感情タグBEST3
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やっぱり浅田次郎さん、いい。
封建なのか、能力主義なのか。
いずれ、遺伝と環境が人を規定するのだから、ちょっとした細目は違えど、個人の運命なんてものは、どちらの状況であろうとも、理不尽は変わらぬ。
江戸時代の話として、書いているので、なんだかさらっと読めるが、現代でも起こっていることに、そう差はない。
なんて、書き連ねてみてはみても、
「祖父は話に詰まると、爪の黝んだ、粗く節くれ立った指に火箸を握って、適当な言葉が見つかるまでいつまでも火鉢の灰をかきまぜていた。
その誠実さが、私にはない。」
という幕引きの言葉に、言葉を失った。
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エッセイ~時代小説の構成で6編。外で務めに翻弄され家では妻女に冷たくされる男の可笑しみ、実直ゆえに時に身勝手な男の心境、これを書かせたら著者はほんとうに上手いと思う。明治の御一新のすぐ前は江戸時代。著者は祖父を通じて自分とひとつながりに幕末の時代がぼんやりと見えていたのだという。少し倦んだ空気が漂う太平の世の末も著者の作品の舞台にぴったりだ。
P22 妻ならば娘ならば、も少し悲しげな顔で、ここは万已むを得ずお覚悟なされませ、というほどのことは言うてほしい。それを、まるで物言う鳥のごとく声を揃えて、オハラメシマセはなかろう。
P65 恐怖と滑稽がないまぜとなり、互いにどういう顔をしてよいものかわからぬ。【中略】「はい、神隠しに遭うた、と。」そこでとうとう二人は、見つめ合うたまま噴き出した。悲しみとおかしみが背中合わせであるということは葬式の折などで知ってはいるが、怖ろしさとおかしみも紙一重であるというのは、人生の一大発見であった。
P88 父祖が命をかけて手にした太平の世には、もはや我ら武方の活躍する場所はない。
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浅田次郎と祖父の思い出と、江戸時代から大政奉還後の明治初期まで
交互に描かれている短編時代小説。
浅田次郎ワールド全開。
どれも読み応え充分だし、そんなまさかな話まで激動の時代だからこそな話が多かった
随所に出てくる浅田次郎祖父の「御一新の折には大変な目に遭った」の一言。
きっとそうであったのだろうと、なんとなくしか想像しかできないけれど
御一新をきっかけに、武士が武士でなくなった時代の流れを考えると
なんだか世知辛く思えた。
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幕末期、幕府がなくなり、世の中の侍が大きな変革の岐路に立たされた時代の中・下級武士に起こる笑ってしまうような重大な出来事を皮肉たっぷりに描いている。短編集だが、一作一作中長編にしてもいいような面白さに満ちている。
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幕末志士達の短編集です。お家騒動・人情噺等々、浅田次郎お得意のストーリー展開で楽しめました。
章毎に作者のエピソードが入り、これが意外と面白い。どういう経緯で描いたのか、ある言葉から小説仕立てにする流れ等の浅田次郎の考え方が少しわかります。
浅田次郎は、昔は相当なワルだったんですね。これは知りませんでした。
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エッセイ+時代小説といった形の短編集の6編
司馬遼太郎賞、中央公論文芸賞受賞作品
幕末の武士の悲哀が描かれています
■お腹召しませ
婿養子が公金を持ち出して失踪。
その責任を取って、妻子や周りから切腹を迫られる主人公。
その結末は?
■大手三之御門御与力様失踪事件之顛末
与力の一人が勤番中に姿を消す。
神隠しにあったのか?
その真相は?
■安藝守様御難事
藩主となって謎の稽古。
その稽古の意味も分からず、本番へ
その意味とは?
■女敵討
女房が不貞を働いていると聞いて、国元に戻り女房とその男を成敗することに。
国元に戻って、その二人の前でとった決断とは?
■江戸残念考
鳥羽伏見の戦いから上野の山での終結
幕府がなくなったときに取ったときにとった男の決断は?
■御鷹狩
夜鷹を切り捨すてた若侍達
しかし、その一人は、ある夜、夜鷹と出会って..
それぞれの物語で、幕末の下級武士たちの悲哀を感じます。
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