『500年の営み』(祥伝社)の山中ヒコ先生が放つ、SF系BL漫画のファイナルアンサー!
まず、「イキガミ」は世界に1人しかいない自分の「ドナー」からしか癒やしを得られないという設定だけで、軽く白ごはん30杯はいけちゃいますよね。そして、ドナーはイキガミを生かし、戦わせ続けるために体の一部の移植すら求められる――文字通り我が身を捧げないといけない関係、世界に唯一にして、一蓮托生。それが「イキガミとドナー」なのです。
しかも、本作の主人公の1人・鬼道は幼い頃に「イキガミ」となったせいで、孤独な人生を過ごし、世界のどこかにいる自分だけのドナーに憧憬を抱いている二十歳の青年。そして、鬼道の前に現れたドナーは一見平凡だけど聖母のような慈愛を持った中学教師・吉野。この2人がもう……化学変化が起きたとしか思えない、奇跡のカップリングなんです……。無愛想で偉そうな鬼道が吉野の腕に抱かれてうっとりリラックスしたり、吉野が「先生の言うことを聞きなさい」と鬼道を優しく諭したり。そんな何気ない風景が本当に愛おしいのですが、招集されれば鬼道は他国のイキガミと命をかけて戦わねばならず、2人の日常の裏側にはどうしようもなく「死」がべったりと貼り付いている。鬼道と吉野のやり取りがかわいければかわいいほど、不意にこみ上げてくるものがあります。
最初は人間らしい感情を見せず、吉野のことも「特効薬」のように利用していた鬼道ですが、真っ当で穏やかな吉野の愛情に触れることで、人を守りたい気持ちや執着心、そして吉野を失う恐怖など、さまざまな感情を帯びていきます。受けの愛情が攻めの魂を育んでいく関係性が尊みを通り越してもはや神聖……! 神棚に祀って拝みたい!! 人が人を愛することの素晴らしさがぎゅうぎゅうに詰まった作品です。
感情タグBEST3
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切ない
特殊能力者(イキガミ)とそれを唯一癒せる人、という感じ。
でも大分シビアな設定です。
国防に利用されるイキガミは普通の薬が効かない代わりに、たった一人しかいないドナーというパートナーがいます。ドナーの体液(血液など)や組織だけが彼らの薬となるという設定です。
でもドナーは自分の生命に関わらない範囲でのあらゆる組織の提供をすることを義務付けられている。
目や皮膚や時には手でさえも、イキガミのために、健康な自分の体から持ち去られていく。このカップルに臓器の提供はないですが。
イキガミも小さな頃からひたすら訓練。ただの風邪も彼らには苦しい病気になってしまう。
その厳しい世界のなかで、二人が自然に思いあっていく。
上下巻読んで欲しい!
上巻ラストまで読んで、吉野の愛情が鬼道を救ってくれるのかな、と切ないけど満たされた気持ちでいっぱいになりました。
ハピエンじゃないと、どんなに素敵な作品でも読み返したく無くなってしまう質ですが、もう何度も読み返しました!
下巻も是非!
人権
読むたびに涙出ます。人権についてめちゃくちゃ考えさせられる。このお話はハッピーエンドだけど現実だとどうなるかな…とかまで考えさせられる。
イキガミだから親に見放され、ずっとセンターで育って、誰にも愛される事なくずっと戦い続けるだけの生活はどんなに孤独だっただろう…
ドナーに思い入れて、ましてや相思相愛なんて…愛を知ってしまうと強くなる事も弱くなる事もある…ドナーを守りたいと思う鬼道はこれから戦う事が出来るんだろうか…
SFでBL
斬新な展開。兵器も効かない無敵の存在イキガミに、そのイキガミへ唯一治療が施せる存在ドナー。兵器として扱われる事や、モノとして存在させられる事で人類の平和が保たれているのだとしたら。BLの枠を超えていろんなことを考えさせられる。
せつない
悲しい世界感で、否応無く巻き込まれてしまう主人公の優しさに懐いていくワンコな攻めに、せつないけどキュンとしてしまう。
どうか幸せになって欲しいと思わずにはいられません。
上下巻どちらも読みました。
凄くおススメです。
幼い頃に能力に目覚めてしまったせいで孤独で傲慢な性格に育ってしまった攻めがドナーというパートナーに出会うことで愛を知り感情を揺さぶられる。守りたいのに自分は兵器で怪我をするたびドナーに負担をしいなければいけないという葛藤が切ない。幸せになって欲しい。
Posted by ブクログ
なんとなく最終兵器彼女とかエヴァとかを連想してしまう。それよりはラブも多めだしシリアスではないので、とてもいい切なさ塩梅で楽しめた。