時に、兵士たちは懸命になって自分の仕事を探そうとする。何かで気を紛らわしていた方が危険をやり過ごしやすいからだというのだ。ピエールには、すべての人間がこの兵士たちと同じ方法で人生をやり過ごそうとしているように思えるのだった」p328

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2021年11月13日

Posted by ブクログ

本巻には戦争の場面は登場せず、もっぱら貴族生活と恋愛模様があらわされている。物語は半分を終えたところであるが、いやはや、やはり、面白すぎる。今まで未読だったのが悔やまれるが、この期に及んで未読であって良かったを思う。他の訳でも読めるが、本訳者のもので思うので、これからのお楽しみは来年までお預けとし、既刊の巻の再読でもするか。

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2020年11月23日

Posted by ブクログ

第三巻では戦争は小休止し、もっぱらモスクワおよびペテルブルグを舞台にした人間関係の描写に重きが置かれている。主役はやはりナターシャだろう。行動自体は俗っぽいといえば俗っぽいのだが、やはりいつの時代でも人の心は移ろいやすいもの、ということなのだろうか。加えてますますフリーメイソンにのめり込んでいくピエール、カタブツなのか思い込みが強すぎるのかよく分からないアンドレイを中心に話は展開していく。

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2022年04月19日

Posted by ブクログ

文学と歴史の板挟みにあった人間がどう手探りしたか,を知る上では参考になる作品だと思う。当時のロシアの貴族社会,フランスとの距離感,ナポレオン戦争の詳細など。

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2023年06月14日

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