【感想・ネタバレ】保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本までのレビュー

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Posted by ブクログ

めちゃくちゃ良い本だった。保守主義とは何を「保守」するのか、フランス革命に対して、社会主義に対して、大きな政府に対して、それぞれの歴史の中での文脈がとてもわかりやすい。ややこしいのはナショナリズム的なイデオロギーや新自由主義との結合、そしてネオコンの登場特に対外介入、東欧からのユダヤ移民の反共姿勢、各国の具体的なレジーム転換を焦点とするリアリズムなどネオコンの思想の特徴や経緯は簡潔だけどわかりやす。あと、日本における保守が何を保守すべきものなのかという終章の熱のこもった議論に宇野先生の想いと現在の日本政治への危機感を強く感じます

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2022年12月04日

Posted by ブクログ

名著。
保守主義の祖であるエドマンド・バークの思想から説き起こし、保守主義とは何か、保守主義と伝統主義、復古主義、原理主義との違いを明確に説明している。
その後の保守主義の世界的な流れも押さえ、明治以後の日本に保守主義はあったのか、丸山真男と福田恆存の議論を引きながら検討する。

保守とは何かを守るものだが、その「何か」が明確ではない現代においての保守主義の難しさが明確になる。
現在の保守主義者の多くは「自称」に過ぎないことが分かるはずだ。過去や伝統が自明でない時代に、何を守るのか、自分に問いかけるためにも参考になる。

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2017年03月03日

Posted by ブクログ

フランス革命と闘い、社会主義と闘い、大きな政府と闘ってきた保守は今、何と闘っているのか。バークが論じた「偏見の上衣を投げ捨てて裸の理性の他は何も残らなくするよりは、理性折り込み済みの偏見を継続させる方が遥かに賢明である」との言葉に深く考えさせられる。一人一人の人間を考えたときに、偏見なく理性だけで生きている人は存在しない。ゆえにその集合体で考えた時にも、偏見をのぞき理性だけを残すということは、主体が人間であり限り不可能であると思う。人間ではないAIが将来そのような役割を果たすのかもしれないが、それは人間にとって賢明なことなのかどうなのか。「理性折り込み済みの偏見」はどのようなもので、どう継続できるのか時間をかけて考えてみたい。

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2022年09月10日

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フランス革命、社会主義、大きな政府と闘ってきた保守主義だが対する進歩主義が衰退した今日何を守るかが問われている(伝統、権威、職場、家族、地域)日本の保守政党も

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2021年08月19日

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近年の政治を見ていると、保守=伝統を何がなんでも守る、だとか、場合によってはネガティブなイメージすらあり、その正しい意味が定着しておらず、「保守とは何か?」という問いを改めて考えなければならない。

本書はフランス革命時のバークの思想から今日の保守主義についてその経緯を説明している。

バーク、ハイエクあたりの思想は後で詳しく深掘っておきたい。

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2021年05月18日

Posted by ブクログ

もともとは坂井豊貴と共著していたので名前だけ知っていたところ、ニュースで大々的に取り上げられているのを見て購入した。

文体に若干の特徴がある、人名で索引を引けない、など多少の読みにくさはある。しかし「あとがき」でも書かれている通り、保守主義を語る上では外せない歴史が詰め込まれていると感じる。立ち位置もニュートラルな印象。
学校科目でいえば「世界史」や「倫理」に対する自分の知識・理解が足りないゆえに吸収し切れていない部分が多いので、高校教科書を一読したうえで再読してみたい。

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2020年11月01日

Posted by ブクログ

リベラリズムやポピュリズムに比べ焦点の当てられることの少ない保守主義について取り上げた一冊。
どちらかといえば地味な立ち位置であるため、目を向けにくい部分ではありますが、これまで語り継がれてきた「伝統」を守るという意味で必要な考え方かもしれません。
主義というと凝り固まった考え方になってしまいますが、進歩主義と保守主義の良いところを抽出した見方を持つことが重要だと感じました。

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2017年10月09日

Posted by ブクログ

進歩主義に対抗して生まれた保守主義は、それゆえにその内容は不明確な部分が多く、何なのかが分かりにくいところがあります。それは何故なのかについて、その歴史的な成り立ちを解説することで解かれています。時代時代でその主人公は変わりますが、保守たる意義を受け継いで、保守の定義を守り続けること、これが弛まなく続いて来たのだと分かります。保守というが何を守っているのか。本書を読むことで彼らの成さんとするところを知ることができました。

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2017年06月25日

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保守とは昨今人口に膾炙する言葉ではあるが、定義するのはなかなか難しい。そんな中で、保守主義についてコンパクトにまとめた本。特に日本の保守主義についての部分が示唆に富む。

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2017年05月14日

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これまでいい加減に考えてきた、保守、革新、右翼、左翼ったものについて、ちゃんと整理できてよかったと思います。

その上で保守についてのイメージがだいぶ変わりました。守るべきものは何か、そしてそれは、どういう歴史的経緯で守るべきとされているのか、その自覚がなければだめなのですね。

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2017年03月02日

Posted by ブクログ

筆者は、イギリス社会学者アンソニー・ギデンズが用いた「ポスト伝統的社会秩序」という言葉の解説によせて、今や広義の原理主義が台頭したと指摘する。なにが「伝統」でなにが「権威」かなど再定義する意味はなく、人々は守ろうとしているものが「私の伝統」「私の権威」に過ぎないという可能性を認めている。「進歩」や「革新」といった言葉が輝きを失った現在、それに相対して生まれた保守主義もまた迷走をはじめたというのである。しかしながらそれでも、共通の認識を欠いたまま「保守」を自認する人が増えているとき、「保守とはなにか」という疑問が生じる。本書はそうした経緯でもって著されたようである。

本書の冒頭にて筆者が引用しているチャーチルの言葉に、「20歳のときにリベラルでないなら、情熱が足らない。40歳のときに保守主義者でないなら、思慮が足らない」というものがある。わたしは20代であるから、チャーチルの論理でいえば正常で、保守主義に対する嫌悪感がある。良い伝統はあるだろう。実益のある権威もあるだろう。しかし他方で、その伝統と権威に圧殺されているものもあるだろう。
保守とは、守るべきものがある「一人前」の上からの権利主張ではないか。守るものもない、ただ生きることに精一杯の「半人前」には縁遠い。しかしながら、「半人前」が再生産される閉鎖的な社会にこそ保守は力を増す。保守の射程にあるのは、人でなく国であり制度である。秩序あっての人。そのリアリズム、割り切りの良さにやるせなさを感じるのは、わたしが20代だからか。

以上のように、相容れないとは思うけれど、わたしが違和感を感じる相手とはなにかを知りたい。だからこそ本書を手にとったわけだが、読み終えてみて、なるほどやはり「うっとおしい」と感じる箇所はある。けれどわたしの理解は、多様化した「保守主義」の一面しかとらえられていないこともまた学んだ。
とくにここで詳しくは述べないが、 エドマンド・バークの「偏見」を逆手にとった政治、オークショットの「人類の会話」という考え方などには非常に惹かれた。守るだけではなく部分的変更を加えること、すなわちは現実的困難から逃避しない態度、自由への容易ならざる闘い、それは耳触りのよい理想論よりよほど魅力がある。

しかし一点、どうにも納得のいかない箇所がある。わたしは普段「宗教」を軸にフランス史をみている。だからこその疑問なのだが、筆者はフランス革命を歴史における「断絶」とする。すべてをさらにしてしまった革命。たしかにそれは妥当な指摘ではある。しかし、種ないところに生命はない。フランス革命は、はたして過去の否定なのだろうか。すくなくとも宗教に関していうのであれば、長い歴史を紐解いてみたとき、フランスはケルト、ローマ、ゲルマン等々の宗教からついぞ解脱することはなく、キリスト教は妥協の歴史を編んできたのであり、ライシテにしても、フランク王国とローマ教会が接近したときからの絶えざる主導権争いに土台がある。フランス革命はあらゆる起爆剤になったが、引火物なければ爆発もない。否定ではない。フランス革命にも保守のいう「伝統」はある。抽象的な概念を持ち出す政治体制は、むしろフランスの伝統でさえあるように思うのだが、まだわたしの理解が足らないのか。文脈が別のところにあったとしても、やはり筆者の主張にはまだ疑問が残る。勉強はつづく。

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2016年07月25日

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いわゆる保守の考えについて、筆者なりに定義をした後、その学説の変遷について、筆者なりの分析軸を設定してまとめた本。

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2016年07月24日

Posted by ブクログ

学生時代に学んだことをおさらいする意味で読んだ。

バークの偉大さを改めて思い知った。時代は変われども彼の思想は現代に生き続ける。オークショット、バジョットもしかり。むしろインターネットで人が考える機会が減ってしまった現代こそ輝くのかもしれない。バークら個別の本を読み直してみたい。

なお、保守思想は英米が世界的に影響を与えていることは認識しているが、本書でも触れているフランスやドイツなど大陸系の思想家の本にもあたってみたいと感じた。

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2022年01月30日

Posted by ブクログ

・保守主義の思想は、楽天的な進歩主義を批判するものとして生まれ、発展してきた。
 →進歩の理念が失われるにつれ、保守主義も位置付けが揺らぐ
・バークの保守主義
→社会や政治の民主化を前提にしつつ、秩序ある漸進的な変革を目指す 自由を守る
①保守すべきは、具体的な制度や慣習
②そのような制度や習慣は歴史の中で培われたもの
③大切なのは自由を守ること
 →フランス革命には反対(抽象的な理念に基づいて社会の全面的な改造を試みるもの 革命)
・ハイエク
→保守主義は未来に向けてのアクセルに欠ける。自由主義は変化を歓迎する。保守主義もまた人間の理性への過信を批判するが、あくまで階層秩序を好む。自由主義はエリートの存在は否定しないが、予め決定することはない。
社会主義を集産主義として批判
法による支配を重視(一般法)
・アメリカの特徴 ー 宗教と反知性主義
→9割以上が神、普遍的な霊魂の存在を信じる
 福音派 世俗化、個人化した現代社会への反発
→反エリート主義へ反発
→市場化や民営化、その根底にある小さな政府への強い思考がアメリカ保守主義の特徴。背景にあるのは根強い草の根的な個人主義や反政府感情
・日本の保守主義
→真の保守主義は根付いていない?敗戦と占領という経験が困難にしている。状況主義的保守⇔押し付け憲法
→戦後経験の思想的反省が求められる
・リベラルとの対立
→グループ、国家を超えたより開かれた平等公正
 ⇔自分たちの仲間の平等や公正
今後の保守主義
→何かを守ることについて再考
 自分が守らなければ失われてしまう何か 使命感
  家族、仲間、地域m、文化、技能、自然

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2021年11月06日

Posted by ブクログ

保守主義の定義はいろいろあるとしても、自分にはハイエク的保守、すなわち理性を絶対視する傲慢な革新主義者/集産主義者に対する批判としての見方が最もしっくりきた。特定の個人や組織に社会全体の情報をすべて把握できるのかという懐疑は健全と思う。自生的秩序に基づく自由の実現がこの考え方の核心となる。

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2018年10月29日

Posted by ブクログ

仲正氏の著作にも言えるが、愛国者でない人が書いた保守主義の解説書は、対象への距離感が冷静で、手際よくまとめられている。本書は、第3章の近年の保守主義(ネオコン)に対する論考は類書にないが、バーク由来の保守思想とは完全に別物であるような気がする。結論として、保守主義を憲法9条の擁護につなげるのも、仲正氏と同じ。9条を守るためなら何でも利用するのだなあと思う。なお、参照文献で中川八洋氏を完全スルーするのも、仲正氏と同じ。「触らぬ神にたたりなし」で、こっちは理解できる。インテリとして正しい判断だろう。

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2017年01月12日

Posted by ブクログ

保守主義とは何か

イギリスのEU離脱を考える上で、一度保守主義について勉強したいと考えて読んだ。
かねてからトクヴィルなどを読んでいたため、保守主義と私の考え方は親和性が高いと考えていたが、読んでみるとやはり親和性の高さを再確認した。
保守主義といっても実はバラバラで、フランス革命に対してや社会主義に対して打ち出した保守主義と現代アメリカに存在する保守主義はかなり違うように思える。
前者の根本的な考えとしては、人間の持つ知に対する懐疑(自己の能力への不信)から、抽象的な原理に基づく未来への飛躍という近代人にありがちな幻想を排することで、歴史や伝統にいったん範を求めたうえで考える糧にするというものである。バークやエリオットなどの紹介されている保守主義者は、フランス革命や社会主義から人間の理性への自信過剰を読み取り、そのような驕りを排すように訴えたのである。バークの章で面白かった点は、偏見や迷信の再評価である。人間社会とは複雑であり、明快な抽象的原理では説明がつかないという前提から、偏見や迷信という長年はぐくまれてきた人間の精神活動に、理性を補完拡張する潜在可能性を見て取ったのである。
保守主義の議論は、外山滋比古の知識と創造性の話を彷彿とさせる。外山は知識偏重の現代社会への批判として、知識がありすぎることは逆に創造性を阻害するということを述べているが、やはり知識が全くなければ創造性そのものも危うくなる。結局、同じようなパターンに陥って終わりであろう。知識と創造性の関係は保守と改革の関係に似ている。どちらもないといけない、バランスが重要である。クリエイティビティという言葉が跋扈するが、やはり知識あってのクリエイティビティである。
保守主義のよい点は宗教を認めている点である。宗教とはバークのいう偏見や迷信であり、理性を補完する役割を持っている。絶対者の存在を設定することにより、人間は驕りを抑制することが出来る。人生哲学としても十分すぎる文句である。
保守主義は、実存主義と親和性が高いようにも思える。近代において世俗化された社会では、人間は絶対的に信奉するものを、神ではなく自らの抽象的規則に求めた。しかし、それ自身はやはり人間が作り出したものであるゆえに脆弱であり、実存主義的な言い方をすれば、伝統にアンガージュすることによって、その自由な身の上に重しを乗せて浮遊しないようにすることこそが保守主義のかんがえかたであるのであろう。

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2016年08月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

○書店で本書を手に取って、保守主義って何だろう?って改めて考えてみたのですが、答えは出ませんでした。あまり意識するようなことではないですから。
○そこで本書を読んでみたところ、保守主義とは、現在の法制度や制度は、歴史的に形成されてきたものであることから、抽象的な理念やイデオロギーで全面的に変更することには慎重であること、それでいて変化することには必ずしもいとわないような思想をいうのだそうです。
○本書では、このような保守主義がどのように形成されてきたのかについて、その端緒であるイギリス、それからアメリカについて検討した後、わが国ではどうなんだろうかということで、わが国における保守主義について論じています。
○現在、進歩主義や社会主義の後退により、そのライバルである保守主義もその存在が問われているといった状況だそうです。著者はどうやら保守主義に期待しているような記述がみられるのですが、今後、わが国の保守主義としては、歴史の連続性を見出すこと、そして守るべき価値を見出すことが必要とのことでした。

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2016年07月23日

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