【感想・ネタバレ】渡辺錠太郎伝 ~二・二六事件で暗殺された「学者将軍」の非戦思想~のレビュー

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Posted by ブクログ

二・二六事件で暗殺された陸軍教育総監渡辺錠太郎。貧しい境遇から士官学校、陸軍屈指の読書家で独自の非戦思想。歴史の狭間に埋もれた人物の実像に迫る傑作評伝。

本書の主役渡辺錠太郎の二女の名は渡辺和子。あの「置かれた場所で咲きなさい」の筆者。二・二六事件、青年将校の凶弾に父が倒れた時、8歳の娘は正に同じ部屋にいたという。53歳で生まれた娘。「長くは一緒にいられない」と孫ほどに年の離れた娘を父は溺愛。

日本の陸海軍士官は旧制高校、帝大と並ぶ当時のエリート。渡辺錠太郎の生涯、凄いのは小学校を卒業後、農業のかたわらで独学、旧制中学を経ずに陸軍士官学校に合格するところ。

二・二六事件に至る陸軍の道、そこにある皇道派と統制派の争い。本書を読む限り渡辺はどこの派閥にも属していない。その分、現代の目から見ても極めて真っ当な主張が多い。軍人が政治に意見する弊害や機関銃、航空機等の近代兵器での武装の必要性、そして総力戦による国家の疲弊と一方で非戦のためな武装論など。

渡辺錠太郎の名は知ってはいたが、本書がなければ略歴その他深く知ることはなかったように思う。歴史の狭間で名のみ残る人物。そんな立志伝中の人物にスポットライトをあてた作品。父娘二代の生涯には大きな感動が。
屈指の評伝です。

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2020年08月27日

Posted by ブクログ

「渡辺錠太郎伝:二・二六事件で暗殺された学者将軍の非戦思想」(岩井秀一郎)を読んだ。
これは力作です。
見事!
渡辺の言葉で印象に残ったのが、
『それから少数の者が実権を掌握して久しきに溺れば必ずその内容が腐敗して来る』(本文より)
いつの時代においても権力が腐敗していくのは同じか。

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2020年05月31日

Posted by ブクログ

渡辺錠太郎は2.26事件で非業の最期を遂げました。学者将軍と言われていた渡辺錠太郎。そんな彼は非戦思想を持っていました。

 そんな渡辺錠太郎と、同じ日に殺害された高橋是清が、もし生き延びていたら、と思います。


 「もしもあの時、父が青年将校たちの手で殺されていなかったら、後年キリスト教の洗礼を受けなかったかも知れないし、その結果として修道者となり、岡山に派遣されることもなく・・・」と、渡辺和子シスターは語っています。

 この本ではまた、渡辺錠太郎の命を奪い処刑された青年将校の弟と、渡辺和子シスターとの交流も少し描かれていて、そのくだりにも心打たれるものがあります。


 起こって欲しくないような悲惨なことが現実には起こる。自然災害や病気。人の罪が引き起こした悪事。「どうして」と問いたくなることがたくさんある。納得できないことだってある。

 それでも、それを悲惨なままに放置しておく神様ではない、ということもこの本を通して思いました。

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2020年04月25日

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