【感想・ネタバレ】黙過のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

下村さんの作品は今のところハズレなし。
本作は特に優れたミステリーでした。
「優先順位」「詐病」「命の天秤」「不正疑惑」「究極の選択」からなる医療ミステリーの短編集。
それぞれ異なる話のはずが「究極の選択」で全てが繋がり、各編で解決したはずの謎がひっくり返されます。見事な構成で不自然さや違和感もありません。
この構成だけでもすごいのに、問題提起もお見事。深く深く考えさせられました。

「命の天秤」では人間が食べるために動物を殺すことの是非を問いかけられ、私もこどもに聞かれたら答えに窮するかもしれないと気付かされました(この点はきちんと学び、自分なりの答えを持たなければ)。
また「究極の選択」はもう本当に究極で、どうかそんな選択をしなければならない状況が私の人生に訪れないでほしいと願うしかなく、そんな自分が情けなくなりました。
客観的に考えれば、作中にある「私たちは、命の過剰な重さに自らを雁字搦めにしてはいないでしょうか」という問いを素直に受け止め、あまりに不自然な状態で生き長らえる必要はないと言えるけれど、それがもし大切な身近な人間だったらと想像すると答えは出ないのです。

日々医療が進歩するのは素晴らしいことです。
けれど進歩と同時に人としての倫理観や、地球上に存在する動物の福祉、共存のあり方も考えておかないと私たち人間は医療の進歩の結果、絶望を味わう可能性もあることを知らされました。

0
2023年09月08日

Posted by ブクログ

『黙過』〜知っていながら黙って見逃すこと。

下村 敦史さんのメディカル・ミステリー。
最初に四つの独立した短編があり、それぞれ登場人物も背景も流れも異なり、一応、謎の解決を見る。

しかし、最後、五つめの短編て、前四つの話が巧妙に絡み合い、最後、驚きの真実が明らかになる。

・優先順位
・詐病
命の天秤
・不正疑惑
・究極の選択

人と人、命の重さとは?
人間の命と動物の命の重さは?
いろいろ難問が出てきますね。
どんでん返しは、さすがです。

0
2022年09月23日

Posted by ブクログ

医療ミステリとしてツイッターでおススメいただいたので読んでみた初めての作家さん。
短編かと思いきや、<最後の話でそれまでのすべてがつながる系>だった。
勘のいい方はもっと早く気づくのだろうけれど、私は最後の話で、「え?」「ええ~っ!」となりました。

こう説明すると、「あ、どんでん返し系ね」との認識で終わってしまうかもしれないけれど、本書のテーマは「命」です。
テーマが命とは、これまたありがちじゃんと思われる向きもあるかもしれませんが、けっこうガチで「命に順列はあるのか」と突き付けてきます。
それも人間だけでなく動物をも含め、そしてこれをさらに突き詰めていくと、植物ももちろんのこと、この世の生きとし生けるすべてのものを含んでいくんでしょう。

そう考えたとき、本書でASGが声高に主張する内容はこれまた一方的な見方にしかすぎず、ただただ煽情的で正義とは程遠いものだとわかります。

結局ありきたりではあるけれど、私は「自分という命がここに存在している以上、かならず他の犠牲の上にあり、だからものをいただくときには、感謝しておいしく残さずいただく」ということ、「ものを使うときには大切に長く使う」ことが大切だと今まで以上に心に刻んだ次第です。

なお本書に低評価をつけている方には、最終的な問題である”あれ”が荒唐無稽すぎるという意見がありますが、それは現実を知らなすぎるおめでたい意見だな、と。
少なくとも私はこの本で取り上げられている最終的手段の心臓移植と同じ手術が先日他国でなされたというニュースを新聞で読んでいます。

はじめての作家さんでしたが<社会派>の方だそうなので、今後も追いかけてみたいなと思いました。

★黙過=だまって見のがすこと。知らないふりをしてそのままにしておくこと。

====データベース=====
第7回徳間文庫大賞受賞!!

瞠目の医療ミステリー

移植手術を巡り葛藤する新米医師――「優先順位」。安楽死を乞う父を前に懊悩する家族――「詐病」。過激な動物愛護団体が突き付けたある命題――「命の天秤」。ほか、生命の現場を舞台にした衝撃の医療ミステリー。注目の江戸川乱歩賞作家が放つ渾身のどんでん返しに、あなたの涙腺は耐えられるか。最終章「究極の選択」は、最後にお読みいただくことを強くお勧めいたします。

0
2022年03月08日

Posted by ブクログ

全てが繋がった時、少し行き先が垣間見えて、読むスピードが止まったのですが、最後まで読まなかったら、突きつけられた問いを、また曖昧にやり過ごしてしまうところでした。

0
2023年12月29日

Posted by ブクログ

すごく好きな作家さん。
短編集と思って読んでおり
今回はどの話もぐいぐい読ませるけど
落ちが弱いというかゆるいなーと思っていたが
最後の話を読み始めてふるえた
やっぱり好きだなー

0
2023年06月29日

Posted by ブクログ

最終章で話が合わさると、ガラッと一気に思わぬ方向にもっていかれる構成。真相は明らかでも答えはなくて、逆に考えなさいよって問いかけられるような...こういう話を知れただけでも身になるお話。

0
2022年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編で一つ一つの話でどんでん返しがあったのですが、そこまでの衝撃度はないし、回収されない伏線があったなぁと思っていたら、最後の話で見事な伏線回収とどんでん返しでした。素晴らしい作品でした。

0
2022年05月05日

Posted by ブクログ

4つの短編それぞれもちゃんと完結しているのに、最後に見事なまとまりだった。

それぞれの視点から読んだあとの最終章。
命のありかたについても考えさせられたし、自分だったらどういう選択をするのか…

0
2021年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いやいやいや、たまげました。60頁前後の短編4つと160頁ほどの中編1つ。久坂部羊っぽいなと思いながら読み始めた短編4つは、完全に独立した読み物でした。いえ、そう思われました。

病院から突然消えた危篤患者。重病人のふりをする元官僚。子豚が忽然と消えた養豚場。科研費の不正受給に関わっていたと見られる研究者の自殺。

それが中編に入ろうというときに、前の4つを必ず先に読むように言われる。えーっっっ、これが全部ひとつにまとまるのか。

正直なところ、その4つはさして心に響くものではなかったのですが、最後にこうなるとは。お見事としか言いようがありません。

0
2021年10月08日

Posted by ブクログ

途中までは「…期待はずれだったかな?」と思いつつも色々考えさせられながら読んでいたら、五つ目の物語に入ったところでガラリと印象が変わった。そして読後に知る、タイトルの本当の意味。

0
2021年09月04日

Posted by ブクログ

本屋さんで「あなたは5回騙される」という帯に惹かれて購入。帯の通り何度も騙されてしまった。

ミステリー小説だが、「命の重さ」や「尊厳死」についてなど、命や生き方について考えさせられた。

0
2021年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編から、長編へ繋がって行くところが面白く、視点が変わることによって、真相も変わって行くところが凄いなと思いました。
ただ、登場人物が思い悩むほど、私自身に倫理的な嫌悪感がないところに、温度差があって、緊迫感に入り込めませんでした。
異種移植、そんなに嫌悪感あるかなぁ。内臓変わっても、外見からじゃわかんないし。姿かたちが変わってしまったり、本人では無くなってしまうわけじゃないのなら、そんなに嫌悪感は感じないかな。
そもそも、輸血も臓器移植も、何なら予防接種だって、異物混入には変わりないと思ってしまいます。私としては、自分以外はすべて、人だろうが動物だろうが機械だろうが「他」には変わりないので、嫌悪があるとしたら、「人」と「動物」ではなく、「自分」と「他」だと思います。
まあ、当事者ではないので、現時点での想像ですけどね。部分をもらって生きると覚悟したならば、使えるものを使うのは当たり前に受け入れられると思うんですけど、そうじゃないのかなあ。

0
2020年09月27日

Posted by ブクログ

長編かと思ったら短編集かと思いきや・・・

最終章の『究極の選択』は最後にお読みくださいとある?

これ何?と思いきや、少し驚きの構成となっている。


下村さんの作品のメディア批判には共感が持てます。
作中の動物愛護団体をみて思うことは、何かを守るために何かを傷つける人達は沢山います。
メディアの方々と何かを守る団体の方々には世の中に対してフェアに生きてほしいと思います。

0
2020年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編かと思いきや、最後の一章"究極の選択"で全てが絡み合う良構成。
命の尊厳、種の優位性などの重いテーマながら、患者喪失の謎や厄介な詐病等々織り込まれるミステリが良い。

0
2023年10月06日

Posted by ブクログ

帯に『あなたは5回騙される』とあったけど、確かにその通り。別々のストーリーの4つの短編でそれぞれ騙されて、最後の『究極の選択』で大どんでん返し。こんな騙され方があるんだ!という感じ。
終盤はパズルのピースが次々とはまっていくように、全ての疑問が思わぬ形で見事にはまっていくのはとても気持ちよかった。

ミステリーだけど、殺人も死体も出てこないのも新鮮。どちらかというと命を救うことに関連したミステリー……それって珍しい。
テーマはとても重くて考えさせられる。『人間の命は動物の命より重いのか』『動物の臓器を移植したら、人間ではなくなるのか』医学が進歩し死ぬはずの命も助かるようになって、人間はもっともっとと欲張って長生きする方法を求めていくようになってしまった。考えるだけでなくて技術の進歩で実現できるようになって、人間の長生きへの渇望はエスカレートしている。
昔なら仕方ない…と諦めていた状態でも、それが違法で倫理違反であっても助かる方法があるばかりに、患者や家族は悩まされることになるのだなぁと思った。

0
2023年08月15日

Posted by ブクログ

本筋とはあまり関係ないけれど、中盤に少し登場の天童教授が魅力的でした。

「本来、無知は罪ではない。90パーセントの一般人が答えられる常識問題を間違ってしまった人でも、90パーセントの一般人が答えられない非常識問題の答えを知っているかもしれない。
誰もが知っている知識を知らなかったからといってその人を馬鹿にした言葉は、いずれ自分に帰ってくる。どんな人も自分にはない何かしらの知識を持っている、という当たり前の事実を理解していたら、おいそれと他人を見下せない。とはいえ、無知ゆえに人を追及し、名誉を貶め、苦しめたとしたら、それは罪よ。」

0
2023年07月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後に物語を無理やり繋げた感もあるが、異種間移植というものがあるものがあることを初めて知り、勉強になった。

現時点で実際どこまでできるのか分からないが、倫理上の問題が非常に多そうだ。

0
2022年06月27日

Posted by ブクログ

去年秋頃アメリカで豚の腎臓を人に移植成功!というニュースがありましたね〜
それを思い出しました。
各短編に強引なこじつけにも感じる言動が多々見られ読みながら少し冷めてしまう事もしばしば…。
が、一つの定義に対しそれぞれの立場からそれぞれの正解が違う。
見る側面を変えればどちらが正しいのか…答えが出ない、そんな問題定義に頭は右往左往、心はそれぞれの心情に寄り添ってしまう。
人の生き死にを誰がどのように決めるべきなのか…

医学の進歩はゆっくりと、でも着実に前に進んでいるんですね。

0
2022年06月27日

Posted by ブクログ

表紙がさー笑笑あなたは5回騙されるって書かれると。
騙されてなるものか!って気持ちで読んじゃうよね。笑笑
いや、騙されるんだけど、そっち!?え!?そっち!え!!!ラストはそっち!!!!みたいな。

短編のような長編になってて、じわりじわりと真相が顔出します。

しかも。終わったかのように見えた最初の事件が、、、、とか、それ真相と思われてホントは違うの!?待って!!!!!、
ってなるのよねぇ。

面白かったんだけど、この後付け表紙がなければもっとびっくりしたような気がしたのはわたしだけ?

なんか一回目の返しあたりで、あと四回騙すんでしょ?わたしを。って思いながら読んでしまったもの、笑笑

この表紙、たしかに買いたくなるけど、読むときには無い方が楽しめるよなぁ。と個人的に思いました。

0
2022年05月22日

Posted by ブクログ

移植医療を考えさせられます。
移植するにはドナーが必要であり、いない場合にはどうすれば助けられるのか?
他に倫理観を考えさせられる話が最後の結末に纏まり、最後まで面白く読めました。

0
2022年04月19日

Posted by ブクログ

4つの短編が最終話で、パズルのごとく組み合わされる連作医療ミステリ。構成がしっかりと練られていて、ミステリとしての完成度はもちろんのこと、生命倫理に深く切り込むテーマ性、そして専門的な知識を話に落とし込む技術も、素晴らしい一作です。

個人的には第3話の「命の天秤」で養豚場を舞台にしたミステリが特に新鮮でした。特殊な舞台設定名ながら、説明や描写が分かりやすくスッと入ってくるのが本当にすごいと思います。

各短編でそれぞれに微妙な違和感が残ります。どこか無理やり説明をつけた感じであったり、動機に必然性を感じにくいところがありました。そこだけ切り取ると、何とも言い難い評価になってしまうのですが、それぞれの違和感を、そしてばらばらの舞台に見えた4つの話をきれいにつなげ、全く違った物語の全容を明らかにする。その技巧がとにかく素晴らしいの一言に尽きます。

中国残留孤児がテーマの『闇に香る嘘』、外国人労働者問題を扱った『叛徒』、山を舞台にした青春ミステリ『失踪者』に続いて、この医療ミステリである『黙過』が4作目の下村作品でしたが、いずれも完成度の高さとテーマの切り込み方に惚れ惚れしてしまいます。次読む作品は何をテーマに、どう切り込むのか。本当に楽しみな作家さんです。

0
2021年10月03日

Posted by ブクログ

いやもうホントなんて題材を扱うんだ。
“命の重さ”と“人としての尊厳”を問う短編集。
読みながらいろんなことを考えてしまって、正直騙されるどころじゃなかった。
その選択は正しかったのか間違っていたのか。
今の自分には判断できないけど、おそらく受け入れることはできないだろうなと思った。

0
2021年07月20日

Posted by ブクログ

3.3
短編集だが最後の話ですべての短編が集約されていく形式。一つ一つの短編にオチはなく、謎が残されたままで最終話を迎えていくが、伏線が弱くオチも途中で見えてしまったのが残念であった。5回騙されない。
しかし、各々の話において命について考えさせられる構成となっている。話の中ではジャーナリストが自分に置き換えて考察しているが、自分だったらどうするか考えながら読むのは楽しかった。

0
2021年07月12日

「小説」ランキング