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Posted by ブクログ
目次
・黒と白のあいだの真実(2013)
・任侠のジレンマ(2003)
・クワンの一番長い日(1997)
なんと楽しい読書だったでしょう。
本来なら読後感が悪いはずなんですが、すごく楽しく読めました。
タイトルの『13・67』というのは2013年から1967年に遡るタイプのクワンという一人の警察官の年代記という意味です。
2013年…これはクワンが余命僅かという状態で病院のベッドに横たわりながら行った、彼の最後の事件となります。
しかしこの捜査方法!
日本なら絶対にアウトです!…って香港でもアウトのようです。
だから『黒と白の間の真実』というタイトルがついているのですね。
2013年、香港は中国に返還され、社会は落ち着きを取り戻しつつありましたが、中国の悪い影響も受けていました。
”「手抜きは努力に勝る」そんなフレーズがたびたび、警部たるローの耳にまで入ってくるようになった。つまり「やればやるほど、叩かれる。何もしなければ、損はない」”
警察官だけではないのだろうけれど、そのような社会で、主人公・クワンのかつての部下ローは、事件を解決するためにあり得ない方法をとる。
”一般市民が白い社会で安心して生きられるように、クワンは白と黒の境界線をずっと歩んできた。”
いや、明らかに黒寄りだと思うが…。
でも、その信念はしっかりとローに受け継がれる。
”なぜなら彼は知っていたから――正義とは言葉でなく、行動なのだと。”
散々書いているように、明らかに黒寄りの捜査をするクワンを主人公にしたこの作品はノワール小説と言えるかもしれない。
いや、もっと単純に警察小説と言ってもいい。
しかし、犯人を推理できるヒントはすべてフェアに記載されているので、本格推理小説と言うこともできる。
何がどうだっていいじゃない。
読んでみ?
面白いから。
Posted by ブクログ
第1章から非常にトリッキーで、反道徳的な展開。犯人を捕らえるためなら、違法ぎりぎりの捜査も厭わない。犯人を追い詰める心理戦に罠とトリック。
名探偵と呼ばれた伝説の刑事の人生を遡る。
Posted by ブクログ
短編ながらどの話も濃密で読み応えがある。「名探偵」の鮮やか過ぎる謎解きが痛快な香港ポリスストーリー。上巻は2013年から香港返還の1997年まで。時代を遡る連作という構成が斬新で面白い。“最期”が描かれる第1話は衝撃的です。
Posted by ブクログ
香港への渡航経験はないので、一度訪れた台湾の風景を思い浮かべながら読む。情報量の多さと慣れない人名、地名に読み難さを感じるものの、論理的でトリッキーなミステリーに圧倒される。パズラー小説的な強引さも顔を覗かせるが、その手のジャンルが苦手な私でも楽しめたのは警察小説という作品形態と香港の情景が醸す映画的な雰囲気の賜物だろうか。硬質な作風は横山秀夫さんの県警シリーズを彷彿とさせるが、下巻の帯コメントが正にご本人とは。何より現代から過去へと遡る構成が実に良い。最終的な着地点は香港史と如何にリンクするのだろうか?