【感想・ネタバレ】カーテンコール!(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

他者を必要以上に攻撃する人間は、実は臆病なのだと聞いたことがある。自分の地位や価値観が脅かされるのを恐れているのだ。だからそうならないよう、先制攻撃をする。『蜘蛛の糸』で、群がってくる罪人どもを蹴落とさずにはいられないカンダタくらいに、必死だ。

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2023年12月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「傷に気づく」

加納先生の著作は「ななつのこ」以来だ。確か北村薫先生から「日常の謎」系のミステリに興味を持ったのがきっかけだったと記憶している。

舞台は閉校の決定した女子大学、そこで単位が足りず卒業を逃した生徒たちが合宿をして卒業するまでの物語。学生たちはそれぞれに性同一性障害、睡眠障害、拒食症など、問題を抱えている。集められたのは10名、萌木女学園の生徒数は書かれてなかったと思うから割合は分からないが、昔からスポイルされるだけの「つまずき者」は一定数いたはずだ。

自分も元「うまく生きられない若者」であったが、加納先生はその傷をすごく繊細に描かれていてプロ相手に失礼ながら上手だなと思った。
また、ミステリとしても面白く読むことができた。

彼女らは角田理事長の「監視下」に置かれ、生活を整えながら自らの特性やトラウマと向き合い、自分の足で立って歩くための準備をする。
抱える問題には必ずしも分かりやすい原因があるわけではないかもしれないが、角田理事長は空気を読まない老人らしくプライベートに入り込み、問題を解きほぐしていく。理事長自身も肉親を失うという辛い経験をし、その過去を受け入れてきた。『あなたは素晴らしい』という信念は、暗い過去を乗り越えた大人としての実感から導き出されたものなのだろう。

子供を傷つける親は、自らも親から傷つけられた経験があるという。親自身が過去を乗りこることができなければ、自分の子供に重荷を背負わせることになってしまう。大切なのは安全な場所の存在なのだろうな。

自分も、もうすぐちょっとした段差でつまずくようになるだろうし、我が子も長い人生でつまずくこともあるかも知れない。
そんな時にに子供にも読ませたい良書だと思った。

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2023年10月31日

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