感情タグBEST3
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少しゾッとするような短編が6つ.それぞれ対象となるモチーフが印象的だった.「面」では般若、「森の奥の家」ではキーホルダー、「日影歯科医院」ではクラウン、「ゾフィーの手袋」ではシルク、「山荘奇譚」では染布、「緋色の窓」では絵.どれも怖かったが「日影歯科医院」で香澄が実際に治療を受けた話だ.数十年前に閉院した歯医者さんで.
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タイトルや装丁の雰囲気から、楽しい内容ではないだろうと思いつつ手に取ったら、ホラーだった。日本的な、情緒たっぷりの系統で、シンプルに面白かった。
私が小さかったころ、夏休みの1週間くらい「あなたの知らない世界」というコーナーがお昼の番組の中であって、それを姉と2人怖がりながらも毎日楽しみにしていたのだけど(視聴者投稿系でけっこうがっつり怖かった)それを観ていた時の感覚に少し似たものを覚えた。
あるはずのものが無くなっていた、とか、生きていると思っていたら死んでいた、とか、禍々しきものを連れ帰ってしまった、とか、ホラーではよくある設定がふんだんに使われていて、馴染みがあるからこそ読みやすく面白い。
フィクションなのだけど、もしかしたら自分もそういう世界に迷い込んでしまうことがあるかもしれない…と思わせるリアリティもあるのに、全体の雰囲気としてはどこかふわふわしていた。
主人公が取れた歯の詰め物を治してもらうため、まだ住み慣れない街で見つけた歯医者に飛び込みで入り不思議な体験をする「日影歯科医院」や、若くして急死した夫と暮らしていた旧家に、彼が海外で仕事をしていた時代に彼を慕っていた女性が幽霊となって現れるようになった「ゾフィーの手袋」などがとくに印象に残った。
ホラーとしてはよくある展開なのに、それだからこそ怖いのは、やはり読み手の自分も日本人だからなのかもしれない。
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じっとりとした怖さと寂しさ、なんとも言えない後味の悪さ、非日常なはずなのに、すぐそばにあるような物語
自分が死んでることに気づかず、山の奥の家に住み続ける話と、あるはずのない歯医者で治療後、その歯医者の後味の悪い話を聞かされる話がお気に入り
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久々のホラー。アラフォーだけど怖いの苦手。これ読んだあと、鏡の前に立つのも怖い。
小池真理子さんらしく、季節や情景描写が非常に美しく、目に浮かぶ。大好きな軽井沢も出てくる。
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先日読んだ『墓地を見おろす家』がなかなか良かった小池真理子さんのホラー短編小説集。2017年刊行。
やはり派手なところが全然ない木訥とした語り口で、しかしそれがホラー小説として成功している。地味な短編集なのだが、全6編のうち5編目の「山荘奇譚」が非常に優れており、最後の方のぐんぐんと迫ってくるリアルな感じが素晴らしい。
全体に目立つものはないが、じわじわと味わい深く、ホラー小説集として成功していると思う。
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一つ一つが短いのでサクッと読むことができた.いろんな物語があるけれど,異世界とか怪異といったちょっと不思議な体験が多かったような気がする.最後の短編は美しかった.
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この本との出会いは、友達と立ち寄った本屋でのジャケ買いでした。出版が角川ホラー文庫で、いかにも短編ホラー集です、と言わんばかりのタイトルから、即決で購入しました。結果、買って大正解でした。
1つ目の短編である「面」は、冒頭の情景描写が少し長くて、「この短編集は、私の苦手な回りくどい作風なかもしれない」と、不安を感じさせられましたが、あっという間に昼ドラのようなドロドロとした空気感に飲み込まれ、いつの間にか優しく美しい文章の虜になっていました。
2つ目の「森の奥の家」は、"静寂"という不気味な空間の中で、かつての楽しかった思い出を巡らせる女性の話しです。悲壮感を漂わせながらも、どこか温かみを感じる素晴らしい作品でした。
3つ目は、個人的にこの短編集でいちばん怖かった「日影歯科医院」です。暗い雰囲気で始まり、明るくなったと見せかけて、一気に恐怖をたたみかけてくるようなストーリー構成に背筋が凍りました。
この他に、「ゾフィーの手袋」、「赤間山荘」「桃色の窓」と続きますが、どれも妙にリアリティーのある描写と、優しく美しい文章で、サラッと読める短編集でした。
小池真理子さんは、どうやら、ホラー小説よりも恋愛小説に定評のある作家さんのようですね。私は存じ上げませんでしたが、一気に好きになってしまいました。「異形のものたち」の他にも、いくつかホラー小説を書かれているようなので、小池真理子さんの作品はホラーから攻めたいと思います。
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小池真理子さんのホラー短編集。
「面」
「森の奥の家」
「日影歯科医院」
「ゾフィーの手袋」
「山荘奇譚」
「緋色の恋」
それぞれ、ホラー部分だけでざわざわではなく、全作品に男女関係(多くは男性の不貞)のざわつく感情と共に読ませてくださいます。
しかもこのうちの何作かは、見える方だったらしいお母様からの言い伝えがあるらしく、再びざわざわ。
そして、何が怖いか書ききらないところが、よろし。
解説の東雅夫さんの肩書きにアンソロジストとあり、アンソロジーを編纂する者という言葉があるらしい。
確かに最近アンソロジーが増えた。増えすぎて重複している作品も見かけるけれど。
東さんは、「時代の評価が定まった名作佳作」を編むタイプらしい。なるほど。
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うーん。微妙。ジャンルではホラーだけれど、文学作品になってるのは、さすがという感じだが、オチがない。これからどうなるの?で終わるのばっかりだから、消化不良。
映像にしようとしたら、かなり話を付け足さないとダメだなあ。
悪くはないけど、話は普通。
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ひたひたと怪異が迫ってくる感じがじわじわ怖い短編集でした。どのお話も面白かった。
怖かったのは「山荘奇譚」。この不条理な恐怖がここで終わってるのもいい。
「日影歯科医院」「緋色の窓」の、情念のような想いが残っている怪異が特に好きでした。この人たちは現れるだけだし、歯科医院は治療までしてくれるから…全く痛くないのも凄腕。
解説も面白かったです。お母さまが視える体質だったみたいだけれど、小池先生にもちょっと引き継がれたのかなぁ。
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日本的な、精神に来るタイプのホラー短編、サクサク読める。サクサク読めるが、しっくり来ずに終わりまくる。怪談めいた実話があっても、正体がわかることなんてないんだろうし、そう思うとリアリティがあるじんわり怖い系。
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ホラー短編集。とはいえ、恐怖より哀愁を感じた。
歯科医院を舞台にした短編があって、歯医者の待合室で読んだが、治療に関する怪談じゃなくて良かった(笑)
個人的には二作目が好きかなー。
匿名
どの話しも、「えっここで終わっちゃうの??」と
言った感じで、中途半端に終わってるような感じでした。話しとしては面白いと言えば面白いけど、
中途半端な終わりに感じるので読んだ後もあまり
内容覚えてないです。
話しの中では「緋色の窓」が良かったですが、
これも「なぜ?」と思う物を特に回収しないで
終わるので、それも全部異形のモノの仕業って
ことなんでしょうか?
Posted by ブクログ
六編のホラー。
「森の奥の家」は友人とその父を失った女性が主人公。
既に山小屋の主人たる2人は亡くなっているはずなのに、その別荘は綺麗に整えられている。
友人の兄嫁がたまに赴き整えてくれているようだが……。
何かおかしい。
読み手はこれまでのホラーのあれこれの筋書きを考える。
本当は山小屋なんてないのでは?
2人は死んでいないのでは?
実は恨まれていた?…。
さて、どの結末になることか。
「日影歯科医院」はちょうど私が歯医者で詰め物を詰め直している時に読んだ。
かかりつけの歯医者はちゃんといるはず、だが。
歯医者の恐怖譚というと、何を想像する?
ガリガリと削られ歯を抜かれる?
…いやいや。
この作品はそんなありきたりなスプラッタホラーではない。
なんてったって、主人公が通った歯医者は上手なのだ。
しかもちゃんと保険証出してください、なんて言う。
上手で早いのだ。
じゃあ、何が怖いの?
怖いのは、待合室にいた人々のせいだ。
なぜそうなったのか、背景は想像に任されている。
だが、そうなってしまった罪であったり、愛であったり、それらが複雑化して物語を成している。
気温が下がったせいか、少し夕方は寒い。
主人公がしたように、私もつるりとした自分の新しい詰め物を舌でなぞった。